2016年7月、Google は AdWords の管理画面に「デバイスをまたいだアトリビューションレポート」の機能を発表しました。
リンク:Inside AdWords: New cross-device attribution reports and benchmarks
Google は、2013年に「デバイスをまたいだコンバージョン」の提供を開始し、2016年の5月には「アトリビューションモデル」に基づくレポート機能を提供しており、今回の発表は、それら一連の流れに続くものとなります。
画像引用元:Inside AdWords: New cross-device attribution reports and benchmarks
今回の発表によって、下記の3種類のレポートが抽出可能になります。
・デバイス(“Devices”)
・アシストしたデバイス(“Assisting devices”)
・デバイス経路(“Device Paths”)
レポートの見方は下記の手順の通りです。
1.画面上部の「運用ツール」(“Tools”) タブをクリック
2.「アトリビューション」(“Attribution”) を選択
3.左側のメニューの「デバイスをまたいだアクティビティ」
(“Cross-Device Activity”) から表示したいレポートを選択
画像引用元:Inside AdWords: New cross-device attribution reports and benchmarks
Google の公式発表によれば、これらのレポートを使用して下記の2点を試すことを推奨しています。
1.「減衰モデル」や「線形モデル」などの、「ラストクリックモデル」以外のアトリビューションモデルを試す
「ラストクリックモデル」をベースに入札単価を調整した場合、コンバージョン率の良いロングテール系のキーワードへの入札が強化され、反対に、いわゆる 「ビッグワード」と呼ばれるアッパーファネル系のキーワードへの入札が弱くなる傾向にあります。しかし、アッパーファネル系のキーワードは、検討の初期段階で検索されるワードであり、本来であれば、新規率の観点からも入札しておきたい重要なキーワードです。「ラストクリックモデル」以外のアトリビューションモデルを試すことで、今まで軽視されてきたキーワードの新たな役割が浮かび上がると思いますので、様々モデルを試してみることをお奨めします。
2.「デバイス別入札単価調整比」を調整する
「アシストしたデバイス」レポートの「モバイルのアシスト率」が3.72 だった場合、モバイル端末で発生したコンバージョン1回あたり、3.72回のコンバージョンがモバイル広告によってアシストされ、他のデバイスでコンバージョンを完了したと考えられます。モバイルの入札単価調整比を強めることで、他デバイスのコンバージョンが増加し、トータルとして、コンバージョン数が増加することが想定されます。アシスト率に注目して入札単価調整比を調整することをお奨めします。
アトリビューション熱が高まる米国
2016年1月に米IAB (Interactive Advertising Bureau)とWhiterberry Group が行った調査によれば、56.7%の企業が2016年内にアトリビューション分析を実施する予定と回答しており、アトリビューション分析への熱がさらに高まっていることが窺われます。
参考記事:eMarketer: Attribution Is Becoming More of a Priority for Marketers
画像引用元:eMarketer: Attribution Is Becoming More of a Priority for Marketers
このような背景には下記の2点が考えられます。
1. AdWords, Google Analytics などのプラットフォーム側の進化によって分析が安価かつ容易になったこと
2. 分析結果を運用に落とし込むことが容易になったこと
米国においては、広告主が自社のファーストパーティーデータを利用して、独自の自動入札ツールを開発している企業も少なくありません。そのような企業では、取得できるデータが多くなったことで、入札アルゴリズムに変更を加える必要が出てきていることが考えられます。
この他にも、AdWords の管理画面にPublic β として公開されている「データドリブンアトリビューションモデル」(以下DDA)を使用した自動入札も強力です。プラットフォームが提供するアトリビューションツールを利用する傾向が高まっていると考えられます。DDAは、現在のところ、「目標コンバージョン単価(Target CPA)」のみ使用可能ですが、今後「目標広告費用対効果(Target ROAS)」にも対応していくことが当然推測されます。データを学習する期間を考慮して、2 ~ 3週間ほどの実験の期間を確保して試してみることを強くお奨めします。
参考記事:
AdWordsの「データドリブンアトリビューション×自動入札」から考える、広告運用者のこれから
なにかと他のタスクに追われて優先順位の下がりがちなアトリビューション分析ですが、今後のプラットフォームの進化の方向性も踏まえて、今のうちに分析に慣れ親しんでおくとよさそうです。