Facebook広告運用最前線:アナグラム鈴木雄翔さんに聞く

Facebook広告運用最前線:アナグラム鈴木雄翔さんに聞く

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運用型広告のプロフェッショナル集団として、広告運用の代行やコンサルティング事業を行われているアナグラム株式会社でソーシャルメディア エキスパートとして活躍されている、鈴木雄翔(すずきゆうか)さんにお話を伺いました。

※インタビューは2015年12月に行われました。


中川:まずは簡単に鈴木さんの自己紹介をしていただけますか。

鈴木:アナグラムに入社して2年ほどで、現在はソーシャルメディア事業のリーダーとして従事しています。入社の経緯は、他社にてSEMコンサルタントとして広告運用を主に行っていたときにアナグラムを知り、運用型広告を専業とし、1社1社に深くコミットしてクライアントと一緒にビジネスの最大化を目指す姿勢に魅力を感じジョインしました。現在のメインの業務内容はソーシャルメディアの広告運用やプランニングです。全広告アカウントのマネジメント、社内への情報共有や教育も行っています。

Facebook、やっぱり強力です。

中川:SNSの広告を運用されていて、検索連動型広告など他の運用型広告と比べて面白かったり、ここが強いと感じるところはありますか?

鈴木:やはり、Facebook の精度の高いターゲティングではないでしょうか。実名登録前提のソーシャルメディアなので、ターゲットとするユーザーに合わせて訴求していけるところが強力です。一方で、ソーシャルメディアは個人間の交流が目的のサービスですから、その中で広告するというのは絶妙なバランスを求められます。難しくもあり面白いところでもありますね。

ソーシャルメディアの広告は、例えばFacebookでもユーザーは気に入らない広告は非表示にできますし、ユーザーが喜ばないような内容は厳しく評価されるじゃないですか。CPAなどに影響する要素でもあるので、広告運用では最も念頭に置いている部分ですね。

中川:仰る通りですね。クライアントからの引き合いも多いですか?

鈴木:着実に増えてきています。なんとなくやってみたい、という相談よりも、「こういった決まったユーザーにだけ広告してみたい」というご要望が多いですね。Facebookページの重要性などを知らなかったクライアントも、メリットをご理解いただけると積極的に動いてくださいます。

ページの運用はマンパワーが必要になりますので、クライアントにもご協力いただいています。いきなりやってくださいというのは無茶なので、こちらから御社のファン(=Facebookページにいいね!しているユーザー)に対してはこういった投稿を届けるといいですよ、と提案して始めやすいものから試してもらっています。ファンからの反応が格別にいいものがあったりして、この投稿はシリーズ化していこうといった動きになると嬉しいですね。

中川:英語に比べて日本語は硬い表現と柔らかい表現がはっきりしていて、個人的には日本語という言語の難しさも感じます。

鈴木:表現の仕方がユーザーとの壁を作る要因になるのかなと思っていて、敬語の方がよいページもありますが、大半はおそらく柔らかい表現の方がいいですね。ファンを考えたらこういう口調だったり、キャラクターとまではいきませんが、テイストを定めて投稿してもらうことはお伝えしています。

中川:個人的にずっと思っていることなんですが、Facebookってそもそも SNS ですし、広告だけでなんとかできるプラットフォームではないと思うんです。例えばですけど、主力製品が20代向けのものでプロモーションかけたけど全然売れなくて、でも30代のユーザーが意外と買ってくれているのが Facebook で明らかになって、30代向けの新製品を開発してもらって飛躍的に売れた、という経験があったんですが、そういうデータも精緻に取れるのはならではの強さだなと思います。

鈴木:そうですね。オークションのアルゴリズムなどは AdWords に似ているところもありますが、Facebook はユーザーが明確で、その人達にコミュニケーションを合わせていけるのが強いところだと私も思います。

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中川:クライアントはどういう業種が多いのでしょうか。

鈴木:弊社ではEコマース(物販)が多いですね。

中川:Eコマースのクライアントの場合、どういったアカウントの設計をされますか?

鈴木:過去の事例でいうと、Eコマースでかなりニッチな商材を扱うクライアントがいて、Facebook(広告)にて主に新規顧客の獲得をお望みでした。まずは商材を知ってもらい会員になってもらおうと戦略を立てていたのですが、会員にインセンティブを付けてリンク広告でオファーしても全くコンバージョンに結び付かなかったんです。

それで、まずはページのファンになってもらおうと Like Ad(※)を回して、クライアントにご協力いただいてその商材を知ってもらうような投稿を続けてもらい、しばらくした後に同じようなオファーやリターゲティングをしたところコンバージョンが出てきました。オーガニックの方からも獲得があったりして、勝ちパターンを見つけられたなと。気持ちよかったですね。

※Page post like ads(Facebookページのいいね!を獲得する広告フォーマット)

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画像:Facebook Ads Guide

中川:ハマると気持ちいいですよね!我々の仕事の醍醐味だと思います。Like Adは個人的にすごく好きなプロダクトなんですが、すぐ広告主の売上には直結しないじゃないですか。その辺りはどうクライアントに提案しましたか?

鈴木:クライアントには、Facebookでのナーチャリング、ファンからのエンゲージメントのインパクトについても説明した上で、投資の視点でトライさせてください、という風にご理解いただけるようにしています。

投稿を続けてもらうのもクライアントからすればかなりの労力ですし、信頼を築くことは大事かもしれませんね。Like Adの有意性が分かってからは、基本的には最初から実施を提案しています。

中川:それでクライアントが Like Ad に踏み切ってくれるのは鈴木さんの信頼があるからですね。

鈴木:いえいえ(笑)。最初はリターゲティングなどで成果を分かってもらって、でもリターゲティングで獲得できるのは元々サイト上で商材が知られているから、といったことにも触れていきます。

中川:取れるものからライトに始めて、そこからスケールできるようにしましょう、といった感じなんですね。

鈴木:はい。あとは目標CPAよりも低めに獲得ができれば、余剰予算分でトライさせてもらったりとか。
中川:なるほど。Eコマースは商材的に Facebook とマッチしますよね。これからBuyボタン(※)なども出てきて、Facebookからわざわざウェブに行かなくてもクレジットカードさえ登録しておけば即購入できますし。

※ Buyボタンの関連記事は こちら

どうクリエイティブと向き合うか

中川:Facebookの広告だと、”クリエイティブが大事“だと言われていますが、鈴木さんはどう心がけてらっしゃいますか?

鈴木:クライアントからはGDNで使用しているバナーでお願いします、というような依頼もあったりするんですがそのまま流用はできませんので、Facebook用に独自に用意しています。画像はまず、 Facebookが広告用に無料提供しているShutterstockのものを使用して、成果がいい画像の傾向を捉えていくことが多いです。他は有料・無料問わず素材サイトや Flickrからであったり、クライアントのランディングページや動画から素材を切り抜いてきたりと色々です。

中川:有料で購入されることもあるんですね。

鈴木:比率としては少ないですがありますね。クライアントから頂いたものだけでは数量的にきびしいので、基本的にこちらでも用意していきます。あとは素材サイトなどから取得したものを切り取ったり、加工もしますね。テキストをちょっと入れたり、Instagramであるようなフィルタをかけて雰囲気を変えてみたり。人物の画像1つでも顔を映す映さない、テキスト情報あるなしで全く成果が変わったりするので。Facebook広告ってクリエイティブのPDCAをすごく早く回さないといけなくてで、ここはリスティング広告とは大違いですね。GDNだとクリエイティブを毎週変えることってなかなかないじゃないですか。Facebook広告だと配信して数時間でABテストの判断がつくことが普通にあるので…。それと、特に最近、投稿や広告を非表示にできることが広まったのか、より非表示にされやすくなってるかなと感じてます。中川さんはどうですか?

中川:今比較的規模大規模なアカウントを運用していて、お願いすれば内製もできるんですが、あえて Shutterstock を使っています。CTRも6%以上出ていたり、ネガティブフィードバックも全部「低」なんですよ。そのクライアントの場合はターゲットが狭くて、フリークエンシーでいうともう5、6回出るんですが、ゼロなんです。

鈴木:さっき言ったニッチ商材もまさにそれです。びっくりするくらい評価がいいんですよ。どれがハマってどれがハマらないかって、何となく感覚的に見当のつくものはあってもやっぱり配信してみないと分からないことが多々ありますよね。そんな中で一つのクリエイティブを作るのに念入りに時間をかけるのは Facebook の場合はどうなんだろうと。とりあえず試してみるっていうと仮説立てが甘いみたいですが、可能性を感じれば試すことは大事だと思います。仮説が少し浅いにしても、これとこれがいいかなと出してみて、その結果でまた仮説を導き出したりすることはよくあります。

中川:写真とイラストタッチの2軸で、表現がかなり柔らかいとか、カラートーンが青い赤いとか、四象限で出して良いものを派生させていく、みたいなA/Bテストをどんどん早く回していくのが Facebook だと大事ですね。

鈴木:反応が早い分、そこが面白さでもあります。悪い評価はすぐに広告にフィードバックされますからね。すぐ返ってきてしまうんですけど、ユーザーから受け入れられない広告にコストを使わなくて済むようになるのがメリットとも考えられます。。あと、僕はあえて「詳しくはこちら」とかのCTAボタンを外してみたりします。最近の試みなんですが、それでCTRが良くなることもあります。

中川:そうですか。私もあえてリンクの広告ではなくて、写真のテキストを1行程度に短くして入れて、2行目で「詳しくはこちら ? http://bit.ly/◯◯」(※)などにすることもあるのですが、CTRはそっちの方が良いケースもあります。仕様が変わるのでコールトゥアクションボタンはつけられなくなりますが。リンクのサムネイルよりも写真の方が大きいので、画面の占有率は間違いなく高いです。URLもテキストベースですが青字になるので、視認性は悪くないと思っています。

※参考画像:
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鈴木:Facebookのプラットフォーム自体も変わり続けていますし、ユーザーとその意識も変わっていくと思います。なので広告に決まった形を定めないで、常に試し続けるのがかなり大事かもしれないですね。広告も多いときで4〜5本広告セットでアクティブになってたりします。

中川:20本くらい入稿しても、効果の良いものに寄っていって実質動くのは3本くらいですよね。

鈴木:そうですね。日々の運用で見ている指標としてはCTR、フリークエンシー、関連度スコア、ポジティブとネガティブのフィードバックです。それで入札は1日で一定のコンバージョン数が見込めるものはoCPMで自動入札。これがある程度運用の型になっています。

中川:CPC入札で運用されることはありますか?私は今デイリーユニークリーチも使っているんですが。

鈴木:コンバージョン数が多く見込めない、ターゲットを絞らないといけない場合などはCPC入札で運用しています。当然 oCPM よりフリークエンシーは高くなるので、使う時は注意して運用します。デイリーユニークリーチは、旅行や BtoBなどリードタイムが長い商材だったり、訴求の尖ったクリエイティブなどで非表示の危機感が強いものがあると私も使います。

アプリとFacebookの親和性の高さ

中川:今はモバイルのニュースフィードがメインのプレースメントになるかと思いますが、オーディエンスネットワークは使っていますか?

鈴木:一部の商材では使いますが、相性の良し悪しがありますね。アプリインストール広告だと良い成果であることが多いですね。今後モバイルWEBにも配信面が拡張されるので、期待しているところです。

中川:アプリインストールの広告で Facebook 以外にも出稿されていますか?

鈴木:しています。AdWords など他のチャネルではうまくいかないことがありますが、Facebook広告ですと安定して好調ですね。特に動画。CTRでいうと静止画の方が良かったりもしますが、インストールに結び付きやすいというと動画ですね。内容をプレ表示して訴求できるところが強いと思います。

中川:日本の広告主は利用率が低いと感じますが、インストール後のモバイルアプリエンゲージメント広告もありますしね。海外のアプリなんかはかなり出てきます。

鈴木:アプリエンゲージメント広告はまだ試したことがないので、気になってました。アプリをインストールしたユーザーだけに広告表示されるんですよね。

中川:そうです。SDKでインストール状況を判別できます。それも、アプリの最初のチュートリアルが終わった、どこまで進んでいる、週何回ログインする、たくさんプレイするけど課金しないとかが、全て Analytics for Apps で無料でトラックできるんです。セグメントをかなり柔軟に作れるので、クリエイティブも出し分けられますし、もちろんディープリンク対応なのでタップ後のユーザーの工数も減らせる、なかなか良いプロダクトだと思います。

鈴木:セールの情報とか、ユーザー体験を損ねにくい企画と合わせてきちんと設計をして運用をすれば、かなり効果的でしょうね。
あと、アプリの広告でもカルーセルが使えるのでけっこう使っています。メインではないですが、割合としては半々ぐらい。訴求や表現の幅も広げられるのが魅力ですね。物だったらその実際の使い方だったり、ストーリーテリングだったりいろいろできます。

中川:動画にも対応しましたし、ユーザーにとっても良いですよね。

鈴木:リンク先が一緒でもいいわけですからね。ハードルが高いように見えてそうでもないので。あと、スライドショー動画も最近積極的に試しています。これ Like Ad でも使えるんですよ。リンク広告ではカルーセルほどのインパクトはなかなか出せないですが、うまく作ることができれば十分効果的ですね。どんなクリエイティブを作るにしても、ターゲットとするユーザーがどう感じるか、受け取るかと向き合い続けることが大事だと思います。

中川:それを徹底的にやらないと見えてこないですよね。Facebook は広告を出すための一つのメディアというより、Facebook という独自ネットワークにもう一つ自社のウェブサイトを作るという感覚でやらないと。

鈴木:第3のウェブサイトっていいですね。それなりのビジネス規模にも関わらずソーシャルメディア担当を未だに用意されてなく、その承認も下りないというクライアントもいらっしゃいます。人員やリソースの問題だったりもしますが、一番はメリットが伝わっていないというのがあるので、自分が成功事例をつくってその認識を変えることに貢献していきたいですね。

中川:そうですね。それでは最後に、今後の展望などありましたら教えて下さい。

鈴木:弊社はまだまだSEMのブランド色が強いので、ソーシャルメディアに関しても同様の信用と存在感を出せるよう事業を大きくしていきたいですね。個人としては、運用型広告のみならず、これから多領域に広がるデジタルマーケティングの世界でも最前線に居続け、必要とされる人材でありたいと思います。

中川:素晴らしいですね!本日はありがとうございました!

《対談者プロフィール》
アナグラム株式会社
ソーシャルメディア エキスパート 鈴木雄翔(すずき ゆうか)

学生時からSEMに惹かれ、運用型広告を扱う企業にて多様なビジネスのコンサルティングを経験。2014年からアナグラムに在籍。運用型広告全般に習熟し、現在はリスティング広告だけでなくソーシャルメディアの広告運用やプランニングをメインに行っている。

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