アトリビューションの行方と課題 2016年

アトリビューションの行方と課題 2016年

運用型広告レポート作成支援システムglu
2016年の現在、アトリビューション分析は今まで以上に実施フェーズとして運用型広告の現場に浸透していると肌で感じています。

そんな中、ここ昨今のアトリビューションはどんな課題があり、2016年はどのように進化していくべきなのか? Marketing Land の記事にそれを示唆する内容がありましたので、抄訳しながらまとめてみたいと思います。

出典:Attribution: What’s Next In 2016?
※執筆者である Eric Dezendorf氏にも翻訳・転載の承諾を頂いています。

出典記事によると、現代のアトリビューションには、4つのキーワードがありました。

目次

1:日々のデータ更新(Daily Data Updates)

 

In my opinion, the next advantage that attribution will provide is the ability to provide new data on a daily basis. This will allow end users to update and adjust budgets and placements each and every day to influence marketing programs expertly.

アトリビューションが次に提供する価値は毎日新しいデータを提供できるということだ。これによってエンドユーザーはマーケティングプログラムをうまく作用させるために毎日予算やプレースメントをアップデートしたり調整したりすることができる。

この発言は、継続的にアトリビューション分析を続けられるインフラを見直す必要性を謳っていると感じます。一方で、第三者配信(以下「3PAS」)側のデータと自社データとの連携なども踏まえると、現実的には組織的な動きが必要になってくると思います。

分析の単位として毎日(Daily)とは言わないまでも、四半期毎などユーザーの行動や意識が変わるタイミングで、アトリビューション分析を定期的に行なっていく体制を整えることは非常に重要です。

2:クロスチャネルマーケティングの更新(Closs-Channel Marketing Updates)

 

I think 2016 will be the year that mobile attribution takes a huge leap forward.
Right now, it’s extremely difficult to follow a user who views a mobile ad but converts from a desktop ad or vice versa. Customers will not only be able to attribute cross-device conversions correctly, but they will also be able understand the cross-pollination impact the two channels have on each other.

2016年はモバイルのアトリビューションが大躍進を遂げる年になると思う。
現段階ではモバイルで広告を見て、デスクトップの広告からコンバージョンに至ったユーザーを追うことはかなり難しいし、その逆も然りだ。ただ、これからはクロスデバイスのコンバージョンの貢献度を正確に把握できるだけでなく、2つのチャネルがお互いにどういう影響をしあっているかを知ることもできるようになるだろう。

AdWordsでは既に店舗来訪コンバージョンが計測(※ヘルプ)できますので、技術的にはO2Oでの効果を可視化し、オムニチャネルとしての統合的なアトリビューション分析も実現できるのではないかと思います。

現在は、3PASベンダーがブラウザでのCookieを紐付けて経路データを生成するので、厳密にはブラウザ単位の経路データになります。

ただし記事にもある通り、ここに課題が多くあると感じていて、取得データがブラウザごとの Cookie である性質上、同一ユーザーのクロスデバイスの経路データは算出不可能であり、デバイスをまたいだ貢献度分析は、現時点(※2016年3月時点)では難しい状況です。

だからこそ、モバイル等のクロスデバイスデータを加味したアトリビューション分析は、今後の発展を特に期待したい分野です。

モバイルアプリの利用が進んでいることも、アトリビューション分析の難しさの要因の一つになっています。以下は ComScore が発表したデバイスごとの利用時間の推移(米国のみ)ですが、モバイルアプリの利用時間は伸びているものの、モバイルブラウザの利用はそれほど増加していない傾向が見て取れます。

クロスデバイスアトリビューション_モバイルアクセス※デバイス別によるアクセス推移 −ComScore

仮にモバイルブラウザベースのアトリビューション分析をするとしても、例えばユーザーが利用したモバイルアプリでアプリ内ブラウザが立ち上がってCookie が付与されるような行動データの場合、その後 Chrome などのモバイルブラウザからアクセスした場合は、同一ユーザーの同一デバイスにも関わらず、経路が2つのブラウザ間で切れてしまうので、正しい経路データにはなりません。

結果的に、アプリ内ブラウザの中でユーザーがコンバージョンまで達成しないと「コンバージョン経路データ」としては成立しないため、アトリビューション分析をするためのデータとしては量がどうしても少なくなってしまい、アプリ経由が中心になるキャンペーンでは、貢献度分析の精度は低くなってしまいがちです。

そのため、コンバージョンしていない経路データなども加味しながら、推定モデルなどを駆使して分析を実行することになります。
※3PASベンダーの皆さまには、クロスデバイスの経路データの障壁を乗り越えてほしいと切に願っています!

3:DSPの統合(Demand-Side Platform Integration)

 

Attribution providers are going to begin integrating back into the DSPs (demand-side platforms) they are reporting off of, allowing users to see their attribution data directly alongside their DSP information.
It’s a very cool upgrade that will save many hours and headaches for an analyst looking to create reports that include attribution data

アトリビューションプロバイダは、ユーザーがDSPの情報と並行して直接アトリビューション分析のデータを見ることができるように、数あるDSPのデータ統合を進めている。
これが実現すれば、多くのアナリストを苦しめている長大な分析やレポート作成時間を削減することができる、とても素晴らしい発展になるだろう。

DSP側で 3PAS のデータを確認できれば、DSPの管理画面やレポートから確認できるデータ粒度に貢献度分析の視点も加味することができるため、これまで以上に精度の高い分析と、必要なアクションを導き出すことができると思います。

先ほどの「1:日々のデータ更新(Daily Data Updates)」も踏まえた上で、どういった頻度でメディアプランニング自体を PDCA として回していくかが、今後のアトリビューションマネジメントで問われてくるのではないかと思います。

4:時系列でのアトリビューション(Attribution Over Time)

 

Another one of my clients’ top wish list items is the ability to see the marketing of a given day attributed forward across the next few weeks. This can be really useful in analyzing a big campaign push or a home page takeover type of event.
Though this may be commonplace in old format attribution reports, it’s now going to make its way into the real-time arena, making it even easier for users to understand the latency and impact of their daily marketing.

顧客から頻繁に求められる要望の一つに、「ある日」に行なったマーケティングについて、それが数週間後の結果にどう貢献したのかを知ることができる機能がある。これがあれば、大々的なキャンペーンやトップページ買い切り広告(ホームページテイクオーバーと呼ばれる)のようなイベントを分析するときに非常に便利だ。
イベント分析はアトリビューションレポートの中では既に一般的ではあるが、今後はリアルタイムにできるようになっていき、ユーザーは日々のマーケティングの賞味期限やインパクトをより簡単に知ることができるようになるだろう

日本でいうと、Yahoo!Japan のトップページジャックや YouTube のマストヘッドのような、短い期間で大々的なキャンペーンを行なった場合、その日のアクティビティが後日どう貢献したのかをきちんと切り取って分析することは、現在でも非常に重要です。これがよりリアルタイムに分析できるようになるということですね。

3PASベンダーによっては、インタラクティブ性の高いリッチクリエイティブを活用して、マウスが触れた時間やギミックがあるアクションカウントなどもデータとして取得できますので、それぞれのアクションごとに貢献度の違いを日々更新されるデータをもとに分析していく、なども当たり前のようにできるようになっていくと思われます。

アトリビューション「運用」へ

アトリビューションという概念が認知されてから数年が経ちますが、Black Ink ROI が行なった「米国のマーケターが2016年に購入したいと考えるマーケティングテクノロジー」という調査でも、アトリビューション分析のソフトウェアは未だに上位にランクインしています。

2016年アトリビューションは5位
What’s Topping Marketing Managers’ 2016 Wish Lists? – eMarketer

認知のフェーズから実践のフェーズへと移ったアトリビューションは、引き続きマーケターにとって重要な活動であり、マーケティングテクノロジーの発展と伴走しながら、継続的に実施していくものだとではないでしょうか。

計測から得られる膨大な量のデータをどのように分析し、日々のキャンペーン運用に落としていくのか。それを助ける機能として、アトリビューションがあるのだと思います。

2016年もアトリビューション分野におけるテクノロジーの進化が期待されますが、ツールに過度に期待するのではなく、分析結果から得られた洞察を、確実にアクションに落とし込んでいく、この一見地味で、最も重要な活動の精度が、アトリビューションによって向上していくことを期待したいと思います!

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