Merkleのデジタルマーケティングレポート
2016年10月26日、マーケティングエージェンシーの Merkle が、2016年Q3(第3四半期:7-9月)版のデジタルマーケティングレポートを発表しました。
リンク:Merkle Releases Q3 2016 Digital Marketing Report
本レポートは毎四半期にデジタルマーケティング(特に運用型広告分野)についての各種指標を定点観測したレポートです。毎度示唆に富む内容が多いのですが、30ページある内容をすべて網羅するのは大変ですので、今回は中でも気になった2つのポイント「拡張テキスト広告」「ショッピング広告」について紹介したいと思います。
※なお、本レポートはフォームに必要事項を入力すれば無料でダウンロードできるので、全文をご覧になりたい方はこちらのページから取得して下さい。
※ 文中の資料は Merkle の承諾を得て公開しています。 Following charts have permission to quote from Merkle.
キーワード種別によって拡張テキスト広告の実績は違う
以下は、拡張テキスト広告(Expanded Text Ads)と通常のテキスト広告(Standard Text Ads)の実績を、デバイスおよび検索結果の掲載位置ごとに比較したチャートです。
Googleの拡張テキスト広告とは、2016年7月下旬より利用可能になった、新しいテキストフォーマットです。従来の標準テキスト広告と比較して文字数が1.5倍になっています。2016年5月の発表(参考記事)では、文字数が多くなり広告の情報量が増えたことで、事前のベータテストで 20% ほど高い CTR を記録したとのこと。
参考リンク:AdWordsの拡張テキスト広告が正式に開始 〜広告フォーマットもモバイルファーストへ
もちろん、「99%が標準テキスト広告の中でベータテスト中の拡張テキスト広告が一部表示されていた」2016年前半の時期と、「検索結果の多くに拡張テキスト広告が当たり前のように表示されている」2016年後半の現在とでは、ベータテスト時と結果が違うのは当たり前と言えば当たり前ですが、上記のチャートのように、拡張テキスト広告がスタンダードになった現在では20%増の CTR とはなかなかいかず、デバイスよりも検索キーワードの種類や検索結果の掲載位置によってパフォーマンスに違いも見られるようです。
特筆すべきは、ブランド系の検索クエリの場合、CTR がむしろ下がっている点ではないかと思います。当初喧伝されていた予測とは逆の結果ですが、この事実はまだアーリーアダプタが主だった第2四半期(4−6月)の同レポートでも既に指摘されており、同様の傾向は拡張テキスト広告開始当初から継続しているようです。
どうして文字数の多い拡張テキスト広告の方が CTR が下がってしまうのでしょうか。その理由としては、以前まで「ブランド検索の場合、ショッピング広告が同時に配信される割合も多いので相対的にテキスト広告のクリック率が下がりやすい」という仮説が挙げられていました。ただし、このチャートは従来型テキスト広告と拡張テキスト広告との CTR の比較ですので、ショッピング広告によって拡張テキスト広告の CTR だけが下がるという説明にはなりません。
もう一つの仮説は、ブランド検索は特定のブランドやサービスの公式ページを想定しているユーザーが多いため、拡張テキスト広告によって広告のヘッドラインの文字数が長くなると、広告に公式ページ感がなくなってしまう、というものが挙げられます。文字が妙に多いリンクを見て、「あれ、何か違うかも…?」 と警戒したユーザーが広告のクリックを避けてオーガニックに向かう、ということは、確かにありえるかもしれません。
ちなみに、筆者の観測範囲でも同様の傾向が多数見られたので、試しに”従来型っぽく見える拡張テキスト広告”を作ったところ、CTRが戻ったという事例もありました。もちろんケースバイケースだと思いますが、「足し算ではなく、引き算」という考え方が地味に突破口になるかもしれませんね。
ECの検索連動型広告では、ショッピング広告が最優先施策に
Merkleの観測範囲という但し書き付きですが、小売企業の実に48%の広告クリックが、ショッピング広告(PLA)から発生しているという驚異的なデータが出ています。
検索連動型広告におけるショッピング広告のクリック比率は2015年後半から急激に上昇しており、ノンブランド検索(ブランドワード以外)に限れば、実に73%のクリックがショッピング広告から発生していることになります。
これだけ急激にシフトした理由の一つに、ノンブランド検索の「割の合わなさ」が挙げられるかもしれません。アトリビューション分析をしていても、「これならディスプレイに振ろうよ…」というキーワードに高値で入札していたりするケース、結構あったりしますよね。
ノンブランド検索には特定の商品を意図しない検索クエリが多く含まれるため、一般的には広告の CTR が低く、平均の CPC はどうしても高騰しがちです。
一方で、上記のチャートにもあるように、2015年の後半以降は、ノンブランド検索における CPC は、テキスト広告よりもショッピング広告の方が割安な傾向が続いています。キーワード設定の煩雑さや費用対効果を考えて、従来の検索連動型広告ではなくショッピング広告に予算や最適化のためのリソースをシフトするEC企業が増えていることが、傾向として見て取れる結果になっています。
また、このようにショッピング広告のクリックボリュームが増え、CPCが割安になっている背景には、Google側の対策が奏功している面も大きいと思われます。ショッピング広告は以前から広告在庫が少ない(=コマーシャルクエリがそのまま広告の表示機会の総数)という問題を抱えていましたが、モバイルでの表示を強化したり、カルーセル型の広告など、ショッピング広告の表示形式自体を見直したり、イメージ検索や AdSense for Shopping の促進によってパートナーサイトへの表示機会を大幅に増やしていることが、ボリューム増と CPC の低下を両立できている要因ではないかと考えられます。
結果として、上記のチャートにあるように、クリック数の増大にパートナーサイトが大きく寄与するという結果になって現れています。今後もパートナーサイトの割合は増えていくと思われますね。
次回のデジタルマーケティングレポートは EC が最も盛り上がると言われる第4四半期(10−12月)になりますので、おそらくショッピング広告のクリック比率は過半数を間違いなく超えてくるでしょう。ショッピング広告が短期間でEコマースの集客施策の最優先施策になったことが、データでも伺える結果となりました。
本記事では紹介しきれたなかったデータも含めて、Merkleのデジタルマーケティングレポートは、運用型広告の現在位置を知る上で、様々な示唆を与えてくれる内容です。興味ある方はぜひレポートをダウンロードしてチェックしてみてください!(ダウンロードはこちらのフォームから)
※ちなみに Merkle の回し者ではありません。これが無料で見れることに感謝!