2016年8月23日、Facebook と Instagram のスライドショー広告に複数の新機能が追加されました。これは、2015年10月よりスタートしているスライドショー広告のアップグレード版になります。
リンク: Announcing New Features for Facebook Slideshow Ads
動画に比べ制作に必要なコストが少なく、画像データから構成されているためファイルサイズも小さくなることから、4G/LTE環境が整っていない地域の広告主でも手軽にブランドのストーリーを伝える方法として使われています。Facebook の内部データでは、2016年6月時点で200カ国以上で使われているフォーマットになっており、利用する広告主の半分以上は動画広告を実施しておらず、静止画ないしスライドショーのみを活用している状況だそうです。
そこで今回は、新興国や成長中のマーケットなど、主に通信速度の遅い地域に属する広告主から要望の多かった、音声とテキストの追加、モバイルからの作成、ストック画像や Facebook ページの画像ライブラリとの統合などが新機能として追加されました。
● テキストと音声の追加
テキストの追加だけでなく、テンプレートやテーマカラー/オーディオトラックを選択する機能も追加されるようです。「近日中には独自のオーディオトラックをアップロードできるようにもなる予定」とのことですので、より動画に近いクリエイティブを手軽に作れるようになるではないでしょうか。
● モバイル端末からの作成
まずは Android 端末限定になるようですが、デスクトップからではなくモバイルからも作成可能になります。
通常、モバイル向けの機能は iOS 端末からアップデートが適用されるケースが多いですが、今回は新興国や成長中のマーケットの広告主が主なターゲットとして想定されていると考えられますので、OS の普及率から Android が優先されたものと考えられます。2016年第二四半期の決算報告からもアジアや中南米、アフリカなどの地域の重要性が読み取れますので、今後の成長に期待できる地域の広告主に向けたアップデートなのだと思います。
● ストック画像、Facebook ページの画像ライブラリとの統合
手元に素材となる画像ファイルが無い場合でも Shutterstock の画像と、過去に Facebook ページで投稿した写真を使ってスライドショーを作成できるようになります。Shutterstock の豊富なライブラリから自由に素材を選べるようになったのは大きいですね。
● 動画ファイルの軽量化
mp4の動画ファイルをスライドショーツールにアップロードすると、10枚のスクリーンショットが自動で生成され、スライドショー広告として配信することが可能になります。グローバルで動画広告を配信している場合は、3Gなどの低帯域幅のネットワークが使われている地域へはスライドショー広告に切り替えることでユーザビリティを向上できるかと思います。
ユニリーバのアイスクリームブランドである Paddle Pop がインドネシアで制作したテレビCMの素材をこの機能を使ってスライドショー広告にし、平均的な動画広告と比べてファイルサイズを5分の1まで抑えられたそうです。以下、ブランドマネージャーの Yenni Nathalia氏のコメントです。
“We know that more than half the consumers we serve in Indonesia have trouble viewing video, since they… experience unreliable mobile data connections or low bandwidth. Facebook’s slideshow solution helps us create a simple, lightweight yet engaging mobile asset from our current video creative. Now we don’t have to worry whether it will load fast for slow connections, so we have assurance that the ad delivers our complete brand message.”
(インドネシアでは、モバイルデータ通信の不安定さや低帯域幅が原因でターゲットの半数以上が動画を見られないことがわかっていました。Facebook のスライドショー広告ツールを使うことで、既存の動画素材からシンプルかつ軽量で目を引くモバイルアセットを作ることができました。通信速度が遅くて読み込みに時間がかかりすぎることを気にせず、ブランドのメッセージをすべて伝えることができます。)
● 製品カタログの画像からスライドショー広告を作成
ダイナミック広告で使うデータフィードの商品画像を呼び出し、スライドショー広告を作成できます。こちらの事例では、ソックスブランドの米Stanceがこの機能を使い、ターゲットに合わせて様々なバリエーションを展開させたところ、従来の写真広告と比較してCTRが2.42倍改善、 CPAが48%削減、ROASが1.48倍向上と素晴らしい成果を残しています。
● 利用開始にあたって
今回追加された新機能は、すでに全世界の広告アカウントに適用されているとのことです。筆者も確認したところ、広告作成ツールの [メディア] から [スライドショー] を選択すると以下のウインドウが立ち上がり、アップデートの内容を確認できました。
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広告配信のターゲット地域が日本の場合、モバイルデータ通信の環境を気にして広告を制作/配信する機会がなかなかありませんが、キャンペーンをグローバルで展開する場合は非常に重要なポイントになります。リアルタイムで携帯電話の電波状況を確認できるアプリを提供している OpenSignal の2016年8月版の最新レポートでは、日本は3Gおよび4Gの国別普及率で2位(95.52%)、通信速度では9位(21.25Mbps)と非常に恵まれた環境であることがわかります。
今後は日本の広告主も2020年の東京オリンピックなどに向けて海外配信の機会も増えるかもしれませんので、Facebook では特に重要視されるユーザー体験を中心に据えてキャンペーンを設計することが求められてくるのではないかと思います。