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第5回 そのページに価値はありますか?「ページの価値」の使い方
複数のデバイスにまたがるデータの分析
2018年7月11日、GoogleはGoogleアナリティクス公式ブログにて「クロスデバイスレポート」が利用可能になったことを発表しています。本機能は、Googleアナリティクスの各アカウント、プロパティに順次適用されています。
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本機能が正式に発表されてから1ヶ月が経過し、すでに適用されているアカウントも多く見受けられるので、クロスデバイスレポートの詳細についてご紹介します。
デバイスを跨いでカスタマージャーニーを把握する
Googleアナリティクスのクロスデバイスレポートは、2018年7月10日にサンノゼで開催された Google Marketing Live 2018 で発表された機能の1つでもあり、ユーザーの複数デバイスによるサイトへのアクセス状況や購買プロセスを、より的確に把握するうえで役立ちます。
ここ数年でGoogleアナリティクスは「ユーザー」にフォーカスした機能を次々と発表してきました。ここ数年ではクロスデバイスリマーケティングへの対応をはじめ、「ユーザーエクスプローラー」「ライフタイムバリューレポート」などがリリースされています。2018年に入ってからも「コンバージョン見込み」や今回の「クロスデバイスレポート」など、分析の軸がセッションからユーザーへと変わり、デバイスを跨いだカスタマージャーニーを把握するという、Googleアナリティクスの明確なメッセージを感じ取ることができます。
Googleアナリティクスでデバイスを横断したデータの計測は、User ID を設定することによって、本機能が適用される前も可能でした。しかし User ID はユーザーがログインするタイミングに付与されるため、ログイン機能を持つアプリやサイトでしか使用できず、ログインを必要としないサイトは User ID を取得できないため、デバイスを跨るセッションやコンバージョンの重複を計測することができませんでした。
今回の発表により、ログイン機能を持たないサイトやアプリでも「Googleシグナル」を有効にした直後から、クロスデバイスレポートが適用されます。「Googleシグナル」を有効化したクロスデバイスレポートについて、アナリティクスヘルプでは以下のように記載しています。
広告のカスタマイズをオンにしているユーザーのデータを基に、端末のタイプごとにユーザーベース全体の行動をモデル化します。使用されるデータは、セッション ベースではなくユーザーベースです。この行動モデリングに User ID ビューは必要ありません。
アナリティクスヘルプには、データの収集対象が全ユーザーではなく、広告のカスタマイズをオンにしているユーザーのみと記載してあります。User ID 機能によって得られたクロスデバイスのデータとは異なり、ログインしていないユーザーも今回のレポートの対象となるため、収集できるデータの範囲も以前より変化します。
Googleアナリティクスの管理画面からGoogleシグナルを有効化する手順については、以下のヘルプをご覧ください。
クロスデバイスレポートの詳細
Googleシグナルを有効にすると、以下のレポートが追加されます。
1.複数デバイスによる重なり
デバイスごとのユーザー、セッション、目標完了数を確認できます。また、[Desktop] + [Mobile] や [Desktop] + [Tablet]など、重複するデバイスごとの数値も確認することで、重複しない単体のデバイスと比較したり、ベン図で確認することができます。
2.デバイス経路
デバイス経路は、[デバイスカテゴリ] [キャンペーン] [チャネル] [メディア] [OS] といったディメンションに対して、[ユーザー] [セッション] [目標] などの指標を確認することができます。
デバイス経路では、目標前後でフィルタをかける「経路オプション」が選択可能になっています。画面上部の [ステップを表示] から、[目標プロセス内] [目標プロセス前] [目標プロセス後] といった、目標を含むすべての経路、または目標前後のレポートを表示することができます。また、経路内の接点の数は指定することができません。
[目標プロセス前] [目標プロセス後] の場合は、[イベントラベル] [イベントカテゴリ] [トランザクション] などでフィルタをかけることができます。
3.チャネル
上のグラフに [チャネル別ユーザー] [時間帯別ユーザー] が表示されます。[デフォルトチャネルグループ] [年齢] [性別] [ソース] [ソース/メディア] [広告コンテンツ] [キャンペーン] [キーワード] ディメンションに対して、[集客] [行動] [コンバージョン] に関する指標を確認できます。
チャネルレポートでは[ユニークユーザーあたりの平均収益額]が把握でき、またクロスデバイスレポートの中で唯一、デバイスカテゴリやeコマースなど第2のディメンションを設定可能など、柔軟性もあります。また、チャネルレポートのデータは「最後の間接クリック(Last Non-Direct Click)」のアトリビューションモデルに基づいています。
4.集客デバイス
集客デバイスは、[デバイスカテゴリ] [キャンペーン] [チャネル] [メディア] [OS] [ソース] ディメンションに対して、[新規ユーザー] [収益] [目標] などの指標を確認することができます。
また、収益の指標には [Originating Device(起点のデバイス)] [Other Devices(その他のデバイス)] があります。該当のデバイスが目標達成の起点となったかどうかを収益で把握することで、獲得につながったデバイスの貢献度が分かります。その点については、Googleアナリティクス公式ブログにも記載されています。
たとえば、旅行会社のマーケティング担当者がクロスデバイスレポートの一つである「集客デバイス」レポートでアクセス状況を調べたところ、顧客の多くが最初は情報収集のためにモバイル端末でサイトにアクセスし、その後 PC からアクセスして旅行を予約していることがわかったとします。この場合、旅行のプランを考え始めた段階のユーザーにリーチできるよう、モバイル広告キャンペーンに力を入れると高い効果が見込める可能性があることが分かります。
サポートされていない機能
Googleシグナルが有効化されているプロパティでは、次の機能はサポートされません。
・BigQuery Export
・ダッシュボード内での使用
・カスタムレポートの使用
・カスタムテーブルの使用
・User-ID プロパティでのGoogleシグナルの有効化
・日中の1時間単位のデータ処理
・モバイルアプリプロパティでのGoogleシグナルの有効化
・Reporting API での使用
・データスタジオでの使用
今回の機能は、User ID のようにログイン機能を持つサイトに限らず、Googleシグナルを有効にするだけでクロスデバイスレポートを確認することができ、それはデバイスを跨いだ「ユーザーベース」の分析を行うために役立ちます。
Google 広告では「デバイスをまたいだコンバージョン」や「データドリブンアトリビューション」など、複数のデバイスを跨いだデータの計測はすでに実装されており、またGoogleアナリティクスでも2017年5月にクロスデバイスリマーケティングはすでに使用可能となっています。今回のアップデートによって、多くのサイトで複数のデバイス間のデータ取得が可能となり、オーディエンスリストの精度もより高まることが予想されます。
User ID によるクロスデバイスレポートにはあったカスタムセグメントが使用できないなど、様々な制限もありますが、各チャネルや目標までのプロセスを、デバイスを横断して目に見えて把握できるようになったことで、よりユーザーに沿ったカスタマージャーニーを把握する一歩ともなりそうです。
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