Instagram広告は、2015年8月に広告APIが公開され、同10月からは日本国内でもセルフサービス方式での広告配信が可能になりました。Facebookのパワーエディタのみならず認定ベンダー経由でも広告が配信できるようになったことで、企業の広告出稿意欲は徐々に加熱しています。
月間アクティブユーザー数(MAU)が急増し、2015年9月には全世界で4億人を突破(日本は2015年6月末時点で810万人)するなど、急成長を続けている Instagram ですが、親会社の Facebook の決算発表では広告売上などの個別実績は公表されていないため、相場感がなかなか掴みにくいのもまた事実です。
そこで、今回は幾つかの海外企業のリサーチ資料をみながら、Instagram広告のベンチマークを探っていきたいと思います。
Instagramの平均CPMは6ドル前後
2016年1月25日、Instagram の認定広告パートナーである brandnetworks は、自社で配信しているInstagram広告の配信結果をインフォグラフィックで公開しています。
リンク:Instagram Advertising Research Report: Key Findings from Brand Networks Data [Infographic]
以下は Instagram広告のインプレッション数の推移を表したグラフですが、8月のAPI開放以降、急激にインプレッションが増加していることが分かります。8月は500万インプレッションに達した日が1日もありませんが、12月には3,000万インプレッションを超える日も多く、月ごとにまとめると13倍もの成長をしているようです。
上記はあくまで認定パートナー1社の実績なので、Instagram全体の数値を表したものではないことに注意が必要ですが、セルフサービス方式で広告が出せるようになってからの過熱感は感じ取れるのではないでしょうか。
続いて、同期間の平均の CPM を表したのが上の図です。インプレッションは大きく増えているものの、平均の CPM は6ドル前後で安定しているように見えます。8月はまだ開始直後でインプレッションが少ないため CPM が大きく乱高下していますが、9月以降は徐々に収斂され、11月末のハイシーズンにかけて徐々に引き上がり、セール時期のピークを過ぎたあたりで落ち始め、そのまま6ドル前後で落ち着いています。
この「6ドル」という水準はAPI開放以前から指摘されています。Salesforceによると、Instagram広告がAPIを開放する前、ベータで主要6カ国(アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリア)に向けて配信されていた2015年第1四半期の平均CPM は 6.29ドル だったようです。
参考:An Early Look at Instagram Advertising Performance ? Medium
これは、同時期のFacebook広告の平均CPM 3.72ドル を大きく上回る数値であり、Instagram の CPM の水準の高さを裏付けています。
一方で、「Facebook広告と Instagram広告の実績は拮抗している」と報告されていた Nanigans のレポートのような例もあるため、業種やアカウントのパフォーマンス次第では Facebook広告と比べて単価が高いとは必ずしも言えません。ただ、やはりここでも平均CPMは約6ドル(5.78ドル)だと報告されています。どうやら、「6ドル」というのはInstagram広告を考える上ではベンチマークになる CPM のようです。
参考:Instagram Ad Performance Similar to Facebook (Report)
ただし、日本はもっと高いか
6ドルは日本円で約700円(1ドル=117円換算)ですが、Facebook広告や Instagram広告に慣れている広告運用者からすると、「え…そんなもん?」と感じるかもしれません。
例えば、Instagramで一番コアなユーザーグループだと思われる20代女性をターゲットに設定して推奨CPMを確認すると、2016年1月28日時点での推奨額は1,916円(アッパーは3,210円)と出ます。た、高い…。
一般に、1,000円を超えるCPMは、ラグジュアリーブランド向けのネットワークなど一部のメディアを除けば、ディスプレイ広告としてはかなり高い水準にあると思います。ただ、現在の日本のFacebook広告やInstagram広告アカウントの水準からすると、700円よりもむしろ、1,916円の方が広告主にはリアリティのある数字かもしれません。
上記は2015年第1四半期の Salesforce Advertising Index にある Facebookのモバイルアプリインストール広告の CPM/CPI を表した図ですが、日本は当時から世界で一番 CPM が高い国になっています。(9.64ドル=約1,130円)
先述のデータから、Instagram広告の CPM は Facebook広告と同じかそれより高い相場になっているはずですので、普通に考えればInstagram広告の平均CPMは1,000円を超えるはずです。FacebookやInstagramのユーザーは伸びているとはいえ、日本の場合はターゲットになるユーザー人口に対して広告主の数が多い、ということなのかもしれません。
場所が混んでいる以上、CPM の相場が高いのは仕方ありませんが、だからこそ、ソーシャル・ネットワークを広告媒体として捉えるのではなく、いかに「場」の TPO に合ったコミュニケーションを心掛けられるかで、ユーザーの支持を得られるかどうか、結果として見合う成果が得られるかどうかが決まるのだと思います。