2015年11月11日、英国の動画アドテクノロジー企業アンルーリー(Unruly)は、視聴者の何パーセントが動画広告をソーシャルメディアでシェアするのか、動画配信前に予測を可能とするツール「シェアランク(ShareRank™)」を日本での提供を開始しました。
リンク:プレスリリース(PDF):動画アドテクノロジーのアンルーリー、視聴者の動画広告への感情反応を測るアルゴリズムツール“ShareRank™”提供開始
同日、ロンチイベントが東京の英国大使館で開催されたので、その参加報告も兼ねて解説します。
冒頭、アンルーリー 共同 CEO 兼創業者、スコット・ボタン氏がアンルーリーの会社概要、同社のテクノロジーができた背景、日本進出の理由、についてプレゼンテーションを行いました。
同社はオープンウェブにおける動画の視聴、トラッキング、シェア獲得を推進するアドテクノロジー企業として2006年に設立し、現在12カ国15拠点に200名の社員がいます。リージョナル本部は、ロンドン、ニューヨーク、シンガポール。オーディエンスの感情データや、ユーザ (=視聴者)視点に立った動画フォーマットを用いて、視聴者とのエンゲージメント、広告効果、パブリッシャーの収益を最大化することを目指している企業です。「Ad Age」が選ぶ広告主企業100社のうち90%がアンルーリーを利用しているとしています。また、2015年9月に、ニューズ・コーポレーションにより買収されたことも報道されました。
同社のテクノロジーが生まれた、いくつかの背景についての説明がありました。
まず一つ目は、?旧来の広告手法は効率か?下か?ってきた点。フラングメンテーションにより、オーテ?ィエンスか?分散。例えば、米国においてもテレビ視聴者は分散し、減少。また、テレビ広告への注目度も下降しています。一方で、デジタル広告への注目度も急落している現状があります。
興味深かったのは、オーディエンスがオープンウェブでも分散しているという点でした。図にあるように、動画市場をYouTubeとそれ以外(オープンウェブ)としていますが、YouTubeも決して成長していないわけではないのですが、オープンウェブでの視聴が伸びているため、分散が拡大しているとのことでした。
二つ目は、スヒ?ート?か?速く、予測か?難しいソーシャルメテ?ィアという点。この説明に「Uncertainty」という言葉を何度か繰り返し使っていました。図のように、2015年には全体の44%のシェアが、最初の3日間に集中している、つまり短期決戦で、シェアされやすい動画かの見極めが極めて重要と説明していました。
三つ目は、フ?ロク?ラマティック広告か?企業のフ?ラント?を毀損する可能性がある点。これを防ぐための新しい基準は、また?定まっていません。しかしながら、ヒ?ューアヒ?リティか?現在は広告主の最重要課題であるとボタン氏は語っています。動画広告の61%が、実際には見られていないという報告があります(インテク?ラル・アト?・サイエンス:2015年2月)。
つまり、旧来の広告の効果が落ち、ソーシャルシェアをした動画が重要なのですが、ソーシャルも動画も予測が難しいというような背景下で生まれたのがシェアランクだとしています。シェアランクは、2013年1月に米国、英国でサービスが開始されました。動画と消費者を結ぶ要素が何であるかを識別し、評価分析するツールとして誕生しましたが、今回、アルゴリズムを日本市場用に開発し、日本国内における消費者の動画への心理的反応を測ることが可能となりました。ボタン氏は、日本の動画におけるシェアランクの予測の精度は約8割程と述べています。
シェアランクは、2兆ビューの動画視聴データと40万の消費者データを基にしています。動画に関する膨大なデータを蓄積、分析した上で評価に活かしているわけですが、トップファクターは2つで、1つは「心理的反応」、もう一つは「シェアするモチベーション」としています。
心理的反応は、「温かみ」「ハッピー」のようなエモーショナル反応や「ナレッジ」「ショック」「怒り」「高ぶり」など。日本では、「温かみ」を感じさせる動画が最もシェアされています。続いて、「インスバイアされる」、「嬉しい」と感じさせる動画がシェアされています。対する英国と米国では、「嬉しい」、「愉快」が上位の心理要素としています。
シェアするモチベーションには、「パッションの共有」や「トレンドの共有」、「人のためになる」「自己表現」、「他の人の意見聞きたい」などになります。これにおいても日本の上位は「他の人の意見聞きたい」、「同し?興味のある人と分かち合いたい」、「人のためになる」であるとしています。
シェアランクアルゴリズムの要素は、
- Unruly Analyticsからのリアルタイムに5000ブランドのトラッキングデータ
- 消費者データ:パネル調査で集積した、膨大な数の消費者の動画への反応データ。感情反応や動画をシェアしたい理由などを計測したもの。
- 学術研究機関による調査:南オーストラリア大学、カレン・ネルソンフィールド博士による、動画のシェアとその要因に関する研究など、世界の研究者による研究調査。
で構成されています。
「シェアされやすいコンテンツ」、「ふさわしいオーディエンスに見せる」、「ブランドと密接に関わりのある内容」を兼ね備えたソーシャルスイートスポットを見出し、「価値ある口コミ」を創出するのがシェアランクのゴールであるとしています。
ペット用品メーカーであるネスレ ピュリーナ社の動画「Puppyhood」の事例を取り上げていました。
シェアランクを使った評価の結果、1)主な感情反応は全パネル・グループを通じて「ハッピー」、「温かみ」2)本動画は強い感情反応がシェアを喚起。3)16-24Fか?他のク?ルーフ?より強く「ハッヒ?ー」、35-54Fの「インスハ?イアされる」は弱い、という結果でした。また、シーン別感情反応も以下のような結果を見ることができるようです。
今回の提供開始に関する発表はシェアランクについてでしたが、アンルーリーはその他に大きく3つのプロダクトを持っており、一部は日本市場でのサービス開始が待たれるところです。
一つ目は、動画解析ツールのUnruly Analytics。Facebook、Twitter、ソーシャルウェブにおいての各種指標の測定、グローバル上位5000ブランド企業および選択した競合企業の動画に対して自社動画のパフォーマンスを比較可能。また、150億のデータポイントを提供します。
二つ目は、アンルーリーの動画配信プラットフォームUnruly Activate。現在日本の4,500万ユニークビジター(comScore, 2015年7月)に対しての動画広告配信ができるとしています。
三つ目は、サプライ・サイド・プラットフォーム(SSP)であるUnrulyX。UnrulyXは、デスクトップのみならず、モバイル、タブレットなどモバイルデバイス対応。大規模にネイティブ広告の配信ができ、RTBを介して買い付けたプレミアム動画インプレッションについてビューアビリティを100%保証するとしています。
東京オフィスは2015年10月に開設。代表取締役には、元Facebook Japanの執行役員であった香川晴代氏が就任しています。なぜ今、日本に上陸?という点に関しては、日本動画市場の全体として今後成長の余地が大きいという点を挙げていました。
もう少し掘り下げてみると、日本市場にはいくつかのポテンシャルがあるとしています:
- ネットユーザ1000人あたりの企業動画の数は、世界平均より少ない
- ビュー数、シェア数、シェア率は英国と比べて低い
- 日本人の感情反応は強い→シェアする??????可能性高い
- ブランド想起が低い傾向
- 購入意欲は低い傾向
と、改善できる箇所が多いというのが理由として挙げられるようです。
同社が日本市場に貢献できることとしては、
- シェアランクの活用で、質の高いコンテンツ制作
- トップクラスのブランド保護
- アウトストリーム・フォーマットで、新たなプレミアム広告在庫創出
としています。
最後に、企業が動画を展開する上での提案を6つ挙げています(Copyright 2012-2015 Unruly Group):
- シェアされやすいヒーローコンテンツを作り、競争を勝ち抜く
- ヒーローコンテンツのシェア拡大には、配信費に投資
- 日本市場向けにコンテンツを制作する。海外向けに作った動画コンテンツの再利用は効かない
- コンテンツ作成時に、フ?ラント?メッセーシ?、価値を最もうまく伝える心理反応 を選ふ?
- 日本人独特の文化から、視聴者に「動画をシェアしたい」と思ってもらうのは難しい。日本人か?シェアしたい動機の最多て?ある「他の人の意見を聞きたい」「同し?興味関心持つ。「人にシェアしたい」「商品をおすすめしたい」なと?にフォーカス
- フ?ラント?とストーリーを統合し、フ?ラント?想起と購入意向を高める。
当日のロンチイベントにも広告代理店、コンサルティング会社、メディア会社が多数参加し、日本市場における期待の高さを感じました。
ナショナルクライアント向けのソリューションかと思いますが、間に入る広告代理店や制作会社も含め、アンルーリーで得られるデータを活用し、動画制作と動画広告運用において、PDCAサイクルに乗せることができるかが当然キーになるかと思いました。また、広告配信においてはbuy-sideもsell-sideにおいてもプレミアムパートナーの開拓と育成が重要かと感じました。
アンルーリーへの問い合わせ先はjapan@unrulygroup.comまで。