目次
- 1 研修・トレーニングに寄り添う
- 2 運用者を育てる上で必要なこと
- 3 新人抜擢奥義
- 4 パネルディスカッション
- 4.1 研修・トレーニングの際に、「これだけは気をつけている」というポリシーみたいなものがあれば教えて下さい
- 4.2 スキルや経験値を測るための有効な判断材料はありますか?
- 4.3 運用者の評価の仕方はどうされていますか?
- 4.4 運用者の目指す「人材像」って、ありますか?あるとすればどんな人物になるのでしょうか?
- 4.5 研修・トレーニングという軸で、会社として、もしくは個人としての、これからのチャレンジを教えて下さい!
- 4.6 トレーニングする側のモチベート方法はどんなものが考えられるのでしょうか?
- 4.7 組織のNo.2、後継者を育てる方法はありますか?
- 4.8 結果的に組織に合わなかった人材について、責任の所在は「採用」にあるのか「研修」にあるのか、どちらなのでしょうか?
研修・トレーニングに寄り添う
2016/4/14、広告運用者のためのミートアップ、Unyoo.jp Meetup Vol.6 「研修・トレーニングに寄り添う」が開催されました。
好評を博したイベント内容の一部をご報告いたします。
- 第一部 運用者を育てる上で必要なこと
- 第二部 新興ネット広告代理店が生え突き抜けるための新人抜擢奥義
- 第三部 パネルディスカッション
運用者を育てる上で必要なこと
第一部のテーマは、TATEITO株式会社の平野 考宏さんによる「運用者を育てる上で必要なこと」。
TATEITO株式会社はデジタルマーケティングに特化した教育サービスを提供する会社であり、オンラインで学習コンテンツを受講できる マナビト を運営されています。
そんなTATEITO株式会社の代表取締役 CEOを務める平野さんが、過去広告代理店にて運用者の育成を行ってきたご経験から、実際の内容や気付き、反省点などをお話しいただきました。
まず、急成長中の広告代理店での教育プロジェクトの立ち上げのご経験を通じて、教育・トレーニングに重要なことは以下の3点であると述べられました。
1.投資すること
未来への投資であると理解し、注力すること2.リーダーが率先すること
リーダー自身が学ぶ姿勢を示さなければ、浸透しない3.続くアウトプットの機会を持つこと
アウトプットの場を新たに作ろうとしても上手くいかないことが多いため、現在実施している仕組みの中に取り入れる
これはデジタルマーケティング業界に限らず、一般に共通して重要な点であると言えます。教育プログラムを作成し、アウトプットの場も作ったのになかなかワークしなかった場合は、上記の観点から振り返りをしてみるときっと気付きがあるはずです。
一方で、それですべてうまくいったのかというと、必ずしもそうではなかったと当時を振り返る平野さん。実際には、以下のような反省点があったとのこと。
1.短期的
“CPA調整人材”となってしまう2.一面的
リスティング広告の範囲しか分からないなど、マーケティング全体としての思考ができない3.現象的
ただ目の前の売上を上げることを重視してしまう
上記は、特にネット専業の広告代理店において、これらの課題を抱えている運用者は多いのではないでしょうか。
そして以上を踏まえ、もしも今、広告代理店での教育プログラムを作るとしたら、
- 知識 …リスティング広告だけでなく、その他の施策も。マーケティング基礎知識。データ分析/プログラミング
- スキル …運用スキル、コミュニケーション、プレゼン(見せ方)、商売センス
- 思考 …中長期目標達成、顧客視点
に分類して考えるだろうと締めくくりました。
ハウツーだけにとらわれず、長期的・多面的・本質的な教育が重要と説き、「教育とはその会社の利益のためだけではなく、個人のキャリアを考え、本当にその人のためになるようにすべきだ」という、デジタルマーケティング業界の教育を率先している平野さんならではの熱いメッセージに、「教育」の意味と重要性について深く考えさせられる第一部となりました。
新人抜擢奥義
第二部のテーマはアナグラム株式会社の竹内 まさるさんによる「新興ネット広告代理店が生え突き抜けるための新人抜擢奥義」。運用型広告コンサルティングを専門とするアナグラム株式会社にて取締役を務める竹内さんが、実際に現場で実施している教育体制や組織設計についてお話ししてくださいました。
まず、研修の位置付けを「不足スキルを補うもの」と定義する竹内さん。アナグラム株式会社が採用の際に重視しているポイントとして 人間性・社交性/社風へのフィット/数字への強さ・本質追求性/業界スキル/周辺スキル を挙げ、中途採用の場合は総合的なスキルが求められるため基本的にはOJT、新卒採用やインターンの場合は業界スキルや周辺スキルを補うために研修・トレーニングが必要だとおっしゃいます。
次に、実際にアナグラム株式会社で実施している研修・トレーニングの内容を紹介いただきました。
■一括研修
・年2回以上の合宿
・新卒/インターン生は最初の2週間は毎日単語テスト■週次トレーニング
・グロースハック(勉強会)
・定例共有会にて成功事例やヒヤリハットの共有
・情報共有掲示板(ChatWorkなど)※必要に応じて業界セミナーやメール講座、外部へのコンサル依頼なども
アナグラム株式会社の特徴的な取り組みである「グロースハック」は実際のアカウントを運用担当者とは別の方が分析し、改善案を発表・議論するもので、最初はなかなか発言できなかった新人も、徐々に発言できるように成長していくとのことです。インプット/アウトプットの両方を促す仕組みによって思考力やプレゼンテーション力が鍛えられていくだろうことが窺えます。
急成長を続けるアナグラム株式会社が実際に取り組まれている研修・トレーニング内容だからこそ、実践的な示唆に富む第二部でした。
パネルディスカッション
第三部は、トレーディングデスク事業を展開し、若手の育成に注力する株式会社エスワンオーインタラクティブの代表取締役社長 高瀬 大輔さんにもご参加いただき、アタラ 岡田のモデレートでパネルディスカッションが行われました。
さまざまな立場からデジタルマーケティングの「教育」に携わる4名によるディスカッションは、刺激的な発言も飛び出す白熱した時間となりました。特に印象的な発言を引用し、ディスカッションの一部をご紹介いたします。
研修・トレーニングの際に、「これだけは気をつけている」というポリシーみたいなものがあれば教えて下さい
高瀬さん:
– 数値化、モニターできるようなゴール設定をすること
– オペレーションの重要性を説く。オペレーターがいなければこの業界は回らないので、その価値を伝えている
竹内さん:
– トレーニングを受ける側にも責任があるので、腑に落ちないことを腑に落ちたように振る舞ってはいけない。腑に落ちるまで聞くこと。そしてトレーナーは相手が腑に落ちるまで説明すること
– 怒らない
平野さん:
– WhatではなくWhyを追求する
– プログラムに合わせて進めるのではなく、参加者に合わせる
岡田:
– 相手の年齢やキャリアで態度を変えないこと
スキルや経験値を測るための有効な判断材料はありますか?
また、チーム・案件の配属を決める際のポイントがあれば教えて下さい
竹内さん:
– ノーヒントでアカウントを分析させる。分析内容や使用するツール、質問の深さなどで判断する
– 配属はクライアントの担当者・ビジネスフェーズとの相性や当人のボキャブラリーで決めている
高瀬さん:
– 新卒に投資しているので、モニタリングを重要視している
– 配属は採用時点で想定している。若手ほど数字にシビアなお客様の担当とし、成長させていただく。そして成果を出して褒めていただいた際に、社内からも評価することが大切
平野さん:
– 測りたい指標によって測り方を変える
運用者の評価の仕方はどうされていますか?
高瀬さん:
– 定量的評価・定性的評価の両方だが、最近はプロセスを重視している
– 理想はクライアントからの評価のフィードバック(顧客満足度)
竹内さん:
– クライアントからの評価を最重要視している。定量的評価はほぼしていない
平野さん:
– 本人が納得する評価であるよう心がけている。本人が納得できない項目は排除する
運用者の目指す「人材像」って、ありますか?あるとすればどんな人物になるのでしょうか?
高瀬さん:
「広告の運用者」ではなく、顧客のマーケティング・トレーダー。ただの”チューニング屋”にならないように
竹内さん:
「参謀」であれ。顧客から色んな面で頼りにされる人
研修・トレーニングという軸で、会社として、もしくは個人としての、これからのチャレンジを教えて下さい!
高瀬さん:
– 運用者を育成出来る仕組みを自社のみならず外部と連携して創っていきたい
– 複数社が協力するプロジェクトに関心があり、社内で実施している「天下一武道会(運用プレゼン)」を社外ともやりたい
竹内さん:
– 社内から声が挙がるようにしていきたい
– 会社にとっては自分(竹内さん自身)が不要になるようにしていくべきなので、自分をクビにできる環境を目指している
平野さん:
– パーソナルトレーナーになりたい。人によって学び方は違うので、人に合わせて、応援してあげる仕組みを創る
トレーニングする側のモチベート方法はどんなものが考えられるのでしょうか?
高瀬さん:
トレーニー(トレーニングを受ける側)の成長していく姿で自然にモチベーションが上がっていくはず。それを楽しめない人がトレーニングに回ってはいけない
平野さん:
同様に、合う人だけがトレーニングに注力するべき
組織のNo.2、後継者を育てる方法はありますか?
高瀬さん:
経営者になるような人はなるべくしてなる。本人からアクションしてきた人に対応するのが良い
竹内さん:
同様に、本人からのアクションに応える。戦略的な話の通じ方などで判断している
結果的に組織に合わなかった人材について、責任の所在は「採用」にあるのか「研修」にあるのか、どちらなのでしょうか?
高瀬さん:
採用に失敗はありえないため、「研修」要因でしかない
平野さん:
同上。その人が活躍するまで死ぬ気で育てるべし
登壇者からの議題のほか、ご参加者からも複数の質問が挙がり、規定の時間を超えてまで熱く意見が交わされました。各々手法は異なれど根幹の考え方は共通していて、互いの意見に同調する形で議論が進行する場面が多く見られた点が印象的なパネルディスカッションでした。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!
次回のUnyoo.jp Meetupは企画が固まり次第、Unyoo.jp 上でアナウンスいたします。ふるってご参加のほど、よろしくお願いいたします!
※2016/4/27追記
アナグラム株式会社さんからもレポート記事が掲載されました。
ありがとうございます!
■Unyoo.jp Meetup Vol.6 「研修・トレーニングに寄り添う」 セミナーレビュー
https://anagrams.jp/blog/review-of-unyoo-jp-meetup-vol-6/