2017年11月、プレス向けのイベントが開催され、モバイルファーストそして動画トレンドが益々加速化する昨今のマーケットにおける効果的な広告クリエイティブについて、また Facebook / Instagram が提供する人ベースの効果測定についての考え・手法の紹介が行われました。
目次
テレビCM × モバイル最適化広告 で効果を最大化
Facebook ではこれまでもテレビCMと動画広告の共存共栄が広告主に価値をもたらす、というアプローチで話が挙がっておりました。
ただ現状は「多くのブランドがテレビCMを制作しているが、その殆どがモバイル環境用には最適化されていない」とし、クリエイティブショップの日本責任者を務める冨川淳氏から、モバイルという特殊な環境下で再生される動画広告をどう制作すればよいか語られました。
※クリエイティブショップの詳細は こちら
「尺は15秒程度が適切、6秒の動画が最高」
冨川氏は「ブランド名やロゴを最後にもってくる」、「モバイルとテレビの視聴態度の違いが考慮されていない」などの理由で多くの動画広告がモバイル環境用に最適化されていないとし、まずはメインメッセージを冒頭に使い、短尺でまとめることが重要だと伝えました。
また、モバイルの動画クリエイティブの最適化メソッドとして以下の4つが紹介されました。
- 素早く視聴者のアテンションを引く
- サウンドオフでも明確に伝える
- フレームを工夫し、焦点を絞る
- 素材で遊ぶ
事例として Facebook for Business に掲載されているトヨタ自動車では、テレビCMそのままの動画とモバイル向けに最適化した動画を同時に配信し、広告効果を検証したところ、パフォーマンスに顕著な差が表れています。
実際のクリエイティブはこちら:
ロゴや車種名を冒頭部分で表示させ、特徴をサウンドオフでも伝えられる構成、アスペクト比は 1:1 など、冨川氏から紹介があった重要な要素が盛り込まれたクリエイティブになっています。
テレビCMそのままの動画とのパフォーマンスを比較すると、広告認知率3.5倍、車種認知率3.7倍、再生率2倍と大きな差を生み、キャンペーン全体でも認知関連の指標だけでなく見積もりシミュレーションとカタログ請求でも設定した KPI 以上の数を記録し、「期待以上の成果を獲得することができました」とコメントが残されています。
なお、実際にクリエイティブショップの支援を受ける条件をヒアリングしたところ、一定額以上の広告出稿はもちろん必須ではあるものの、2017年11月時点では「明確なラインは設けておらず、規模を問わずサポートできれば」とのことでしたので、今後大規模な出稿を検討している方や現在出稿中でクリエイティブ改善のヒントが欲しい方はまず 問い合わせフォーム から依頼するのが良いかと思います。
Instagram クリエイティブの最新トレンドとは?
次のセッションでは、クリエイティブショップ クリエイティブストラテジストの栗山修伍氏から Instagram の最新トレンドについて語られました。
広告に限らず、プラットフォーム全体として、日本でも普及し始めた当初のプロのカメラマンが撮影したようなお洒落で洗練された写真・動画だけでなく、ユーモアのある写真も投稿される “FUN & PLAY” のプラットフォームに変わってきており、 パフォーマンスの高い広告も同様の表現方法に変化していると伝えました。
流行語大賞を受賞するような規模になる前からアカウントをお持ちの方の感覚では、ハイセンスな写真・動画でコミュニケーションを図るプラットフォームというイメージがあるかと思いますが、最新のトレンドでは以下の訴求軸が成果を生みやすいと発表しています。
- ブランド訴求: ブランドのロゴやアイコンにフォーカス
- ストーリー訴求: ブランドのストーリーにフォーカス
- プロダクト訴求: 商品・サービスの詳細にフォーカス
- 便益訴求: 商品・サービスを使うことでどのようなユーザーベネフィットがあるかにフォーカス
“人”ベースの効果測定とCookieベースのイシュー
最後のセッションでは、マーケティングサイエンス部門で日本統括を務める中村淳一氏から、Facebookが実現する人ベースの効果測定と、Cookieベースのマーケティング活動でのイシューについて語られました。
マーケティングサイエンス部門は「データとサイエンスをベースに、クライアントのマーケティングの活動の変革を、結果、ビジネスの成長をお手伝いする」ことをミッションとした比較的新しい組織で、広告やユーザーの利用状況などの調査を行うリサーチチームや、広告主・広告代理店を支援するクライアントチームなど5つのチームで形成されています。
Facebookでは、効果測定の原則として「人ベースの効果測定」、「ビジネス向上のための正しいKPIの計測」、「パートナー会社との緊密な連携」を掲げており、マルチデバイスへの対応と、透明性・正確性への強い意識が感じられました。
人ベースでのマーケティングが必要な理由として紹介されたデータが非常に興味深かったのですが、現代ではユーザーが保有する1人あたりの Cookie 数が平均して 7.0 だったというデータです。
セキュリティソフトがインストールされているデバイスなどはさらに増加する可能性がありますので、Cookie ベースで計測した場合のリーチやフリークエンシーなど、計測面のイシューが垣間見えます。
また、Cookie ベースのマーケティング活動におけるイシューは計測だけに留まらず、ターゲティングにも大いに影響を与えます。
下図は Nielsen による調査データで、ターゲットを指定したキャンペーンにおけるリーチ精度を表したものです。国内大手が63%に対し、 Facebook では95%と高い数値をマークしています。
※ただし、Facebook で配信できるユーザー(Audience Network や Instagram を含む)は月間アクティブユーザー数からも分かる通り限界がありますので、リーチの精度と範囲でバランスを取りつつメディアプランを練ることが重要だと思います。
計測・調査系のパートナー企業との取り組みについては、購買ファネル毎に異なるパートナーとのソリューションを提供しており、最適な予算配分を算出する支援も行っているとのことです。
新たなアトリビューションとリーチの計測ソリューション
「最適な予算配分」と聞いて思い浮かぶのがアトリビューション分析ですが、セッションの最後に新しいソリューションが発表されました。Facebook 内外で、かつクロスデバイスでトラッキングし、アトリビューション分析を実現する Advanced Measurement (β版)という新機能です。
従来のアトリビューション分析では Cookie をベースにコンバージョンのパスデータを取得し、そのデータを元に分析するため、デバイスを横断したパスデータは技術的に取得することが困難で、分析することはできませんでした。
一方、Advanced Measurement では他の広告媒体のタグも Facebook と同期させ、広告媒体が持つ Cookie と Facebook ID を紐付けることで1人のユーザーとして認識させながらクロスデバイス・クロスチャネルでの計測を可能にするため、従来の第三者配信とは一線を画すソリューションになるのではないかと感じます。
この強力なソリューションで唯一気になるのはどこまで他の広告媒体と連携できるかですが、この点については現在β版ということあり強化中とのことで、パートナーシップ次第では今後のデジタルマーケティング活動において非常に重要な役割を担うポテンシャルを秘めたソリューションになるでしょう。
Advanced Measurement の進捗はまた追ってご紹介できればと思いますので、期待を込めて続報を待ちたいと思います!