これからのデータドリブンマーケティングを語り尽くす
2018年10月10日(水)に開催された「ATARA LIVE 2018」のイベントレポートをお届けします。
「ATARA LIVE 2018」は「これからのデータドリブンマーケティング」と銘打ち、「キーノートセッション」、5つの「パネルディスカッション」「クロージングセッション」を通じて、最先端のデータドリブンマーケティングを実践している企業の方々に現状や今後の展望について語り尽くすイベントとなりました。
前回は、「パネルディスカッション2:これからのユーザーベースの広告配信」「パネルディスカッション3:これからのデータ収集と可視化 その1」をお届けしました。
今回は下記の2つのセッションについてレポートします。
・パネルディスカッション3:「これからのデータ収集と可視化 その2」
・パネルディスカッション4:「これからマーケティング運用 」
パネルディスカッション3:「これからのユーザーベースの広告配信」
登壇者
エクスチュア株式会社 取締役VP,Analytics
大縄 弘毅さん
株式会社Legoliss アカウントマネージャー
小森 隆正さん
グループエム・ジャパン株式会社 マインドシェアデジタルストラテジーマネージャー
片山 俊基さん
モデレータ:杓谷 匠(アタラ合同会社 チーフコンサルタント)
「これからのデータ収集と可視化」その1では収集したデータをダッシュボードで可視化する際のポイントについてディスカッションされました。続くその2ではどんなデータを収集しているのか、どのようにして可視化しているのか、またどういったところに課題感を感じているのかなどについて、各登壇者の見解を伺いました。
どんなデータを収集するのか
収集するデータは、各企業の業態によって異なります。ウェブ解析支援を行うエクスチュアでは、企業固有にプライベートDMPに溜めているデータ、顧客データ、会員情報など解析のためのデータ、LegolissではパブリックDMPのデータだけではボリュームはあるがインサイトが深くなく、逆にパネルデータやサーベイデータだとインサイトは見られるがボリュームが足りないため、隙間のデータをリクルーティングし、クライアントの要件に合わせてカスタマイズしているそうです。
データを収集する際の課題
エクスチュア大縄さんは3つの課題を挙げました。1つはウェブログのような大量データをどう扱うのか。クラウド技術の発展でコスト面は下がってきているものの、大規模なサイトにおいて1PV・1レコードまですべて溜め続けるとなると、抽出する際にもコストがかかります。2つ目はマスタの問題。様々なデータを統合してビジュアライズするにはマスタを新たに作って吸収する方法と、取得段階で統一させる方法がありますが、大縄氏は後者を推進しているそうです。3つ目はクロスデバイス時代において顧客IDの統合をどう管理するのかです。
Legoliss小森さんは集計・可視化においての構造設計の棚卸しにおいて工数負担が大きいと指摘します。グループエム・ジャパン片山さんは、そもそもクライアントが何のためのデータなのかを理解したうえで可視化しようとしているのかについて、疑問に感じることがあると語りました。
実際にどんな行動をとるために必要なデータなのかを先に把握しておかないと、いつまでたっても結局使わないということになりかねません。可視化を進める前に、ビジネス的な視点での定義づけが必要だと杓谷は結びました。
どのようにして広告主に可視化を提案しているのか
「どのようにして広告主に対して可視化を提案しているのか」という質問に対して、大縄さんは、まずKPIを一緒に決め、画面レイアウトや指標のイメージのすり合わせを先に行ってからデータ収集などを行うそうです。ただ、ありのままの収集データを繋げると可視化までに時間がかかる場合もあるため、適切な大きさに設計するそうです。広告主様からは、これまで集計や分析に割いていた時間をアクションに繋げるための戦略考案に回せるようになったと喜ばれたり、ウェブデータ以外のデータソースと組み合わせることで新たな気づきも生まれたと語りました。
これからの可視化のあるべき姿
「可視化はゴールではなく、次のアクションに結び付かなければ意味がない」と大縄さんは言います。つまり、可視化で何を見せるのかという適切なKPI設計が重要であり、そのための旗振り役が必要になってきます。
片山さんも、データは結果論でしかなくどのように捉えるのかが重要であり、本当に課題を解決できるデータなのか理解することが必要ではないかと投げかけました。
小森さんは、ユーザー行動データが収集しやすくなっていきてる今、コンバージョンデータから逆算するのではなく、エンゲージメントの高まりのデータを収集・可視化することで、もう一歩先のコミュニケーションができるのはないかと考えているそうです。
データを繋げる技術は、確実に進歩してきています。今後はデータの精査、適切なKPI設計など、先を見据えたうえでのデータ収集が重要になってくるようです。
パネルディスカッション4:「これからのマーケティング運用 」
登壇者
株式会社テレビ東京コミュニケーションズ コンテンツ戦略部 デジタルマーケティングプロデューサー
明坂 真太郎さん
アユダンテ株式会社 SEO/Googleアナリティクスコンサルタント
村山 佑介さん
モデレータ:岡田 吉弘(LIFT合同会社 代表取締役/アナグラム株式会社 取締役/アタラ合同会社 フェロー)
これまでデータドリブンや人工知能など様々なキーワードでセッションが繰り広げられてきましたが、これを「マーケティング」用途で「運用」するには、実際に運用に携わる現場が現在どのような状態なのか、どんな課題を抱えているのかを知ることが重要です。このディスカッションでは、事業会社とそれを助ける立場、それぞれから見たマーケティング運用の現場感について、議論が交わされました。
人材不足と連携不足
株式会社テレビ東京コミュニケーションズにおいてデジタル領域のマーケティングを担う明坂さんは、事業会社の抱える課題として「人材不足」を挙げていました。そもそも市場にマーケティング人材が乏しいため、デジタルマーケティングにおいて何が今問題となっていて、どう解決すればいいのかを理解している人が少なく、戦略の評価ができず、戦略が実行されないことで現場が育たないというループがあるのではないかと指摘します。
一方事業会社を支える立場であるアユダンテ株式会社の村山さんは、データも人も仕事においても「連携不足」を感じるといいます。
・部署間の連携不足
例えばデータを使って何かをするにしても、どの部署がデータを管理しているのかわからない、またブラインド化によりマーケティングに関わる部署間の連携が取りづらかったり、データ取得のためのフローが煩雑でスピード感に欠けることも多いそうです。
・人の連携不足
営業担当者と運用者が異なる場合、提案内容と実務内容に差が生まれたり、また、関係者が増えてもそれを取りまとめる人がいないという問題があります。
・データの連携不足
プラットフォームでのコンバージョンデータとアナリティクス上でのコンバージョンの計測方法が異なること、アナリティクスのコンバージョンの方がビジネスに近いということを広告代理店と広告主で共通理解できているのかという問題もあるそうです。
深い谷のギャップを埋める
事業会社と広告・技術提供会社が抱える課題に共通するのは、「対上層部」「対顧客」「対部署」など様々なベクトルにおける2者間の「ギャップ」です。これをモデレーターの岡田は「深い谷」に例えました。放っておくと広がり続ける深い谷を埋めるにはどうすればいいのか、それぞれの考えが語られました。
明坂さんは、「データへの理解」「技術への理解」「ビジネスへの理解」が揃うことが必要だと言明しました。データやテクノロジーへの理解は不可欠ですが、ビジネスに対する深い理解とそこから生まれるアイデアが掛け合わされないと、継続的で優れた施策は生まれないと考えているそうです。一気通貫してスキルを持ち合わせた人材がベストですが現実的ではないため、個々のスキルを持つ人材や企業とうまくコラボレーションすることが大事だと語ります。村山さんはトップダウンで進めることの重要性を語りました。例えば担当者間で煮詰まった場合は上司同士で話を進めたほうがうまくいく場合もあるそうです。
マーケターにも理念が問われる時代に
上で語られた「ギャップ」を埋めるのは骨が折れるため、なるべくギャップの少ない企業に人材が集中しているのが現状ではないかと岡田は問いかけました。明坂さんは、マーケターにも理念を問う時代になってきているといいます。
人材不足を切り開く活路は、スキルなど目先の技術ではなく企業理念に共感できる人材を見つけること、そして様々な企業とコラボレーションしていくことなのかもしれないと、岡田は結びました。
次回の「ATARA LIVE 2018」イベントレポートでは、「パネルディスカッション5」「クロージングセッション」についてお届けする予定です。お楽しみに!