目次
- 1 2017年のテーマは機械学習
- 2 1. 検索連動型広告とディスプレイ広告のAMP化
- 3 2. Google Attribution
- 4 3. 位置情報を活用した店舗誘導施策の強化
- 5 4. 検索連動型広告で「購買意向の強いユーザー層」が利用可能に
- 6 5. AdWords の新管理画面が2017年内にすべての広告主で利用可能に
- 7 6. Google Optimize とGoogle Surveys 360 が AdWords と連携可能に
- 8 7. DoubleClick Bid Manager でのメディアプランニングがより手軽に
- 9 8. ユニークリーチ指標がAdWords のディスプレイ広告とDoubleClick で使用可能に
2017年のテーマは機械学習
米国時間 2017年5月23日(火)、Google はAdWords、Google Analytics、DoubleClick などの広告関連プロダクトに関するアップデートや、開発の方向性を発表する Google Marketing Next 2017 (以下GMN 2017)をサンフランシスコで開催しました。
Google の広告製品を統括する Sridhar Ramaswamy 氏は、87% のスマートフォンユーザーがモバイルから検索を始め、また、モバイル検索の20%は音声によるものであることを明らかにし、改めてモバイルの重要性を強調しました。モバイルファーストの世界が当たり前になったことで、位置情報データをはじめ、これまでにない膨大なデータが蓄積されています。それらのデータをGoogle が約20年かけて培った機械学習の技術を使って広告製品の強化に応用していくことを発表しました。
GMN 2017 のキーノートスピーチで発表された主要なプロダクトを下記にまとめましたのでご一読いただければ幸いです。
1. 検索連動型広告とディスプレイ広告のAMP化
モバイルファーストの世界では、広告主の広告がいかに優れたクリエイティブでも、ユーザーのニーズに応じて即座に表示できなければ意味がありません。下図のように、モバイルのウェブページの表示が3秒以上続くと53% のユーザーは離脱し、また、1秒表示速度が遅くなると20% のコンバージョンが失われる可能性があるとの調査結果が出ています。
このようなモバイルデバイス上のユーザーの行動を踏まえ、今まで主に自然検索の検索結果ページで進められてきた Accelerated Mobile Pages(AMP) Project を、検索連動型広告とディスプレイ広告の両方に適用していくことを発表しました。
検索連動型広告において、表示速度が早いランディングページはユーザーのエクスペリエンスが向上する傾向にあり、ランディングページのエクスペリエンスは品質スコアの要素のひとつでもあるため、入札価格に影響する可能性があります。AMP 化にいち早く対応することは品質スコアの改善にもつながります。β版への参加はこちらのフォームから可能なので、お早めに申し込みすることをお勧めします。
ディスプレイ広告では、米国時間の2017年5月23日より、Google Display Network (以下GDN)上のAMP 化されたページに表示されるディスプレイ広告は、Google により自動的にAMP 化されます。AMP 化された広告とそうでない広告では、クリエイティブがほとんど一緒の場合でも、5秒ほど早く表示されるケースもあるようです。
2. Google Attribution
今日、ユーザーの行動は検索、ディスプレイ、動画、ソーシャル、アプリなど多岐に渡っています。これらの行動は複数のデバイスを横断して行われることが当たり前となり、マーケターが自社のマーケティング活動を正しく計測することが難しくなってきています。Google は、このような状況を解決するためにGoogle Attribution を発表しました。
Google Attribution はこれまでのアトリビューション計測ツールと違い、セットアップが容易で、新たなタグの設置や追加コストを払うことなくAdWords, Google Analytics, DoubleClick Search とデータを連携して分析することが可能となります。
データを連携した後は、起点モデルや減衰モデルなどのアトリビューションモデルを選択し、チャネルやデバイスをまたいで分析をすることができます。AdWords のスマート自動入札でおなじみの「データドリブンアトリビューションモデル」も広告のチャネルだけでなく、自然検索、ソーシャル、Eメールなどのチャネルでも分析可能となるので、ぜひ活用してみたいツールです。
Google Attribution は今のところβ版で、今後数ヶ月をかけてより多くの広告主が利用できるようにしていくとのことです。
3. 位置情報を活用した店舗誘導施策の強化
Google の広告製品を統括する Sridhar Ramaswamy 氏によれば、2014年に「実店舗への来店によるコンバージョン」(store visit)の計測を開始して以来、50億件以上のコンバージョンがグローバルで計測されていることを明らかにしました。位置情報に関するプロダクトはGoogle の中でも重要な位置を占めている領域であることは間違いありません。
位置情報に関連したプロダクトは主に下記の3点が発表されました。
3-1. YouTube TrueView キャンペーンへの対応
これまで、「実店舗への来店によるコンバージョン」は検索連動型広告、ショッピング広告、ディスプレイ広告のみで利用可能で、動画キャンペーンで利用することはできませんでした。今回の発表によりYouTube TrueView キャンペーンでも「実店舗への来店によるコンバージョン」の計測が可能になります。また、「住所表示オプション」の使用も可能になります。
3-2. ディープラーニングを活用した計測精度の向上
こちらはすでに3月にInside AdWords で発表されていましたが、ディープラーニングの技術を活用して「実店舗への来店によるコンバージョン」の計測精度をアップグレードしました。このアップグレードにより、多層階のショッピングモールや、東京、サンパウロなどの建物が密集したエリアでの「実店舗への来店によるコンバージョン」の計測精度がより高くなったとのことです。
3-3. 「店舗売り上げコンバージョン」(store sales)の計測
Eメールを活用したロイヤリティキャンペーンなど、店舗での売上がEメールに紐付いている場合、購買データをAdWords にインポートすることで、「店舗売り上げコンバージョン」(store sales)を計測することが可能になります。
また、Eメールに紐付いた購買データを持っていなくても、Google がパートナーシップを結んだサードパーティーのCRM ツールなどからデータをインポートして「店舗売り上げコンバージョン」(store sales)を計測することも可能になります。Google がパートナーシップを結んだサードパーティーは米国の約70% のクレジットカード・デビッドカードの購買データをカバーしており、充分なデータを保有しているということが言えそうです。
4. 検索連動型広告で「購買意向の強いユーザー層」が利用可能に
これまでディスプレイ広告で利用可能だった「購買意向の強いユーザー層」によるターゲティングが、検索連動型広告でも使用可能になります。機械学習の力を最大限に活用し、膨大な数の検索クエリやウェブ上での行動履歴から、ユーザーの購買意向を判別できるようになったのはGoogle ならではの力と言えるかと思います。
5. AdWords の新管理画面が2017年内にすべての広告主で利用可能に
AdWords の新管理画面は2016年5月に行われたGoogle Performance Summit 2016 にて発表され、2017年1月には一部の広告主で使用可能になるなど、開発が進められてきました。
今回、AdWords の新管理画面が2017年以内にすべての広告主で利用可能になることが発表されたことに加え、下記のような新たなプレビュー画面も公開されました。
すでに新管理画面を利用しているユーザーを対象にした調査によると、管理画面の読み込み速度が速くなったことで、30%の時間が節約できたとの結果もあり、工数削減にも寄与していることが伺われます。新管理画面は今日からまた新規に利用可能な広告主の数を増やし、2017年以内にはすべての広告主で利用可能になる予定です。
6. Google Optimize とGoogle Surveys 360 が AdWords と連携可能に
6-1. Google Optimize とAdWords の連携
ウェブサイトのA/B テスト、多変量テスト、リダイレクトテストを作成して実施することができるGoogle Optimize がAdWords と連携できるようになりました。この連携により、Google Optimize で作成したランディングページを、ウェブマスターの手を借りることなく簡単にAdWords のキャンペーン、広告グループ、キーワードに設定することが可能になります。
6-2. Google Survey 360 とAdWords の連携
オンライン上でアンケート作成から市場調査の実施、回答集計などを行うことができるGoogle Survey 360 がAdWords と連携したことにより、AdWords で使用しているユーザーリストのユーザーにアンケートを実施することが可能になります。例えば、AdWords のキャンペーンで使用しているランディングページを訪問したユーザーに、アンケートで直接ランディングページの良し悪しを聞くことができるようになります。
7. DoubleClick Bid Manager でのメディアプランニングがより手軽に
これまで、プログラマティック領域における機械学習は主にデータの統合や自動化、パフォーマンスの向上に重きが置かれ、メディアプランニングにその技術が応用されることはほとんどありませんでした。
今回の発表により、DoubleClick Bid Manager は機械学習を利用して過去の配信結果から効果の高かったオーディエンスや掲載面を洗い出し、そのデータを基に最適な配信先をレコメンドすることが可能になります。
8. ユニークリーチ指標がAdWords のディスプレイ広告とDoubleClick で使用可能に
2016年Q1 に行われたGoogle と TNS の共同調査によると、US の30%のユーザーは5個以上のデバイスを利用しているという結果が出ています。
このような環境では、ディスプレイおよび動画キャンペーンにおいてリーチしたユーザー数や1ユーザーあたりの平均表示頻度(フリークエンシー)の計測はCookieベースとなるため、同じユーザーが複数のデバイスやブラウザで広告に接触した場合、ブラウザの数=ユーザー数となり、実際のユーザー数と異なる可能性がありました。
2017年3月、YouTube の動画キャンペーンにおいて、同一ユーザーが複数の端末で同じ広告に接触した場合でも1ユーザーとしてカウントすることが可能になりましたが、今回の発表でその対象範囲がAdWords のディスプレイ広告と、DoubleClick のディスプレイ広告、動画広告に拡大されました。
これにより、何人のユーザーに広告が表示され、それらのユーザーに何回広告が表示されたかを計測することが可能となります。
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以上、簡単にキーノートの発表をまとめましたが、今年も例年に引き続き盛りだくさんな内容だったかと思います。これらの発表の内容をしっかり理解して、今後の運用方針やチームの役割を改めて考えると良いのではないでしょうか。引き続き目が離せません!