音楽ストリーミングサービスでユーザーのマイクロモーメントを捉える:海外事例から

音楽ストリーミングサービスでユーザーのマイクロモーメントを捉える:海外事例から

運用型広告レポート作成支援システム glu グルーLINE MUSIC、AWA、Apple Musicをはじめとした音楽ストリーミングサービスは、2015年より日本で徐々にローンチが始まりました。全世界で1億人以上のアクティブユーザーを持つSpotifyも2016年の9月にようやく日本でローンチしましたが、欧州や米国で2010年前後にすでにローンチされていたことを考えると少し遅れをとっているように感じます。

Ad Exchangerによれば、2017年1月2日(日本時間で2017年1月1日)に米国でWendy’sがこのSpotifyの「Branded Moments」という広告プロダクトを活用してハンバーガー「Double Stack Sandwich」のプロモーションを開始したとのことです。

※本記事は下記AdExchangerの内容を引用しており、引用の承諾を頂いています。This article quotes contents from below page, and we have permission to quote from Alison Weissbrot, who wrote contents of below page and is a staff reporter at AdExchanger.

リンク:

プレイリストをタッチポイントに

Branded MomentsはSpotifyのモバイルアプリのプレイリストのスポンサーに広告主がなることが出来るプロダクトです。対象となるプレイリストはユーザーの特定のアクティビティー(パーティーやトレーニング)や一日の中の時間(睡眠時や集中したい時等)に適したSpotifyが作成したものだけでなく、ユーザーが独自に作成したプレイリストで上記にカテゴライズされたものも対象となります。ユーザーが作成したプレイリストはプレイリスト名やプレイリストに含まれる楽曲によってカテゴライズされます。

Introducing Branded Moments

広告のフォーマットは動画(縦型もしくは横型)で最大15秒までとなっています。Spotifyの無料版では曲間に広告が流れますが、ユーザーが動画を見るとその後30分間広告が挿入されることなく音楽を聴ける仕様になっており、いわゆるリワード広告の方式を採用しているのが特徴です。

Branded Moments Workout Product Demo

Wendy’sは今回「ディナー」にカテゴライズされるプレイリストのスポンサーとなりDouble Stack Sandwichのプロモーションを開始したとのことです。ディナーに何を食べるか今まさに考えているユーザー、もしくはディナーに出かけている最中のユーザーに対してWendy’sを訴求することが狙いです。

Wendy’sは適切なユーザーに対して適切なメッセージを投げかけるため、自社の顧客データをプレイリストのデータと重ね合わせる取り組みもするとのことですが、なによりもターゲティングのモーメントに対して興味があるとのことです。Wendy’sのデジタルマーケティングならびに広告事業の責任者であるBrandon Rhotenは以下のように述べています。

A full-time working mom is demographically the same all day long, but on the way to work, she has different needs because she’s in a rush or she just got kids out the door. Her needs are different at lunch, when she’s trying to take a break, [and] when she’s on the way home and needs to pick up her kids and get food on the way. We care a lot less about her age and income level and a lot more about what does she want from us?

フルタイムで働く母親はデモグラフィックの観点では一日中同じですが、仕事に向かう最中は急いでいるか子供を外に出しているため違うニーズを持ちます。同じランチを取るときでも、休憩を取ろうとしている場合と仕事帰りに子供を迎えに行き、道中で食事をとる時でニーズは異なります。我々は彼女たちの年齢や収入のレベルよりも彼女がその時何を求めているのかを大事にしています。※太字は筆者強調

Wendy’sはBranded Momentsのキャンペーンの成果を店舗への来店数で計測する予定で、同時にDouble Stack sandwichの売上増加も計測します。キャンペーンの成果が大きければWendy’sは引き続きSpotifyでの広告掲載を継続するとのことです。

このキャンペーンはWendy’sが過去5年かけてきたデジタルトランスフォーメーションの一環です。彼らはデータマネジメントプラットフォームやより強靭なCRM、インハウスのマルチタッチアトリビューションシステムを構築しており、それにはSpotifyのようなパートナーが欠かせないとRhotenはいいます。

As far as using our first-party data, we are baby-stepping our way right now. We are relying on partners more than anything.

ファーストパーティーデータだけでは、我々は少しずつしか先に進めません。先に進むためにはパートナーの力が必要不可欠です。

Spotifyにとって、Branded Momentsは2017年のネイティブ広告の目玉商品のひとつでもあります。2016年にローンチされたSpotifyの作成するプレイリストのスポンサーに広告主がなれるSponsored Playlistsの成功が背景にあり、本プロダクトの開発が進められたとのことです。プレイリストのひとつ「Today’s Top Hits」は1200万人のフォロワーがおり、過去には自動車メーカーのKia、スターバックスやNetflix等がスポンサーとしてキャンペーンを実施していました。

特にKiaはこのキャンペーンによりブランド認知度を30%、ブランド理解度を100%増加、さらには購買意欲を700%増加することに成功したとのことです。Spotifyによれば、ユーザーのエンゲージメントにおいて平均で34%のスパイクが見られるとのことです。

Spotifyのパートナーソリューション事業の責任者であるDanielle Leeは以下のように述べています。

You have loyalists that listen to those playlists time and time again. Brands really want to tap into that existing listenership.

これらのプレイリストを繰り返し聴くユーザーの中に広告主の支持者はいます。広告主はすでに存在するリスナーとの関係を構築したいのです。

 

浸透するモーメントベースのターゲティング

米国を中心にラジオ型の音楽ストリーミングサービスを提供するPandoraも、広告主がPandora内の特定のラジオのスポンサーになることが出来るプロダクトを用意しており、同じくAd Exchangerで飲料メーカーのGatoradeの事例が紹介されています。

リンク:

Ad Exchangerの報じるところによれば、このGatoradeの事例も曲のジャンルやシチュエーションに沿ったラジオのスポンサーになることで広告主は適切なタイミングでユーザーに接触できるとのことです。特にファストフードや飲料等ユーザーが比較検討にあまり時間をかけない傾向にある商品を提供している広告主にとって、ユーザーのモーメントにピンポイントで入り込むことは非常に重要かと思いますので、事例として取り上げられているのも頷けます。

以下はSpotifyとメディアコミュニケーション・エージェンシーのGroupMが2016年8月に音楽ストリーミングサービスの利用状況を共同調査した結果のインフォグラフィック(サマリー)です。米国やイギリス、フランスを含む主要7か国の消費者2万人を対象とした本調査によれば、インターネットユーザーの2人に1人が音楽ストリーミングサービスのユーザーとのことです。

A quick breakdown of “The Streaming State of Mind”

また、インフォグラフィックの下部にあるように、音楽ストリーミングサービスを利用するシチュエーションも一日を通して多岐にわたることも明らかになっています。利用者も多く、シチュエーションに応じた様々なタッチポイントを持つことが出来ることを考えると、Branded Momentsのようなモーメントベースのターゲティングを可能にする広告プロダクトは音楽ストリーミングサービスならではかと思います。

上記調査に日本は含まれておりませんし、日本では音楽ストリーミングサービスの普及にまだ少し時間はかかりそうですが、Spotifyが2016年9月に日本でも開始されたことでにわかに活況づいてくることも期待されます。普及の規模によっては今後広告配信の重要なメディアのひとつとなり、モーメントベースのマーケティングをますます広げる可能性があると考えられますので、日本での今後の普及や海外での事例も含めて、引き続き注目していきたいと思います!

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