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EコマースのプラットフォームとしてYouTubeを捉える
2015年5月にアナウンスされた TrueView とデータフィードを連携させた機能である「TrueView for Shopping(ショッピング向けTrueViewキャンペーン)」や、2015年9月に発表された「YouTube向けショッピング広告(Shopping ads for YouTube)」などを始めとして、近年のGoogleは、動画とショッピングの結びつきを、これまで以上に強く推し進めているように感じます。
参考リンク:YouTube向けショッピング広告がスタートし、企業の動画利用は次のステージへ
Googleによれば、製品レビュー動画の視聴数は、2014年から2015年の1年間で 40% も上昇し、消費者調査でも18歳から24歳の5人に1人が製品を購入するためにYouTubeで製品をチェックしていることが分かっています。
製品レビュー動画は Haul Video や Unboxing Video (つまり「開封の儀」動画)と呼ばれ、以下のホリデーシーズンの購買調査(2014年)でも分かる通り毎年伸びており、YouTubeの中でも大きな動画ジャンルの一つになっています。購買行動の中に動画が含まれてきているということですね。
YouTubeを構成する3つのプレイヤーが作る三角形
Googleの広告プラットフォームである AdWords が「広告品質」という概念によって「ユーザー」「広告主」「パブリッシャー(メディア)」の3つのプレイヤーをバランスしているように、YouTubeも同じ3つの要素が広告の収益分配を介して成立しています。
動画視聴をするユーザーの存在により、クリエイターは動画を通じて表現活動や情報提供のモチベーションが上がり、素晴らしい動画は評判が形成されて視聴回数が伸び、その量に応じた広告収益を得ることができます。
その広告収益の源泉は広告費です。広告主は動画の視聴者にアプローチしたり、動画の配信やブランドチャンネルを通じて、ユーザーとコミュニケーションを取ることができます。
動画を見に来るユーザーが増え、それによって動画をアップロードするクリエイターが増える、というポジティブな循環の通貨としてYouTubeの広告メニューは存在しています。ここ最近、製品レビューを投稿するクリエイターが増え、それを視聴するユーザーも増えたことで、その流通をさらに加速するショッピング広告という通貨が加わった、と言えるのではないかと思います。
YouTubeで流通している広告形態の整理
2015年9月に、これまで別の管理画面だった AdWords for video(動画広告向けアドワーズ)は AdWords に統合されました。これにより、シンプルで統一されたインターフェイスとなり、検索、ディスプレイ、動画の管理が一本化されています。
参考:Google、YouTube TruView動画広告キャンペーンをAdWords管理画面に統合
そこで今回は、ショッピング広告としての動画を語る前に、近年で大きく変動しているYouTubeの広告メニューを改めて整理したいと思います。(※マストヘッドなどの予約制プレースメントは今回省いています)。
■2種類のTrueView動画広告
広告主は「インストリーム広告」と「インディスプレイ広告」の2種類のフォーマットから選ぶことができます。
1) インストリーム広告
インストリーム動画広告は、動画の本編を再生する前、もしくは最中に表示される広告です。
5秒が経過すると、広告をスキップするオプションがユーザーに表示されますが、ユーザーがスキップしなかった場合、ユーザーが動画を30秒間(30秒未満の広告の場合は最後まで)視聴したか、30秒未満でも動画の視聴を主体的に選択(エンゲージ)したときに料金が発生します。
表示箇所は、YouTube 動画再生ページのほか、YouTubeを含む Google Display Network(以下GDN)の動画配信サイトにも表示されるほか、モバイルのYouTubeアプリ、m.youtube.com(iPad、Android上)、インターネット接続のあるテレビ上でも表示されます。
TrueViewに使用する動画はクリックしてウェブサイトを訪問したり、CTAオーバーレイ(※)、カード、コンパニオンバナーなどを含めることができます。
※CTAオーバーレイとは
CTAオーバーレイとは、Call-to-action、つまり「行動を促す表現」が動画の下部に表示される機能のことです。動画の再生が始まるとすぐに表れ、15 秒が経過すると折りたたまれてサムネイルとして表示されます。
見たい動画の前に表示されるため、ユーザーにはお世辞にも評判がいいとは言えないTrueViewインストリーム広告ですが、YouTube側はメリットをアピールするため、「視聴者の平均15~45%が広告をスキップしない」「他の動画広告フォーマットの3−4倍のCTRがある」といった実績を公表しています。
2) インディスプレイ広告
インディスプレイ広告は YouTube および GDN が配信対象で、動画のサムネイルと最大3行の広告文が表示される形式です。
インディスプレイは配信範囲が非常に広く、GDNが配信対象に含まれるほか、YouTube内だけでも、検索結果ページ、動画再生ページ、PCサイトのトップページ、モバイルアプリなどが対象となります。
なお、YouTubeの検索結果ページ向けのTrueViewは、以前は独立したメニュー「TrueViewインサーチ広告」という名前でした。
2015年4月にこのインサーチ広告とインディスプレイ広告が統合され、一つの管理フォーマットとして統一されています。(TrueViewに関する古いブログ記事は、インサーチを含む3つの形式としてTrueViewを紹介していることが多いので、注意が必要です)
統合の結果、インディスプレイ広告は以下の6箇所が配信の範囲になります。設定によってすべてに配信することも、選択して配信することもできます。
1. YouTube検索結果(PC)
2. YouTube動画再生ページ(PC)
3. YouTubeトップページ(PC)
4. YouTubeモバイルアプリトップページ(Mobile)
5. YouTubeモバイルのウェブ検索ページと動画再生ページ(Mobile)
6. GDN(Google Display Network)
1.YouTube検索結果
YouTubeの検索結果に表示される広告です。インディスプレイに統合後も引き続き最も頻繁に利用されている設定かもしれません。広告表現として、サムネイル、ヘッドライン、チャンネル名、動画視聴回数が表示されます。料金はユーザーが広告をクリックして視聴を開始すると発生します。
動画視聴ページに広告を配信せず、YouTubeの検索結果のみに広告を表示させたい場合は、動画キャンペーンの設定ページで「YouTube Search」のみを配信ネットワークとして選択しておく必要があります。
2.YouTube動画再生ページ
動画視聴ページは、以下のような複数の掲載箇所で広告が表示されます。
- 動画のオーバーレイとして、動画再生ページに表示(単体)
- 動画のオーバーレイと、300×250 のコンパニオン広告とセット表示
- 関連動画として、サムネイル、広告ヘッドライン、チャンネル名、動画視聴回数を含むユニットとして表示
- 関連動画として、300×250の大きなサムネイル、チャンネル、アバター名、広告ヘッドライン、説明文、動画の長さを含むユニットとして表示
3.YouTubeトップページ(PC)
マストヘッドが無い場合にのみ、PCのYouTubeのトップページにも表示されることがあります。(あまり見たことがないのですが…)
4.YouTubeモバイルアプリトップページ(mobile)
モバイルビデオマストヘッドが掲載されていない場合に、AndroidやiOSのYouTubeアプリのトップページにも表示されます。
5.モバイルウェブの検索結果と視聴ページ(mobile)
モバイル検索結果ページや動画再生ページで、関連動画としてプロモート表示されます。
6.GDNの枠に動画配信
GDNで使われる広告枠のうち、以下のサイズにもオークションに参加することができます。
・728×90
・336×280
・300×250
・250×250
・200×200
YouTube上で検索をしているときや、YouTubeやウェブ上で動画サーフィンをしているときに推奨動画として表示されるインディスプレイ広告は、「体験を邪魔される」という印象を持たれない分、動画そのものを情報として機能せさせやすい広告フォーマットだと言えると思います。(逆に、インストリーム広告は以下に「邪魔にならないか」を意識すると成功するように思います)
■ショッピング向けYouTube広告
YouTubeには、通常のTrueViewとマストヘッド以外の方法でも広告を出すことができます。以下はEコマース関係の広告主が利用しやすい広告フォーマットの一例です。
標準ディスプレイ広告
標準ディスプレイ広告は、300×250のサイズ(または300×60)で動画の隣に表示される広告で、通常のAdWordsのディスプレイ広告の配信先がYouTubeだった、というケースが該当します。
m.youtube.comの場合はTrueViewのみが対象になるため、この標準ディスプレイ広告が表示されるのはPCからの視聴だけですので、PC経由での購買数が多いサービス(B2CのEコマースなど)では、リターゲティング等で利用されることが多いと思われます。
視聴中の動画の右側またはおすすめ動画リストの上に出るほか、画面を拡大して視聴している場合はプレーヤーの上部にも広告が出るため、トップページを除いてYouTubeのほぼ全エリアにわたって出稿されるため、範囲としては非常に広いのが特徴です。
ショッピング向けTrueViewキャンペーン(TrueView for Shopping)
ショッピング向けTrueViewキャンペーンは、TrueView広告を配信する広告主の動画と Google Merchant Center(以下GMC)を連携させ、自社の動画広告に「Cards(カード)」 と呼ばれる動的アノテーションを設定できる機能です。
設定自体は非常にシンプルで、GMCと連携したAdWordsアカウントで、動画キャンペーンを作成し、キャンペーンのサブタイプを「ショッピング」に変更すると、Merchant ID(販売者ID)を入力する項目が現れるので、当該キャンペーンで使用する商品の販売者IDを選択すれば、あとは通常のTrueViewインストリーム広告と同様の設定が可能です。
参考:ショッピング向け TrueView キャンペーンを作成する – AdWords ヘルプ
ショッピング向けTrueViewキャンペーンは、商品の価値をハイライトした動画に、GMCからフィードされたカードを表示させることによって、動画にインタラクティブ性を加えます。かんたんに言えば「自社の動画広告のクリエイティブがより充実する」という機能になりますが、通常のインストリーム動画広告と同様に、5秒後に視聴者は広告をスキップできるため、フォーマットの違いに関わらず、視聴者を惹きつけるクリエイティブが重要なのは変わりません。
既にAdWordsでPLA(商品リスト広告)を利用している広告主は、このショッピング向け動画キャンペーンで、配信の幅を広げることができるようになります。
スポンサーカード(Shopping Ads for YouTube)
これはTrueViewのフォーマットではなく、YouTube上にある一般の動画に対して、関連性のある商品を自動的にアノテーションさせる機能になります。PLA(というよりは動的リマーケティングに近い)の仕組みを活用して、製品レビュー動画などに自社の GMC から自動的に商品フィードを表示させることができる、ということです。
ショッピング向けTrueViewキャンペーンとは違い、スポンサーカードは広告主の動画クリエイティブではなく、商品情報の配信面が動画へ拡大することを意味しています。動画広告というよりは、ショッピング広告の配信機会や、タイミングが増えることに繋がりそうです。
動画とフィードが連携する広告
Googleの代表的なデータフィード広告である商品リスト広告(ショッピング広告)が2012年に登場してから、わずか数年間で GMC を利用した広告はEコマースにはなくてはならないメインチャネルの一つになりました。Google側の機能改善スピードも非常に速く、特にこの1-2年の更新頻度は目を見張るものがあります。
運用型広告が徐々にフィード化していく中で、おそらく最も利用者が多く先端を進んでいるのがショッピング広告ではないかと思います。今回ご紹介したYouTube向けのショッピング広告は、正しく活用すれば、動画を活用したコマースのアイデアをより広げるものだと思います。配信先が動画へ広がることにより、GMC は小売業者にとってのデータプラットフォームとして、その存在感はますます増してくるのではないでしょうか。
動画広告は、近年非常に速いスピードで進化しています。まずはその中心に位置する YouTube の広告メニューを再度見直し、キャンペーンに役立てて頂ければ幸いです!