運用型広告の2018年の展望と、取り組んでおきたい3つのこと

運用型広告の2018年の展望と、取り組んでおきたい3つのこと

運用型広告レポート作成支援システム glu グルー

運用型広告の世界に10年携わって

冒頭から私事で恐縮ですが、筆者は2018年の4月に社会人歴10周年を迎えます。2008年4月に新卒一期生としてGoogle に入社して運用型広告の世界に飛び込んでから、あっという間に10年という月日が経ってしまったように感じています。この10年の間にモバイルの世界もフィーチャーフォンからスマートフォンに移行し、当初は海賊版サイトと揶揄されて広告主から敬遠されていたYouTube も今では多くの広告主が利用するメディアになるなど、10年という歳月は多くのことを変えていきました。

 

個人としては、この10年の間に Google には二度お世話になり、また、世界最大の旅行サイトで、検索連動型広告への出稿量が世界でもトップクラスの企業でもある Tripadvisor で広告の運用に従事し、最先端のデジタルマーケティング環境に触れるなど、得難い経験をいくつもさせていただきました。また、2016年からは現職のアタラで広告代理店に近い立場で運用型広告を上手に使いこなすためのお手伝いをさせていただいております。

 

最初から計画していたわけではないのですが、期せずしてこの10年の間に媒体社・広告主・代理店の3つの立場を経験したことになります。加えて、この10年のほとんどをグローバル企業の中で過ごしたことで欧米と日本の運用型広告への取り組み方の違いも見えてくるようになり、日本の長所と短所が前よりも自分の中で整理ができるようになりました。2018年の今年はこれまでの10年の集大成として、今まで培ってきた知見を広く業界に発信し、少しでも運用型広告に携わる人々にとって有益なものにできればと思っております。本年もUnyoo.jp をなにとぞ宜しくお願い申し上げます。

 

2018年は取り扱う広告媒体数が増加する

例年通り、2018年も運用型広告の世界は変化の激しい1年となることが予想されますが、デジタルマーケティングに関する傾向を分析する市場調査会社 eMarketer は、2018年の展望として下記の10項目を挙げています。

 

 

No. 1: Social ad transparency will become a big deal, whether advertisers like it or not
No. 2: Voice search will become too widespread for marketers to ignore—or to get wrong
No. 3: Virtual reality will show some growth in 2018, but augmented reality will become mainstream
No. 4: 2018 will be the year Big Tech’s public image goes from clean to dirty—with political consequences
No. 5: Marketers will wake up to Amazon’s growing role in the advertising marketplace
No. 6: Hacks and breaches—plus a crucial new law—will finally start to change the privacy landscape
No. 7: For marketers, 2018 will be a breakout year in taking advantage of blockchain
No. 8: Digital video will go big … and small
No. 9: Gains in online-to-offline data will lead to more localized mobile advertising
No. 10: The marketing world’s attention will shift to Gen Z (that is, away from millennials) at just the wrong time

 

 

個別の項目に関する詳細については割愛しますが、昨年大きく話題になったブランドセーフティー関連に加え、Google Home や Amazon Echo をはじめとするスマートスピーカーを踏まえた音声検索への対応や、VR に関する話題が目を惹きます。広告の運用者としてすぐにアクションが必要というわけではないものの、これらのトピックに関する対応は長期的に考えておく必要があるでしょう。

 

運用という観点からすると、No.5 であげられている Amazon の AMS (Amazon Marketing Services) は今年存在感が大きくなっていくことが予想されるため、短期的に対応が必要となるでしょう。日本での営業体制も整い、管理画面の使い勝手も日々改良されているため、Amazon のエンジニアも本腰を入れてきていることが伺われます。

 

 

日本ではこれに加えて LINE の運用型広告である「LINE Ads Platform」も本格化していくことが予想されますし、「Indeed」などに代表される業種特化型のデータフィード広告の存在感もじわじわと大きくなっていくことが想定されます。2018年は取り扱うべき広告媒体がますます増加していく傾向にあり、この流れが長期的にさらに加速していくことは確実と言えるでしょう。

 


画像: 運用型広告レポート作成支援システム glu(グルー) > 対応広告メディア・ツール

 

手作業からの脱却が本格的に迫られる

日本では、歴史的に広告代理店を中心に運用型広告市場を牽引してきた経緯があり、広告の運用自体は代理店の運用者が担当することが多く、インハウスで広告を運用する体制が増えてきたのは比較的最近の出来事です。

 

一方米国では、黎明期から、商圏が複数の国をまたぎ、取り扱う商品点数が多い小売・旅行業界を中心に、広告主がインハウスで広告を運用することで業界を牽引してきた経緯があります。これらのグローバル企業では商品マスターデータと連動してキーワードの入稿、入札、広告文の作成などを自動化するシステムを内製化し、少ない人数で年間数十億円規模の広告を運用ができるような仕組みを整えています。

 

事業の規模によって正解は異なるため、日本と米国のどちらが良いかということは一概に言えませんが、少なくとも、商品マスターデータや在庫情報などのファーストパーティーデータと連動して広告の配信を高度に自動化している広告主は日本企業ではほとんどいないのが実情です。

 

本来であれば Google の他に Yahoo! がある日本こそが運用の自動化が必要であったにも関わらず、代理店の運用者の手作業による涙ぐましい努力の上にこれまで業界の発展がありました。しかしながら、前章で述べたように、今後は運用者が取り扱うべき広告媒体が増えることは確実なため、業界全体でそろそろ運用の自動化に真剣に取り組んでいく必要があるのではないかと感じています。

 

今の運用型広告の世界では、タイムセールに合わせて広告の出稿をON/OFF する際に、AdWords, Yahoo!, Criteo, Facebook, Twitter などを横断して一括で設定することも難しい状況です。もちろん DoubleClick や Marin Software などを使用することで可能になったり、部分的に設定できる広告媒体もありますが、在庫状況などと連動させて自動化する、という話になるとなかなか実現が難しいのではないかと思います。

 

広告のデータを分析するインフラを整えよう

下の図は、筆者が2017年に書いた「API を活用した検索連動型広告の自動化の仕組み」という記事で使用した図で、前章で言及した米国の自動化の事例を図解したものです。

 

 

 

この図の仕組みをすべての広告主が実現する必要はありませんが、2017年はDatoramaDomo などのダッシュボードベンダーが本格的に日本に上陸した年でした。Google Cloud Platform やAmazon Web Service などの利用と相まって、多くの広告主が図の赤枠の部分の連携に取り組んだことで、「②-B:レポート系データベース」が整えられる機運が高まったことは業界全体にとって大きなプラスだった個人的に強く感じています。

 

「②-B:レポート系データベース」で必要なデータを蓄積してしまえば、アトリビューション分析、テレビCMの効果測定、DataRobot に代表されるAI を活用したデータ分析が容易となります。また、「②-B:レポート系データベース」が整ってしまえば今度はそのデータに基づいた広告の配信を調整したくなるでしょう。その時に「②-A:設定系データベース」の作成に取り組めば良いわけです。

 

2018年に取り組んでおきたい3つのこと

取り扱うアカウント数の増加や、それに伴う分析業務や運用負荷を軽減していくため、2018年は下記の3点に注力することをお勧めします。

 

1. データコレクション(data collection)
API を通じて各広告媒体からデータを抽出してデータウェアハウスに蓄積すること

2. データアーキテクチャー(data architecture)
蓄積したデータを加工してファーストパーティーデータと結合できるように整えること

3. データアナリシス(data analysis)
1,2 で作成したデータベースを基にアトリビューションなどの分析を手軽に行える仕組みを作ること

 

2017年に、筆者もいくつかのダッシュボード連携に関するプロジェクトに携わりましたが、そもそもリレーショナルデータベースの概念に慣れ親しむ環境がないケースも多く見られるため、広告主が持つファーストパーティーデータと広告のレポートデータベースを結合(Join)させるためのキーとなるID を整えたり、入力した内容に基づいて集計(group by)できるようにデータに半角全角の違いやスペースが混ざっていないかなど、データを整えていく作業が頭で考える以上に時間がかかります。

 

社内のデータベースに詳しい専門家と、各広告媒体の API に詳しい専門家や媒体のセールスエンジニアなどとタッグを組むことができればこの3つをスムーズに進めていくことができるようになると思います。

 

以上、長文にお付き合いいただきまして誠にありがとうございました。改めて、2018年も Unyoo.jp をよろしくお願い致します。

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