2017年5月8日・9日にニューヨークで開催されたマーケティングカンファレンス「DIGIMARCON-EAST2017」に参加してきました。同イベントの概要と、参加したセッションの中からハイライトをピックアップしてご報告したいと思います。
目次
DIGIMARCONとは
DIGIMARCON(Digital Marketing Conferenceの頭文字)は、デジタルマーケティングをテーマとして世界中で開催されているカンファレンスシリーズです。創設者は Search Experiences という、検索ユーザーの好みに合わせて検索結果をカスタマイズするソリューションを提供している企業のCEO、Aaron Polmeer氏です。
カンファレンスの規模としては、非常に大きいです。Docurated社がまとめている、2016年のデジタルマーケティング関連のカンファレンスガイドTOP100によると、最大規模の ad:tech に次いで2番目の規模とされています。クルーズ客船を約1週間借り切って開催する会もあるなど、予算も大規模です。
今回参加した DIGIMARCON-EAST がカンファレンスの目的として掲げているテーマは以下です。
Web Experience Management
Usability / Design
Mobile Marketing & Retargeting
Customer Engagement
Social Media Marketing
Targeting & Optimization
Content Marketing
Marketing & Sales Automation
※2014年からスタートして今回が4回目となるようですが、テーマはこの4年間一貫しているようです
上記を眺めて感じることは、トリプルメディアで表すのであれば、ペイドメディアだけでなくオウンドメディア・アーンドメディアでのマーケティングにもヒントが多いイベントであるということです。その中で、広告に関連しそうなセッションをピックアップしてみたいと思います。
ユーザーに届ける投稿の延長線上に広告がある
パネルディスカッション形式で「An Insider’s Look at Organic & Paid Social Media」~ソーシャルメディアのオーガニックとペイドの活用方法の違いは?~というテーマでセッションがありました。
セッションの中で、「現在、Facebookは重要なソーシャルメディアとしてマーケティングの中心にあるが、若年層へのターゲティングでは Snapchat に優位性があり、いずれにせよどのようなコミュニケーションをしたいのか次第」という発言があり、日本とは異なるソーシャルメディアの優先順位が印象的でした。
「Organic & Paid」というテーマの結論としては、以下の発言に総括できると思います。
ソーシャル広告はあくまで「ユーザーとエンゲージメントできる良質なコンテンツ」と、「高い頻度での投稿」が大前提で、広告はそれらをファンやそれに近しいユーザーへアプローチするための手段である
これは、多くのソーシャルメディアプラットフォームが伝えているメッセージと非常に酷似しています。ソーシャルプラットフォームの多くはタイムラインのように上下に流れていくユーザー体験を基本としていますので、オーガニックとして表示される可能性には制限があります。それをペイドを利用して拡張していくというスタンスが原則であり、オーガニックでの投稿やコミュニケーション(コメント返しやリアクション等も含む)をせずに、広告だけで切り開いていこうとしても限界があるということですね。
いかに普段からファンを醸成する施策を続けていき、それを広告含めどのように定量的に評価していくのか。ソーシャルではオーガニックとペイドの融合が当たり前になっているという雰囲気を改めて感じたセッションでした。
自社コンテンツ軸の派生だけでなく、ユーザー軸の派生を
「Attracting Actionable Audiences」~質の高いユーザーを引きつけるには~というセッションでは、SEOツールとしても有名なSEMrush の Martin Weinberg 氏が登壇。2011年に Google が提唱した「ZMOT (Zero Moment Of Truth)」を引き合いに出し、ユーザーの購買行動の中で、自社サービスに興味が出る最初のモーメント(瞬間)をどれだけ掴まえられるか?ということを中心に話をしていました。
※SEMrushのMartin Weinberg氏
※ZMOT資料
リンク:
SEO でも Paid Search でも、自社の持つ製品・コンテンツからキーワードを発掘する方法が基本だと思います。ただ、それだけだと企業側からの目線だけに終止してしまいがちになり、どうしてもユーザーの ZMOT を捉えることが難しくなります。
ユーザーとの接触点が多様化している現代では様々な視点から情報を収集していく必要がある、ということで以下のような主要なソースを公開していました。
・オンラインコミュニティ(Wikipedia、Quora)
・口コミサイト
・SNSサイト(Twitter、Youtube)
・自社サイト内検索ワード
・問い合わせ内容ワード
※無料で調査できる、その他具体的紹介サイト
・https://www.semrush.com/(総合解析サイト)
・https://visuwords.com/english(キーワードをマインドマップ化してくれる)
・http://answerthepublic.com/(6W 1H 1A?でキーワードニーズを分類してくれる)
もちろん、上記以外にも AdWords にあるキーワードプランナーなどのツールも当然カバーしておきたいですね。
顧客は誰か?を改めて考える機会
冒頭でも挙げたとおり、DIGIMARCON はペイドメディアだけでなくオウンドメディア・アーンドメディアのマーケティングを扱うイベントということもあって、参加されている方は事業主側のプロダクトマネージャー、ブランドコミュニケーション・ソーシャル戦略の担当者など、自社のマーケティングに従事する方が多く見られました。その他にもコロンビア大学やテキサス大学などの大学教授も参加されていました。「広告」という視点だけでなく、マーケティング全体を捉えて活動されている方が多いように感じました。
※会場風景
出展しているブースは、メールマーケティングツールや、SNS管理ツールなど、チャネル別に応じたコミュニケーション管理系のソフトウェアを中心に出展していて、このあたりも DIGIMARCON らしいスポンサーが集まっている事がうかがえます。
※出展ブース風景
今回のカンファレンスを通じて、「自分の顧客(ユーザー)は誰か?」ということを強く意識して発表している方が多かったのが印象的でした。普段自分たちが従事しているペイドメディアだけでなく、オウンドメディア・アーンドメディアの運営を前提としているセッションが多かったことも、その意識が強く出ている要因だったように思います。
「トリプルメディア」と言葉にすればシンプルですが、マーケティング全体を俯瞰し、それぞれのメディアの役割を理解することの大事さをあらためて意識することができました。DIGIMARCON は各都市で開催されているので、今後はニューヨーク以外での開催も興味深く追っていきたいと思います!
参加:アタラ合同会社 清水一樹、浅田梨沙