動画ビジネスとMCNの未来:UUUM鎌田和樹CEOに聞く

動画ビジネスとMCNの未来:UUUM鎌田和樹CEOに聞く

動画による態度変容と、動画広告の運用

岡田:Unyoo.jpは広告運用のメディアですので、動画広告の運用についても伺いたいと思います。コンテンツプロダクションについては非常に理解が進んだのですが、それを世の中に配信する方法として、YouTubeにアップロードする以外の部分でどういうお仕事をされているのか教えて下さい。

鎌田:企業さんからお仕事をいただいたときには、定量調査などを定期的に実施しています。よく「動画は見られているけど結果に繋がらないよね」と言われてしまうことがあって、確かにそういうことがあるかもしれないけれど、重要なのは何をKPIにするかというところですよね。

我々はコンバージョンはもちろん保証できませんが、リーチ数であれば比較的納得感のあるKPIになりますし、Googleさんのブランドリフト調査などもそうですが、実際に動画を視聴したユーザーの態度変容を調査をすると、効果がすごくいいんですよ。大食いのYouTuberが吉野家の牛丼を食べる動画を見て、実際に吉野家へ行った人が12%とか、マジかと。

参考:YouTuberを活用したタイアップ動画の態度変容効果を検証

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【大食い】吉野家で永田・中西ペア&木下で牛丼18杯!!!【木下ゆうか】

岡田:面白いですね。こういうコンテンツって、以前はテレビの深夜番組やラジオが担っていた役割のものですね。

鎌田:そうです。コアなファンがつきますし、伝播力があります。実際、クリエイターが作ったYouTube動画をAdWords の TrueView広告として配信すると非常によい成果が出てきています。

岡田:ちなみに、TrueView広告のような、動画二次利用は契約次第という感じですか。

鎌田:契約次第です。AdWordsの運用を我々が代行することもあります。

岡田:タイアップ企業の動画をTrueView広告で配信する際の運用が多いですか?

鎌田:そうです。まさしく制作からマーケティングまでの一連の流れの運用ですね。専用のチームも居ます。

岡田:UUUMの中で広告運用のビジネスは大きいんでしょうか?

鎌田:時期によりますが、MCNとしてのAdSenseレベニューシェアと、企業さんのプロモーションのお仕事が半々の割合です。

岡田:プロモーションというのは、これまでご紹介頂いた動画の企画や、さらに動画を拡散するためのマーケティング費用も含まれるということでしょうか。

鎌田:はい。我々の場合は継続的に一年間ずっと運用し続けるというよりは、新商品が出るたびに新規のプロモーションが走るというかたちが多いです。メーカーさんであれば3〜4ヶ月ごとに市場に新商品を出されるので、1つのサイクルが終わると、そこでの実績を元に次のお話をして、気が付いたら年間でお付き合いしている、といったことも頻繁にあります。

動画制作の運用

岡田:プロモーションビジネスが企業とクリエイターの需給バランスで成り立っていると考えると、クリエイターさんの調整やエンゲージメントも「運用」に当たると言っていいのかなと思います。例えば企業から問い合わせがあって実際に企画を立てるときに、どのクリエイターにどうアサインするかとか、制作過程にどれくらいコミットしているかなど、ディレクションとしての関わり方はいかがでしょうか? 先ほどのバディという表現から察するに、クリエイターに伴走するイメージなのかなと思いました。

鎌田:仰るとおりで、クリエイター向けには非常に力をいれて頑張っています。まず入り口としては企業さんから「最近動画が流行ってるらしいけど、ちなみにHIKAKINっていくら?」というような話があります(笑)。我々は金額表を作っているわけではないので、商品の詳細やプロモーションの目的、想定ターゲットなどをお聞きして、その上でさまざまな調整を行います。アンコントローラブルとまでは言いませんが、クリエイターに動画でやることを全部絵コンテのように書いて出すことはしませんし、自然なテイストがYouTubeのテイストだということを企業さんにもご理解いただくようにしています。営業がセールスではなくプランニングをして、バディに受け渡し、バディがクリエイターと確認しながら進めていきます。

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岡田:調整が大変そうですが、内部で使っているツールなどはありますか?

鎌田:クリエイターは他のスケジュールもありますので、基本的にはGoogleカレンダーで予定を共有して、Slackなどのチャットツールで会話しています。

岡田:意外です。クリエイターは皆さんSlackを使うんですか。

鎌田:専属契約をしているクリエイターはみなSlackです。最初はLINEを使っていたんですが、情報が流れていってしまうのでプロジェクト管理には向かなくて、履歴を残していくためにSlackを導入しました。

Trelloのような管理ツールで構成を出したり、確認動画を提出して、OKをもらってから本番アップ、というようなこともしています。バディ向けのダッシュボードもありますね。

岡田:まさにレコードレーベルのような仕事ですね。

鎌田:人気のクリエイターはこれを月に4〜10本くらいやることもあります。全体としては月に100本以上こなしていることになります。

プラットフォームとコンテンツの関係

岡田:バーティカル化するということはテーマやモチーフを全面に出すということになりますが、ここまでのお話を聞いて、UUUMのやり方はクリエイターさんそのものを全面に出すというか、あくまで主役はクリエイターであるという方法論を敢えて採っていらっしゃるんだなと思いました。

鎌田:あまり褒められた発言ではないかもしれませんが、本当は何でもやりたいんです。先ほどの音楽産業じゃないですけど、「先行事例を考えたらこういう組み合わせや横展開がビジネスになるだろう」と分かっていることもまだ十分にできていないので、芽吹く可能性があるところにはどんどん力を入れていきたいですね。唯一やらないと決めているのは、自社でプラットフォームを作ることです。流通の仕組みを自分たちで作るよりは、コンテンツを生み出していく方に注力していきたいです。

岡田:共感します。プラットフォームはどこまでいってもプラットフォームでしかなくて、私も経験がありますが、自社のプラットフォームを使うことを最優先に提案しなきゃいけない営業は、どこかで行き詰まってしまいますしね。

鎌田:(笑)。

岡田:私はデータフィードが大好物なんですが、今後デバイスも含めてフラグメンテーション(断片化)がますます進んでいくと、マスタ情報がしっかりしていて分散された大小多くの出店に情報が同期できていない限り、局地戦でユーザーの小さいガッカリを増やし続けることになるため中長期的には必ず負けるビジネス構造になっていくと思います。マイクロモーメントじゃないですが、適切な接点をどれだけ設けられるかが最終的に財産になるはずなんですよね。

鎌田:インターネットとソーシャル・ネットワークによって、人々のコミュニケーションがタコ壷化していく現象が以前より顕著になったように思います。自分が好きなものにしかハマらなくなりますし、僅かな差異を深掘っていくコミュニティーが大量にできるだけで、実際「ゲーム好き」と言ってもドラクエかパズドラかで何もかもが違うように、より細かい単位がタテに深くなっていくことが今後のネットビジネスのひとつのキーワードではないかと思います。たぶん皆考えていることは一緒なんですけどね。

岡田:気付いたことを実際に、実直にやるかやらないかの違いだけですよね。

鎌田:UUUMを作る前は光通信にいたんですが、ビジネスマンとしてはうまくいっていたと思いますが、大変でした(笑)。だから次こそは楽しいビジネスにしたいなと思っていました。今年は面白いリリースがまだまだ控えているので、実際にどんどんやっていきたいと思います。

岡田:楽しみにしています。本日はありがとうございました!

オフィシャルサイト: UUUM(ウーム)

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