LINE広告(旧 LINE Ads Platform)の現在 7300万人にリーチできるキャンペーン成功の秘訣:LINE 木原宏樹さん、北出庫介さんに聞く

LINE広告(旧 LINE Ads Platform)の現在 7300万人にリーチできるキャンペーン成功の秘訣:LINE 木原宏樹さん、北出庫介さんに聞く

運用型広告レポート作成支援システム glu グルー日本においては今やインフラの一部と言っても良いほどの月間アクティブユーザー(Monthly Active Users: MAU)を誇る LINE ですが、2017年4月3日より100万円の最低予算を撤廃し、最低入札価格も変更するなど、出稿のハードルを下げながら機能開発が進められています。

最近ではパートナー制度の導入が記憶に新しいですが、その圧倒的なスケールに充実した広告製品とサポート環境が揃えば、メディアプランニングで外すことのできないプラットフォームとなるように思います。

そこで今回は、LINE Ads Platform(以下:LAP)の概要から具体的な Tips まで、製品開発やビジネスプラインニングのキーマンである木原宏樹さん、北出庫介さんにお話を伺いました。

話し手:LINE株式会社

LINE Ad Business センター
AD事業部 Display事業企画チーム
Manager 木原宏樹さん

LINE Ad Businessセンター
LAPプロダクト企画室
Product Manager 北出庫介さん

聞き手:アタラ合同会社 中川雄大

※このインタビューは2017年末に行われました。

中川:まずはお二人の業務内容について教えていただけますか。

北出:私はLINE Ads PlatformのLAPプロダクト企画室という組織の中で、プロダクトマネージャーを担当しています。

具体的には、木原等と連携して開発するものを決めたり、進行ディレクションなどを行なっています。また、昨今は獲得向けの機能だけではなくブランディング寄りの機能開発なども行っています。

木原:私はマーケティングからプランニングまで、いわゆるフロントのセールス以外のすべての役割を担っているアド事業部という部署に所属しており、同部署のディスプレイ事業企画チームで主にLINE Ads Platformのビジネスプランニングを行っています。

具体的には何か新しい商品を作る際、例えば「LINE Ads Platformでこういう商品が作りたい」という企画が挙がった際に商品に対してビジネスの観点での提案や意見を投げかけます。あとは、LINE Ads Platform全体の年間事業計画作成や作成後のモニタリング、様々なサービス側との社内調整なども行っています。

7,000万超のリーチが最大の武器

 

中川:現在、LINE Ads Platformは広告プラットフォームとしてめきめきと頭角を現していますが、まずはその前段となるLINEが現在どういった状況にあるか教えてください。

木原:MAUについては、主要4ヶ国(日本・タイ・台湾・インドネシア)で約1.68億人です。分解して日本だけで見てみると、MAUは7300万人、はDAU/MAU比率は84%です。このアクティブ率は業界でも非常に高いと思いますし、DAUの分母であるMAUも最大級レベルではないかと考えます。

中川:ユーザーの年齢層はいかがでしょうか?

木原:特に若い人が多いというわけでもなく、人口分布に沿っているイメージですね。

中川:ありがとうございます。若年層に寄っていない、というのが非常にユニークですよね。そんな7300万人にリーチできるLINEですが、LINE Ads Platformの概要と実現できる事について教えていただけますか。

木原:配信先はLINEのタイムラインとLINE NEWS、そして2017年10月にはLINEマンガ、LINE BLOGも配信先に追加され、現時点ではこの4つの配信先がメインメディアとなっています。

LINEマンガ

LINE BLOG

木原:メリットとしてはやはり、LINEのユーザーデータを使ったオーディエンスターゲティングができるという点が一番の強みかと思います。また、これまではダイレクトレスポンス向けの広告商品が多かったのですが、MAUやアクティブ率の高さを利用したブランド主向け広告商品のラインナップとして、リーチ&フリークエンシー、ファーストビューといったリッチな広告展開を使った広告商品も展開しています。おかげ様で徐々に案件も増えてきて、大手消費財メーカー、自動車メーカー、通信企業など幅広い業種の方にご利用いただいています。

中川:特に多く利用される業種などはあるのでしょうか?

木原:ここだけ特別に強いといった偏りはないですね。LINE Ads Platformというサービスは比較的若いサービスなので、当初は精度面や機能面で劣る部分も正直な所多かったかと思うのですが、北出をはじめとするPM、エンジニアの人材も急速に増えてきて、秋口くらいからは他にあって弊社にないといったものはほぼなくなってきたかなという実感があります。また、以前はアカウントの「友だち」を増やす施策としてはスタンプ訴求、店頭POP、オウンドメディアからの誘導が主流だったのですが、それらにプラスしてLINE Ads Platformを通じて友だちを獲得するCPF型(Cost Per Friend:友達追加毎の課金形態)商品も今後拡大予定です。

オンラインで接触しにくい層へのリーチを可能にする爆発力

 

中川:膨大なユニークユーザーにリーチできるというのが御社の一番の強みなのかと感じています。機能開発はリソースがあれば豊富になると思いますが、このポテンシャルリーチは他が真似しようと思ってもできない事ですよね。

木原:お金と人材で獲得できない部分というのはとても大きな資産かなと思っていて、今後はこの資産をどううまく活用していくかがキーですし、活かせるような商品設計をしていきたいと思っています。例えば弊社にはファーストビューという商品があります。1日掲載で掲載ポジションを保証しており、1日で約1,800万人のリーチ獲得が期待できます。1日でこれだけのリーチを獲得できる商品は、日本国内でもおそらく他にはないだろうと思います。こういった商品が作れるのも、7300万人のユーザー数という資産があるからこそだと思います。

過去にある広告主様がプレキャンペーンで弊社の広告をご活用いただいた事がありました。年間のリード予算があったらしいのですが、その10%強くらいを1回のキャンペーンで取り切ってしまい、オペレーションが追い付かなくなって途中で止めるといったこともありました。LINE Ads Platformは、予想もしない爆発性を秘めていると思います。ですので、他のメディアで頭打ちになったものであってもLINE Ads Platformで限界突破ができたという話はよく聞きます。

木原:うちの両親くらいの年齢になってくると、FacebookやTwitterはやらないんですよね。それでもLINEは使うんです。それが、一番わかりやすいLINEのリーチ力なんだと思います。

中川:いわゆるSNSは歴史から見ると起伏があって、ダウントレンドになると離れるユーザーも多いものですが、LINEのようにメッセンジャーから来ていると、他に乗り換える手間もあって辞めにくいですよね。

木原:それだけのリーチ力があるので、タイムラインは見ているけれどLINE NEWSは見ていないという人もいるかもしれない。だから満遍なく広告が露出するようにタッチポイントもなるべく増やしていきたいと考えています。

中川:7300万人というのは、すべてのコンテンツで、ですか?

木原:LINEだけで7300万人です。タイムラインは6500万人、LINE NEWSが6000万人です。

中川:大半のユーザーが見ているという感じですね。ターゲティング、トラッキングについても教えていただきたいのですが、ターゲティングでは年齢や性別などで類推されているのでしょうか?

北出:基本的にはみなし属性でやっています。ただこのみなし属性も、LINEはユーザーの母数が多いのでとても精度が高いです。正直、この精度の高さには私も入社して驚かされました。

中川:ちなみに、類推の元となるデータにはどういったデータをお使いですか?

木原:スタンプの購入、公式アカウントの登録状況などです。興味関心などは、フォローの状況などにより異なります。またユーザーに気持ち悪さがないようにするのが信条ですので、トークの中身など、ユーザーのクローズドな情報に触れる部分は一切見ていません。実はめちゃくちゃ真面目に取り組んでいるんですよ。(笑)

中川:現在の利用では、ダイレクト系かブランド系、比率としてはどちらが多いですか?

木原:比率としてはダイレクト系が多く、ブランド系には徐々に拡大しています。想定より上回った速度で拡大していっている感じですね。

中川:リーチが取れますからね。ブランディングの際はテレビとの併用といったケースも多いのでしょうか?

木原:広告主様にもよるのですが、基本的にはテレビがあって、LINEはテレビで届かないユーザーに対してアプローチするというリーチ補完の形が多いです。

オークションアルゴリズムは”ユーザーの反応”を重視

 

中川:個人的にオークションアルゴリズムには各プラットフォームの思想が出ると思っていて、興味があります。思想次第で重く受け取るシグナルも変わると思いますし、そのプラットフォームを運用するうえで運用者が絶対に気にしなければならない部分だと感じています。運用者がLINE Ads Platformに出稿するうえで、テクニックを知る以前に、どういうマインドセットで向き合うのかを考えなければいけないかなと思っているんですが、それを踏まえて、LINE Ads Platformのアルゴリズムの特徴などを教えていただけますか?

北出:アルゴリズムは日々変化し続けています。半年前と3ヶ月前は当然として、昨日と今日でも違います。そうした前提がある中で、ユーザー・広告主さんが最適な効果で落とせるような形でロジックを組んでいます。運用者様には、インフィードという領域上、当然クリエイティブの疲弊も激しいので、できる限りクリエイティブは頻度高く変えていただきたいと考えておりますし、よりLINEにあったクリエイティブへ意識を向けていただくとよいと思います。

中川:ベースは入札×品質スコアがあって、品質スコアもいわゆる推定のクリック率などのユーザーの反応を大事にされているという事ですね。

北出:そうですね。そのうえで我々は、CTRだけをずっと良くしていけばいいというロジックにはしていません。CTRが高くてもCVRが低いと、結果として広告主様にお返しできない。

中川:CVRまで見ていらっしゃるんですね。

北出:基本的にパフォーマンスで返して、そのあと予算を上げていただくという「まっとうな事をまっとうにしよう」という風に考えています。

中川:ユーザーの反応が良く、広告主も望んだようにコンバージョンが取れていれば入札額は低くなると捉えて良いのでしょうか?

北出:セカンドプライスなので、基本的にはCTRなどが高ければ広告のオークション値としては高く入ります。

中川:例えば Google AdWords でいう広告表示オプションのような、入札と品質スコア以外に考慮されているシグナルはありますか?

北出:完全にないわけではありませんが、そこまで大きいものは現在ありません。ただ今後間違いなくやらないといけない事ですし、もっと強化すべき点だと考えています。

手動管理は困難、自動化が推奨

 

中川:ターゲティングやバイイングですが、御社としても自動化を推奨されているのでしょうか?

北出:媒体の持っているデータの多さからしたら、手動の入札で対応していくのは精度や頻度の面ではかなり厳しいと考えています。そうなった時に効果を返すためには媒体の情報を使うのが一番ですので、弊社の情報を使った自動化をもっと進めていきたいと考えています。

中川:ある程度ターゲットを決めて、そこにクリエイティブを数パターン入れて回していくイメージですね。

北出:はい、コミュニケーションを分けていただく程度にしていただくのがよいかなと思います。コミュニケーションを分ける作業、クリエイティブを最適化する作業も、最終的には弊社でやりたいと考えています。

クリエイティブの流用は非推奨、LAP独自の表現を

 

中川:もちろん広告主や目的によって異なるとは思いますが、LINE Ads Platformをこう使えば良いといったアドバイスはありますか?

木原:LINEは比較的若いユーザーの比率も高いので、他でやって成功した事例が弊社でも適用できるかというと、必ずしもそうではありません。例えばベタに芸能人を使った方がユーザー的には強いアイキャッチとなりパフォーマンスが高く出たり、コスメ系のクリエイティブであれば実際にその化粧品の箱が自分の家に届いて箱が開くようなイメージなど、一見何気ない事なのですが、そういったものが非常に高パフォーマンスだったりします。つまり、わかりやすさをより前面に出した方が、LINEのユーザーには強く響くのだと思います。

中川:広告主の観点からすると Twitter や Facebook でうまくいったから LINE でも使ってみよう、という考えは起こりがちだと思います。それを一度立ち止まって考えてみた方が良いという事ですね。動画クリエイティブも入稿可能ですが、実際のところ入稿は増えてきていますか?

北出:バーティカルフォーマットなどの動画のためのメニューもどんどん出していっていますので、ご利用いただく広告主様も増えていますね。

バーティカルフォーマット
(ユーザーがタップすることで全画面再生が可能になる縦型動画広告)
 

中川:ダイレクト系の広告主向けのメニューでも動画素材は可能でしょうか?

木原:できますが、課金はCPMになります。

中川:これは他のSNSサービスも同様だと思いますが、ユーザーは広告を見に来ているわけではないですよね。例えばLINE NEWSとLINEマンガなどプラットフォーム別にクリエイティブを分けた方が良いのでしょうか?

北出:配信面別にターゲティングできるメニューはまだ用意していないので、基本的には様々なクリエイティブを入稿していただいて、後は弊社のアルゴリズムにお任せいただくのが一番良いかと思います。

また、クリエイティブは必ず摩耗するという前提のもと、定期的に切り替えていただきたいですね。頻度はクライアント様によって異なりますが、減衰したタイミングでできる限り変えていただいた方が良いと思います。

中川:なるほど。毎日とはいかなくとも、必ずクリエイティブは疲弊するという事を念頭に置いて、明らかにインプレッションが落ちてきたという事であれば差し替えが必要なのですね。ユーザーのためにならない広告は出ないわけですから、ここはきちんとやっていただきたい所ですね。

今後の展望について

 

中川:今後の LINE Ads Platform の方向性や、ロードマップを教えてください。

木原:方向性については、広告主様にパフォーマンスで返すという大前提のもとに進めていこうと思っています。CPAだけをお客様の最終ゴールとするのではなく、その後のROAS等での貢献度向上のため、ブランドリフトではなくセールスリフト、ブランドスイッチ等で、プラットフォームとしての計測・配信の文脈をもう少し伸ばしていきたいです。また、2018年1月に大阪オフィスの新設を予定しております(※)。西日本エリアでの拡販を進めるとともに、SMB領域までサポートを強化していければと考えています。

※2018年1月15日に開設済み
参考:LINE、新たに大阪オフィスを開設

中川:計測という部分では例えば Facebook は調査会社などの第三者機関を使ってリフト効果を計測するソリューションを提供していますが、御社の効果測定オプションも同じと思って良いのでしょうか。

北出:はい、弊社のブランドリフトサーベイも同様です。

サードパーティさんがタグを入れる等の話とは微妙に異なりますが、自社で出来ないものについては第三者の協力も必要だと考えています。今後はパートナーのプログラムで AdTech Partner、Ads Measurement Partner、Data Provider Partner など補完し合いながら開発を進めていきたいと思っています。

中川:御社はユーザー数も多いですし、火急の問題ではないかと思いますが、広告主の利用が進むに連れて広告在庫も問題も出てくるかと思います。御社は枠を増やしていく部分の開発はされているのでしょうか?

木原:昨年LINEマンガやLINE BLOGへの配信を開始したように、ファミリーアプリへの展開は今後も進めていきます。また、アプリのエンゲージメント広告やアプリの中のイベント最適化など、広告主様のニーズに合わせた最適化ができるような製品も提供していきます。

中川:最後に、LINE Ads Platformというプラットフォームをどのように捉えていらっしゃいますでしょうか。

北出:ユーザーや広告主にとっても Win-Win な存在でありたいと思っています。先ほども話題にでたように、GoogleとFacebookによる広告プラットフォームの二極化が進んでいると言われていますが、我々は競合であって競合でないと考えています。ビジネスコネクトなどLINEだからできる事も多いので、その中で独自の色を出していければな、と。他社が新サービスを出したから自分たちも出すというスタンスではなく、自分たちにしかできない事をやっていきたいですね。

木原:利用者様には各社のプラットフォームを用途に応じて使い分けていただければと思います。例えば弊社は7300万人のMAUを持っていますが、だからといってLINEだけやっておけば完璧という話ではありません。実際弊社でできない事もたくさんありますし、キャンペーン、訴求内容に応じて柔軟に使い分けていただきたいです。

中川:貴重なお話をありがとうございました!グローバルでは Google と Facebook の複占化が進む中で、アジアからどのように存在感を発揮されていくのか、今後も楽しみにしております!

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