O2S: Online to Store(店舗誘導施策)に寄り添う:Unyoo.jp Meetup Vol.12イベントレポート

O2S: Online to Store(店舗誘導施策)に寄り添う:Unyoo.jp Meetup Vol.12イベントレポート

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黎明期を抜けた店舗誘導施策

2018年3月23日(金)、Unyoo.jp Meetup Vol.12 「店舗誘導施策(O2S: Online to Store)に寄り添う」を開催いたしました。2015年10月に AdWords の「来店コンバージョン」が計測可能になったことを皮切りに、多くの広告主で店舗誘導施策キャンペーンが試験的に行われ、2018年の今ではもはや実用フェイズに移ってきているといっても過言ではありません。

 

しかしながら、大手広告主での実用化が進んだ一方、中小規模の広告主にとってはこれから始めたいと思っている方も多く、知見の差に大きな開きがある領域とも言えます。そのようなギャップを埋めるべく、Unyoo.jp Meetup vol.12では、店舗誘導施策、いわゆるO2S(Online to Store)をテーマに業界の最前線で活躍されている有識者にO2Sについて思う存分語っていただきました。

 

 

好評を博したイベントの内容をレポートいたしましたので、ぜひご一読いただければ幸いです。

 

登壇者
松塚 展国さん (シナラシステムズジャパン株式会社 執行役員)
テーマ: 「O2Sマーケティングへのシナラなりの寄り添い状況」

 

信濃 伸明さん (グーグル合同会社 広告営業本部リテール業界統括部長 )
テーマ: 「O2O ソリューション 広告にどのように活かすか」

 

清水 一樹さん (アタラ合同会社 執行役員)
テーマ: 「店舗誘導施策の導入にあたり共通する課題」

 

第1部:O2Sマーケティングへのシナラなりの寄り添い状況

シナラシステムジャパン株式会社の松塚様からは、「O2Sマーケティングへのシナラなりの寄り添い状況」と題しまして、シナラシステムズジャパンの来店計測の仕組みと、店舗への来店を目標とした広告の配信、分析手法についてお話しいただきました。

 

シナラシステムジャパン様(以下シナラ)の来店計測はWi-Fi位置情報と契約者情報の2点です。携帯電話会社のWi-Fiの電波にユーザーの持つモバイルデバイスが接触した時に来店を計測する仕組みとなります。

 

 

来店を計測する方法としては、Wi-Fi、GPS、Bluetooth など様々な手法があり、それぞれ得意と不得意がありますが、精度と量の観点からWi-Fiが最も来店計測に適していると考えています。

 

 

さらにシナラでは、そのWi-Fiのデータを「電波強度」「滞在時間」「検知時間帯」の3つの観点からフィルタリングを行い、来店計測の精度を高めるためのチューニングを行っています。

 

 

また、昨今話題となっている個人情報に関しては、通信キャリアの中にある状態のまま利用可能にしているとのことです。シナラは自社のことを「セキュアに扱わないといけないデータを安全高速処理することを強みとするデータフラッパーゲートの会社」と位置づけており、来店の計測の際しても個人情報を厳重に扱っています。

 

 

シナラの提供しているサービスには広告の配信サービスである「REAL PEOPLE」と配信結果の分析サービスである「REAL SIGHT」の2つがあります。

 

 

「REAL SIGHTS」はGoogle AnalyticsのO2S版とも言えるサービスで、様々な媒体を横ぐしで評価することができます。来店数10からレポート可能で、カスタムで個別店舗ごとの評価も可能となります。下の図は、これまでウェブでのコンバージョンを軸に広告の効果を検証していましたが、店舗への層客をゴールにROIを再評価したところ、各メディアへの予算配分が大きく変わった例を紹介しています。

 

 

来店が計測できるようになったからこそできた最適化と言えるかと思いますが、今後は運用型広告の世界でもこういった事例は多く出てくるのではないかと想定されます。

 

シナラはデジタルマーケティングの測定に関する「ものさし」となっていくことを目指し、来店計測に使用するシグナルなどを拡充していくとのことなので、今後の進化がますます楽しみです。

 

第2部:O2O ソリューション:広告にどのように活かすか

グーグル合同会社(以下グーグル)の信濃様からは、「O2O ソリューション: 広告にどのように活かすか?」と題しまして、グーグルの「来店コンバージョン」の計測の仕組みから、組織の有り方までお話しいただきました。

 

詳細は下記リンク(日本語)。

 

2018年3月現在、「来店コンバージョン」は、検索広告、ディスプレイ広告、YouTube 広告それぞれに対応しています。AdWords の主要なネットワークに対応しているので、既存のキャンペーンで計測しやすいかと思います。

 

 

ローソン様の事例では、「来店コンバージョン」をKPIとして、ディスプレイ広告からの来店単価および来店率を計測したところ、来店率はモバイルが15.7%、PC&タブレットが11.5%と、モバイルデバイスが来店に寄与しやすいことがわかりました。広告運用者にとって、モバイルが店舗誘導に効くことは「来店コンバージョン」を計測する前から推測されていましたが、改めてデータとして実証されたかたちとなります。

 

参考リンク:Google AdWords 公式ブログ
 

また、これまで店舗誘導施策はチラシが中心でした。西友様が、チラシとオンライン広告の効果を比較検証したところ、商圏リーチ、リーチ単価、来店単価ともにチラシと比べて効率が高いことが実証されています。

 

参考リンク:Google AdWords 公式ブログ
 

また、「距離に基づく入札単価の設定」機能を活用することで、店舗の距離に応じて入札価格を強化することもできます。店舗に近いユーザーを対象に入札価格を強めたところ、来店コンバージョンが54%改善したという事例が紹介されました。広告運用者としては最適化にぜひ使用したい機能のひとつです。

 

参考リンク:Google AdWords 公式ブログ
 

さらに、Google Merchant Centerに各店舗の在庫情報をデータフィードとして登録して広告を配信する、「ローカル在庫広告」についても紹介されました。近隣の店舗の在庫情報を表示する「ローカル在庫広告」は通常のショッピング広告と比べて来店率・来店単価ともに効率が高いことが実証されているとのことです。

 

店舗誘導施策の導入にあたり共通する課題

グーグルの信濃様と、アタラ合同会社の清水の双方から、店舗誘導施策を行ううえで共通する課題として、組織のあり方についての提言がありました。

 

店舗とECサイトの双方を持っている広告主の場合、ECサイト向けのキャンペーンの中で来店コンバージョンを計測することが多く、予算もECの部署から捻出されていることが多いかと思います。この場合、ECのROIと来店数の拡大を両立することが難しいため、なかなか店舗誘導関連の施策に振り切れないことがよくある課題として上げられています。

 

例えば、店舗販促担当者が店舗誘導施策を行うことを望む一方、ECサイト担当者はECのROIが悪くなる可能性を懸念し、意見が対立するケースが考えられます。

 

これらの課題を解決するために、顧客視点に立ち返って、EC・店舗などPOS(Point of Sales)に関わらず、会社全体としてROIを計測する、いわゆる「統合ROI」などのようなKPIを設定していくことが望ましく、またそれをどのように設計するかが課題となります。

 

グーグルの信濃様からはウェブ事業部とマーケティング戦略部双方が知見を共有し、店舗誘導という共通のKPIを追いかけるチームを作り、徐々にオンライン/オフラインの垣根を越えた組織を構築していくのが望ましいのではないかとお話いただきました。

 

アタラ合同会社の清水からも、マーケティングの部門だけでなく、各店舗の営業責任者など、部署を横断してサミットのような形で半日ほどかけて店舗誘導施策についてとことん話し合う場を設けると、その後の進み方もスムーズになってくるとのお話もいただきました。

 

まとめ: 店舗誘導施策の成功の秘訣は管理画面の外にある

今回ご登壇いただいた皆様の話をまとめると、店舗誘導施策に関しては下記の2点が重要となるかと思います。

 

1. 来店を計測する技術への正しい理解
2. 予算編成・組織のあり方を理解して改革する

 

来店の数がどのように計測されているのかを正しく理解することはもちろんのこと、各部署の予算がどこから出ていて何をKPIとしているのかを広告運用者は正しく理解しておくことが求められるのではないかと思います。

 

広告運用者はどうしても管理画面の中のことで課題を解決しようと思いがちですが、思い切って日々対面となっている担当者の上長の方に、組織のあり方について話を振ってみるのも良いかと思います。

 

こうした一歩一歩の積み重ねが明日の広告運用の常識を作っていくと思います。店舗誘導施策はまだ黎明期を抜けたばかりです。Unyoo.jpの読者の皆様にはぜひ明日の常識を一緒に作っていければと思います!

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