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アナリスト予想をまたも上回る売上増
2016年第三四半期(7−9月:以下「Q3」)の決算報告によれば、今期の売上高は70.1億ドル、1株あたりの利益は1.09ドルで、アナリスト予想の69.2億ドル、0.97ドルを上回りました。前四半期もアナリスト予想を大きく上回りましたが、今期も好調ぶりを発揮しています。
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前年同期比の売上伸び率も56%と申し分ありません。売上総額のうち約97%を占める広告売上が68.2億ドルで、北米、ヨーロッパ、アジア、その他地域からまんべんなく広告売上を増加させています。
アクティブユーザー数の増加
2016年第ニ四半期では17億1,200万人だった月間アクティブユーザー数(Monthly Active Users:以下「MAU」)を、Q3では17億人8,800万人と7,600万人以上伸ばし、過去2年間で最もMAUを増加させた四半期になりました。
ビジネス上重要な1日あたりのアクティブユーザー数(Daily Active Users:以下「DAU」)も順調に伸ばしており、Q3では11億7,900万人と前四半期から5,000万人以上増加させました。DAU/MAUの値も66%と高止まりしており、ユーザーの利用頻度を高水準で維持しています。
また、モバイルのDAUが10億9,100万人で、92.5%のユーザーはモバイルからアクセスしていることになります。2年前のQ3はモバイルからのアクセスが81.3%、1年前が88.8%ですので、着々とモバイルシフトが進んでいるのがわかります。
続いて米Nanigansが発表した2016年Q2の広告のベンチマークレポートもご紹介したいと思います。
リンク: Q3 2016 Benchmark Report: Advertisers on Facebook Scale Revenue Through Video and Dynamic Ads
ハイライト
● オーディエンスネットワーク、モバイル、動画広告で高い収益性をマーク
Nanigansのソフトウェアを利用しているダイレクトレスポンス系の広告主は引き続き収益性を高めており、Eコマースとゲーム業界で出稿額の多い上位20の広告主は前年同期比でROASを26%向上させています。収益性が向上しているため、Facebookに投じる四半期の予算も平均で249%増加しているとのことです。
ゲーム業界では動画広告の利用がトレンドになっており、モバイルへの出稿額のうち50%以上は動画広告のようで、前期比で20%、前年同期比で101%動画広告の割合が増えています。レポートの中では、「高価値なモバイルユーザーを獲得するには動画広告が効果的であることが証明されており、平均インストール単価も低下傾向にある。ただし、動画広告を出稿する際のCPMの最高値は静止画の広告ユニットより高い金額で配信されている。」とのことです。CTRや関連度スコアなど品質スコアに関連する指標が静止画と比較して下回るといったデータは見当たりませんので、異なるアルゴリズムで配信されているのかもしれません。
続いてEコマースですが、ダイナミック広告に充てる平均予算が前期比で16%伸びており、新規購入の増加とアップセル/クロスセルによる平均購入単価の向上がトピックとして目立っていたようです。NanigansはQ4のホリデーショッピングシーズンではダイナミック広告を実装する広告主がさらに増えるだろう、と伝えています。
ハイライトの最後はオーディエンスネットワークに関する内容です。2016年5月にFacebookユーザー以外にもオーディエンスネットワークでリーチを拡大する発表が行われましたが、広告在庫を増やすと同時にパフォーマンスも向上させています。
Source: Facebookオーディエンスネットワークのリーチを拡大
Nanigansの顧客ではアップデートが行われる前から56%の広告主がオーディエンスネットワークへ出稿しており、Facebook内のプレースメントに比べ数十〜数百%高いCTRをマークしていましたが、Q3では利用率が59%に増加し、オーディエンスネットワークへの出稿額も前期比で4%増加したようです。
パフォーマンス面でもオーディエンスネットワークは高い実績を残しており、Facebook内のプレースメントも前期比でCTRを17%向上させていますが、オーディエンスネットワークは37%とFacebook内プレースメントの倍以上の実績を出しています。
Click-through rate (CTR)
Q3はCTRの向上に目を見張るものがあり、グローバルの平均CTRが1.66%と前期比 +41%、前年同期比 +74%と大幅に改善しています。特にEコマースの広告主の伸び率が驚異的で、前期比 +51%、前年同期比 +99%となっています。
米Nanigansではオーディエンスネットワークの成長が大きな影響を及ぼしていると述べ、Eコマースの広告主が前年同期比で平均10%モバイルの広告枠に増資しており、デバイス比で全体の71%を占めるモバイルの広告枠が過去1年間でデスクトップより4倍高いCTRをマークしたとのことです。
実際に筆者が運用するアカウントでもオーディエンスネットワークは高いCTRを記録しており、広告によってはニュースフィードより高いCTRかつ安価なCPMで配信できることも多いため、新規ユーザーへのアプローチを目的に実装するアカウントも増えてきています。
ゲーム業界でも堅調な伸びを見せており、前期比 +25%、前年同期比 +32%としています。2016年7月にモバイルアプリ向けのダイナミック広告やキャンバス広告がローンチされるなど大幅なアップデートが行われましたので、その影響もあるのではないかと思います。Analytics for Appsもアップデートされるなど機能強化は着々と進められていますので、Q4ではさらに伸長するかもしれません。
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Cost per 1,000 impressions (CPM)
グローバルでは$5.94(2016年Q1と同水準)と前期比 -9%と下がり、前年同期比 +15%となりました。全体のCTRが改善していることに加え、ここでもやはり入札単価の低いオーディエンスネットワークが一役買っているのではないかと考えられます。
Eコマース、ゲームともに同水準あるいはそれ以下のCPMとなっていますが、おそらくQ4はホリデーシーズンがありますので、このまま低下し続けるということは難しいのではないかと思います(過去2年間を見ると2014年が +48%、2015年が +24%と上昇する傾向にあります)。
Cost per click (CPC)
CTRが総じて改善し、CPMがなだらかに降下している状況ですので、平均CPCは業界を問わず軒並み低下しました。グローバルでは前期比 -35%、前年同期比 -33%となり、Eコマースは前期比 -48%、前年同期比 -54%と際立っています。今期記録した$0.36は2013年にNanigansが調査を開始して以来最低値とのことです。
地域別トレンド
これまで同様、(1)アメリカ、(2)欧州、中東、アフリカ、(3)アジア太平洋地域 に分けたデータも紹介されています。
地域によって広告製品やエコシステムのアップデート状況が異なる場合があるためその点を考慮して比較する必要がありますが、日本が含まれるアジア太平洋地域ではCTRの伸び率が +53%と最も大きく、CPCも -49%で最も低下した地域になっています。
今期は全体的に低下したCPCを規模の増大でカバーできた四半期になりました。今後はオーディエンスネットワークの配信面の増加やアルゴリズムの改善等でいかにCPMをキープできるかがポイントになるのではないかと思います。
広告のベンチマークレポートでは「Eコマース」と「ダイナミック広告」がキートレンドとして挙げられていますが、2016年9月に実店舗の在庫情報と連動させる広告プロダクト Dynamic ads for retail も発表されていますので、今後も活用の幅は広がっていくのではないでしょうか。
モバイルシフトもますます進んでおり、今期から目に見えて実績を上げてきたオーディエンスネットワークも今後 Facebook の主力製品になっていく可能性を感じますので、Facebookにおいてもモバイルを中心に据えたアカウント設計はより意識する必要がありそうです。