もうひとつのマス連動型広告と、これからのWEBマーケティングに想うこと

もうひとつのマス連動型広告と、これからのWEBマーケティングに想うこと

アタラ 広告代理店運用強化トレーニング

Domoの認定試験を通して感じたこと

1月よりアタラにジョインした鹿毛(かげ)と申します。アタラで仕事を始めて、最初のミッションの一つがDomoのビジネスコンサルタントの認定を取得することだったので、そのときに感じたこと、今の時代感などを書いていこうと思う。

 

Domoは、企業における経営や意思決定に関わるデータ、広告やサイト上の行動、顧客属性、セールス、在庫、人事、財務などを一元化・可視化し、迅速で筋の良い意思決定の支援、アクションにつなげるための関係者間コラボレーションを実現するツールだ。ビジネスコンサルタント/テクノロジーコンサルタントの資格試験があり、3日間缶詰で講義を受けたあと、筆記とプレゼンテーションでのテストがある。

 

自分はデータフローやSQLっぽい書式を使うパートでだいぶ苦労したが、仲間のサポートもあり試験にパスすることができた。この体験の中で最も印象的だったのは、複数接点のデータセットをつなげ、洞察を得たり改善に向けたアクションを取ったりするための合理的な仕組みがすでにそこにあり、大きな労力、時間、コストをかけてダッシュボード的なDMPを建付けていくことの意味や価値を問い直さざるを得ない、ということだった。

 

TVと検索とWEBサイト

複数接点を組み合わせた、統合させた取り組みのパワーを知るきっかけになったのは、ネット広告の世界に転じて時間が経っていない、10年以上前の体験に原点がある。

 

当時、私は紙中心の広告制作会社から転職してリスティング広告のコンサルタントをしており、改善のノウハウも組織体制もまだ整わない中、手探りでチューニングの手法を編み出していた。運用型広告の走りの時代でもあり、市場は猛烈な勢いで拡大していたが、押しなべて運用レベルは低く、私が編み出した手法を投入するとガンガン成果が上がった。

 

その中で、あるクライアントから相談が持ちかけられた。新年度に大々的にTVCMを打ち、併せてサイトのリニューアルを行うので、その条件のもとリスティング広告の運用で最大の成果を上げるための提案をしてほしい、という内容だった。このクライアントの運用では、すでに私の持つスキルをすべて投影したチューニングを行っており、過去最高の成果を出していたが、さらなる成果の積み増しを狙うため、私は3つの策を提案した。

  • 前回のTVCM投下時の反響を分析し、受け皿としてのリスティング広告アカウントの再構成を行う
  • オンエア予定のTVCMコンテ、リニューアル後のサイトのプロトタイプを共有して、メッセージ内容を広告テキストとシンクロさせる
  • 当時流行っていたマス連動キーワードは設定しない。検索をブランド(社名)ワードに集中させる

クライアントや媒体側と何度かのやり取りを経て、年度末までにTVCMや新サイトと連動したキャンペーンを作り、OFFの状態で待機。年明けとともに通常時キャンペーンをOFFに、TVCM受けのキャンペーンをONに切り替えた。

 

TVCMのオンエアが始まると、見たことのないペースで効果測定ツールのカウンターが積み上がっていき、自分のスキルをフルに注入したそれまでの運用成果をはるかに凌駕する成果が出始めた。が、私は読みが当たり想定以上の成果が出た喜びと、それと相反するやるせなさを同時に感じていたように思う。どちらかというと、やるせないような複雑な感情の方が強かったように記憶している。

 

運用型広告は成果につながって初めて評価される広告なので、それまでの数倍の成果があっという間に積み上がったことは嬉しいことである。しかし、どんなに頑張ってそれ単体で工夫をして運用をしても、TVやサイトの改善を組み合わせた取り組みにはまるで敵わない。リスティング(運用型の広告)だけじゃダメなんだということが、はっきり分かった。

 

そして、この先クライアントの期待に応え続けるためには(成果を上げ続けるという意味で)運用型広告に加えて検索を受けて遷移するサイト設計や、検索行動を引き起こすTVなどと連続性や関係性を持たせた提案にしていくべきであり、その理想への道程がひどく険しいものと感じたこと(10年以上前のオンラインマーケティングでは)が、複雑な感情の源泉だったように思う。

 

もうひとつのマス連動

「TV→検索→自社サイト」のコミュニケーションに連続性や関連性を持たせることで成果を上げる、という意味では、「もうひとつのマス連動」と言っても良いのでは、と考えている。(いわゆる「マス連動」については、弊社フェローの有園さんのコラムを参照のこと)

 

また、それまでの取り組みから成果の積み増しができるかもしれない、という考えもあった。実際、自分が想像していたレベルをはるかに超える成果があり、ブランドワードなどナビゲーショナルな検索ワードだけでなく、トランザクショナル、インフォメーショナルなものでも同様なリフトが見られた。そして、クライアントの期待に応え続けるために、こういった接点をまたいだコミュニケーションをさらに推進していこう、と思うきっかけになった出来事だった。

 

その後、オムニチュア(その後アドビに買収された)が提唱していたマーケティングスイート構想の推進、複数接点それぞれの成果への貢献を可視化して広告予算の最適配分を行うアトリビューション分析、プライベートDMP構築支援やデータビジネスのサポートを行ってきた。複数の接点データを統合させ相互作用を引き出すことで、単体の施策や接点では得られない成果を生み出だすこと、またそこから得られる洞察、気付きのマーケティングコミュニケーションへの投影など、複数接点をまたいだ統合的マーケティングを、自分の取り組みの芯を成すものとしてずっと関わってきた。

 

今の時代感とWEBマーケティング

Domoの講習を受けているとき、今まで取り組んできたこと、そこで得てきたこと、成し得なかったことなど、この10年で取り組んできたことが螺旋階段をゆっくり上がっていくように頭の中に浮かんだり消えたりしながら、何かデジャブのようなものを感じた。明確に像として形になっていないものの、こんなものがあったらいいな、と思っていたものが目の前に現れたような気がしたからだと思う。

 

弊社がサポートしているDomoや提供しているglu(運用型広告のデータ一元化やレポート自動化ツール)の引き合いに加えて、マーケティングコミュニケーションをデータドリブンなものに変えていく取り組み、データ統合による新しいビジネスの創出など、今の時代感の中で仕事の幅も広がっている。また、Cookieを前提としたネット広告の仕組みの有用性が次第に薄れていき、アナログな接点の長所を残しながら裏側がデジタル化され、WEBマーケティングの前後にある接触や体験すらもデジタルの中に取り込まれていく中で、私達が関わっている仕事の形もゆっくりと元に戻らない形で変わっていく。全てがデータによる科学的なアプローチで白黒はっきりさせていく、というより実態はその逆で、そのデータや分析結果をどう読み解き解釈するか、ノイズとして無視すべきなのか、といった人間の行動理解に基づくイマジネーション、活用にあたってのモラルや社会へのコミットメントなど、普遍的な人間性に基づく前進が重要になる。

 

そういう意味で、行きつ戻りつしながらも、この世界の未来は明るく、多くのチャンスに満ちていると考えている。

 

※本記事の内容、所属等は公開日時点のものです。

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