運用型広告を続ける中で常に意識して欲しい5つのこと

運用型広告を続ける中で常に意識して欲しい5つのこと

アタラ 広告代理店運用強化トレーニング

一定水準を超える広告運用者になるために

この春から運用型広告に携わり始めた人にとっては、この約1ヶ月ほどは色んな意味で大変な毎日だったと思う。真っ白な状態からスタートし、必要な知識を覚え、キーワード作成、広告文作成、入稿、入札変更など具体的な運用業務をやってみると。これは大変だな…。様々な感情が湧いてきた1ヶ月だった思う。

僕が運用型広告に携わり始めた10年以上前の遠い記憶を思い返すと、最初の1ヶ月間は本当に大変だった。当時は運用型広告の黎明期、情報も少なく携わっている誰もが手探りの状態、誰かにアドバイスする余裕もなく全員が必死だった。(当時の状況が決して良いとは思わないが…)あの状況を乗り越えてきたからこそ得られたこともある。もちろん、適切アドバスがあれば回り道をせずに成長できたと思うことも多くある。

あれから10年以上経過し運用型広告の運用者と取り巻く環境も大きく変わってきた。当時も今も運用型広告に携わる人の大変さは変わらないが、過去と比較し現在は手を動かすことよりも、頭を使う領域の比率が格段に増加している。これから先、技術の進歩により、さらに手を動かす時間は減っていくだろう。そうなると運用者の価値は、手を動かすことではなく、頭を使うことへシフトせざるを得ない。

だからこそ、正しい方向を向いた正しい努力をしなければ、成長することが難しい。正しい努力を確実に成果に結びつけるためには、根性論ではなく適切なアドバイスが重要だ。もちろん、運用テクニックのアドバイスも重要かもしれない。しかし、運用テクニックは正しい知識を身に着け、正しく運用に適応する経験を積めば誰でも一定水準までは自然と身につく。一方で、その先の、運用者として本当に差が出る部分は常に意識していかないと身につかない。

一定水準を超える広告運用者になるために、大切なことを過去の経験からまとめてみたい。

 

深く広く考える習慣を身につけること

深く広く考えたのか?

大学生の時、尊敬する教授から指摘されたことだ。

日々の運用業務で忙殺されると、良いことではないと理解しているが、惰性で運用してしまうことがある。惰性といっても、過去の経験の積み重ねから判断している場合がほとんどだ。それは、大きな失敗もなく、安定的な運用な運用なのかもしれない。しかし、最善を尽くしているのか?と問われるとYesとは言い難い。現状維持は衰退と同じことを意味しており、運用技術も衰退してしまう。

実践していることは

  1. 制約条件を考慮せずに、あらゆる選択肢を出す
  2. 制約条件を考慮し、選択肢を絞る
  3. 複数パターンの選択肢の組み合わせを考える
  4. 1~3の過程を批判的な視点で何度も見直す

 

特に注意していることは、1. 制約条件を考慮せずに、あらゆる選択肢を出すことだ。

なぜなら制約条件を設定してしまうと、取れる選択肢の幅を最初から狭めてしまう。例えばGoogle AdWordsのコンテンツターゲットの獲得単価は高くなると思われがちだが、適切に設計すれば高い効果が得られる可能性が高い。最初から先入観で選択肢を絞ってしまうと、取りうる選択肢は限られてしまう。

出てくる選択肢が少ない理由は、情報不足か知識不足(適切に使う方法を知らない)かどちらかである。日頃から、情報収集と工夫を重ねることで、選択肢の幅は広がる。多様な視点から深く広く考える習慣を身につけるべきだ。

 

毎日少しだけ変化させること

また、3. 複数パターンの選択肢の組み合わせを考えることも重要だ。

正しく設計がされていれば状況をモニタリングし、状況に合わせた微調整で、運用は安定する。もちろん、運用を安定させることは重要である。しかし、今日成功してることが、明日には通用しなくなっている可能性もある。運用型広告を取り巻く環境変化は早い。そして、何よりも生活者の変化が激しくなっている。

だからこそ、日々の工夫が大切だ。工夫と言っても大きく運用を変更するという意味ではない。考えていた他のパターンのを試して見ることだ。特に、チャレンジだと思う選択肢を積極的に選んだ方がいい。もちろん、現在の設計が最善だと判断したからこそ実施している。しかし、他の方法がもっとよい結果になる可能性もある。特に、チャレンジだと思う選択肢は、運用が安定していないと取れない選択肢だ。

運用が安定していれば、自ら仕掛けた変化が、どのくらいインパクトがあったのか理解することが出来る。万が一、効果が悪化した場合は戻す選択肢も取れる。自分がコントロールできる範囲内で、仕掛けていくことが運用で知見になる。このチャレンジだけが、選択肢の幅を広げてくれる。

 

周囲の変化より少し先へ行くこと

しかし、運用が安定しているとチャレンジな施策を採用することを躊躇ってしまう。しかし、現状を維持しているだけでは効果は徐々に下がっていく。

最近は運用型広告でも、以前に比べて事例を目にする機会が多くなった。また、グーグル社、ヤフー社から提供される情報も豊富になり、適切にアンテナを張っていれば多くのヒントを得られる。海外の運用型広告に関わるサイトも定期的に読んでいれば、著しく情報が欠如することはない。

最新の情報を集め、運用に活用すべきである。

しかし、その際に気をつけて欲しいのが、事例をそのまま適応することや、運用しているアカウントと同業種の事例をグーグル社、ヤフー社に質問することだ。端的に書くと、情報収集=事例集めになっている場合である。事例はあくまで事例だ。運用しているアカウントに施策をコピーしても、同様の結果を得られること少ない。

やるべきことは、なぜ、成功したのか?を読み取っていくことだ。

このことをしなければ、素晴らしい事例の記事を読んでも活用は出来ない。それぞれのアカウントには固有の制約条件がある。その条件を見据えながら、何が成功要因なのかを見極め。成功要因を運用しているアカウントに適応することで、成果につながるのかを判断する。そして、成功要因を運用しているアカウント特有の状況に適応させる工夫をしていくことが重要だ。特に新機能の導入事例の場合、アップデートされている可能性もあるのでプラットフォームへ確認するなども怠らない方がいい。

事例は、過去にある条件のアカウントに適応した時の結果である。決して未来に通用するものではない、未来に通用させるように、自ら工夫が必要になる。考える力をつけて、周囲の変化より少し先へ行くことは重要だ。

 

意識的に仲間の視野を取り込むこと

運用をしていると、どうしても自分が見える範囲の視野に閉じてしまいがちになる。4:1~3の過程を批判的な視点で何度も見直すことを心掛けていても、見落としてしまうことはよくある。仕組みとしてピア・レビュー(仲間からの評価や検証)があれば最適かもしれないが、時々でも運用しているアカウントについて仲間から意見をもらうことも重要だ。

誰でも運用しているアカウントに思い入れは出てくる。誰から指摘を受けることは、気分がよいものではないかもしれない。しかし、独りよがりになり効果が出ないことの方が問題だ。僕自身も運用経験は長いが、完璧な運用が出来ているとは思っていない。経験が長いことが足かせになって、新しいことにチャレンジ出来ていないこともある。自分の能力を過信せずに、困ったら後輩に相談するようにしているし、指摘をもらうことで成長出来ている。

その為には、日頃から適切なコミュニケーションも重要になる。お互いに最低限度の信頼関係がなければ、建設的な指摘を批判と捉えてしまうことになりかねない。誰かのアカウントを見ることや、分析することは、非常に学びになる。日頃から適切なコミュニケーションを取り、相手に敬意をもったピア・レビューを心掛けるべきだ。

そして、僕自身の経験としては定例会にも役立つと思っている。以前に定例会が苦手だった過去の経験について書いたが、定例会が苦手な運用者は多いように感じる。ピア・レビューを通して。適切な言葉や伝え方なども学ぶことが出来る。

参考リンク:

 

異なる領域からヒントを得ること

運用型広告に閉じない

これは頻繁に言われることだ。しかし、どうすれば良いのか分からないという質問を受ける。確かに、運用型広告に閉じないということが具体的に何なのか分かりにくい。

僕の解釈だが、運用型広告に閉じない=異なる領域を学ぶことだと考えている。

正直に書くと、最新の情報収集としてGoogle 広告の公式ブログ、ヘルプや海外の運用型広告に関する記事は読むことにしているが、情報収集に使っている時間の2割り程度だ。残りの8割は、運用型広告以外の情報を幅広く積極的に取得している。

僕自身は、大学の教科書に使われているマーケティングの本、経済学、哲学、心理学、数学、物理学など幅広く情報に接するようにしている。マーケティングの本は運用型広告につながる部分も多いが、物理学を勉強しても即時に役立つことは、ほとんどない。しかし、意外かもしれないが、考え方や物事へのアプローチなどはヒントになる。情報は役立つ/役立たないという二項対立の視点になってしまうが、役立たせることができないか?という視点が大切だ。

僕が実践していることで運用型広告に活用しやすいこととしては、Cannes Lions International Festival of Creativityなどの情報も収集している。運用型広告に直接関係ない、こういった賞とは無縁の領域かもしれない。しかし、ここには世界中の人が考え抜いた課題解決のアイデアが集まっていて、運用型広告にも参考になることも多い。

例えば、2015年にメディア部門のグランプリを受賞した、トルコのVodafoneのドメスティックバイオレンスに苦しむ女性たちを救うためのアプリ・Red Lightは参考になった。

動画を見て貰えば分かるように、ドメスティックバイオレンスに苦しむ女性たちを救うためのアプリなので、男性の目に触れることはNGだ。管理画面で女性をターゲティングしてたとしても男性が見てしまう可能性がある。単純なターゲティングでは、このプロモーションは成功しない。女性だけに接触できる場所は、どこなのか?を徹底的に考えたプロモーションだと思った。管理画面のターゲティングやリターゲティングに頼らないで成果を出す方法を深く考えることの重要に改めて気づかせてくれる、とてもよい事例だ。

最近では、D&AD2017 メディア部門のショッピングモールの家電店の店頭TVを使った保護犬の里親募集のプロモーションも素晴らしいと思う。

ショッピングモールの家電店に並べられたTVは何となく目にすることがあり、そこに保護犬の里親募集が出ていれば気になる人もいるだろう。自ら日常生活で、保護犬の里親募集のサイトを見ることは少ないと思う。ショッピングモールの家電店の店頭TVには、ある映像しか映さないという概念を壊してくれた。そして、遠くない未来に、ショッピングモールの家電店の店頭TVも運用型広告で掲載できるようになるかもしれないと感じさせてくれた。

 

まとめ

運用型広告を続ける中で常に意識して欲しいのは、下記の5つのことだ

  • 深く広く考える習慣を身につけること
  • 毎日少しだけ変化させること
  • 周囲より変化より少し先へ行くこと
  • 意識的に仲間の視野を取り込むこと
  • 異なる領域からヒントを得ること

日々の運用が忙しくなると目の前のことでいっぱいになってしまう。しかし、運用型広告は変化し続けていく、そして手を動かす領域よりも、頭を使う領域の方が確実に増加していく。概念だけではなく、実際に手を動かし、結果を出すというところまで実現出来る運用者だけが残っていくと思う。常に大きな視点から考え、着実に結果を出せるように意識すべきだ。もちろん、僕自身も意識し続けて行かなければならない。

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