10月1日に開催されたFeedTechから2週間ほど過ぎました。アタラからは岡田と私杉原が最初のセッションのモデレーターとパネリストを務めさせていただきました。セッション内容を中心としたまとめ(データフィードの祭典「FeedTech 2015」を終えて)を岡田がとてもうまくまとめてくれていると思います。今後のデジタルマーケティングに対する取り組み方を考える上で、重要なポイントが示唆されています。参加された方も、今回はできなかった方もぜひご一読いただきたい内容かと思います。
一方で、個人レベルできちんと振り返りができていなかったので、少し思うところについて書いておこうと思います。
日本では2000年初頭から
まず、セッションでも話しましたが、デジタル広告でデータフィードが活用されるようになったのは2000年初頭だと考えています。私は以前はIT業界で一時期ETL(Extract、Transform、Load)やEAI(エンタープライズアプリケーション統合)などの企業向けソフトウェアに関わっていたのですが、金融業界、通信業界のミッションクリティカル系システムをいかにリアルタイムにシステム/データ連携するか、というようなプロジェクトを垣間見てきました。インターネット広告業界に転じて、もっとシンブルに商品DBのデータからCSV/FTPでデータフィードを構築し、リスティング広告のキャンペーンを自動入稿/入札管理という話があがった際、広告業界のIT活用はまだ黎明期。やれることはまだまだ多いなと思いました。とてもやりがいを感じたのを憶えています。
それから今に至るまでデータフィードを使ったデジタルマーケティングについては取り組んできましたが、5年前くらいまでは、商品点数の多い/商品情報の更新頻度が高い業種(EC、旅行、不動産など)の先進企業の一部が効率化に向けて取り組む施策の一つでした。いい取り組みなんだけど、正直なところ地味で目立たない。メインストリームには程遠い。そんな存在。
フラグメンテーション、Criteoをきっかけに普及
それから情報大爆発、スマホを中心にしたデバイス百花繚乱状況でフラグメンテーション現象が顕著になったり、彗星の如く現れダイナミックリターゲティングという斬新なソリューションで業界を席巻したCriteoの出現などが大きなドライバーになったかと思いますが、あれよあれよという間にデータフィード活用型の広告は一つの分野を形成していきました。
2000年初頭に広告主企業に商品データをデータフィードで出して欲しいとお願いしても、なかなか進まなかった会社も多かったことを記憶しています。商品DBをマーケティングで外部利用するという概念をマーケッターに理解してもらう点、システム部門に動いてもらうための組織的な壁、そもそものデータベースや中身のデータの設計の問題など、いろいろでした。ですので、これも正直なところ、こんなに早く普及するとは実は信じてませんでした。これは市場を推進したCriteoさん、Googleさんなどプラットフォーム企業や、フィードフォースさんはじめデータフィード最適化サービスを展開されているサービスプロバイダーさんの努力の賜物かと思います。
その中でCriteoさん、Yahoo!さん、Facebookさん、Googleさんといった業界の主要プラットフォーマー、広告主、代理店が一同に会して各社のソリューションや展望についてお披露目する場としてFeedTechが開催されたのは15年前の状況から考えると隔世の感があります。岡田もまとめで書いていたように「世界初」の画期的なイベントだと思います。
データフィードマーケティングはフェーズ2に突入
このFeedTech2015の開催をもって、日本におけるデータフィードマーケティングのフェーズ1は完了し、新たなフェーズに突入したと思っています。
プラットフォーマーはデータフィードを活用したソリューションを今後も出してくると思われます。近々では「Buyボタン」が控えています。モバイルの爆発的な利用が進むにつれ、広告キャンペーンの効果が低下していくのを食い止めたいプラットフォーマーの思惑があり、各社が注力しています。企業によるインターネット上での商品・サービスの販売は、自社ECサイトと主要ECプラットフォームのみにフォーカスすればよい時代は終わったかと思います。まさに”product everywhere”を実現しないと、ビジネスを取りこぼす確率がどんどん上がっていく状況になる可能性があります。
中間に位置するデータフィード最適化サービスはますます接続先も増えるでしょう。セッションでも語りましたが、単なる「データ変換」・「データ送受信」的な機能から、より散らばった在庫情報を管理したり、中間プロバイダーとしてもっとインテリジェントに商品DBを橋渡しするようになると思います。
商品データベースを保有する広告主企業は、現有の商品データをとりあえず活用する、というステージからマーケティング指向のデータ、データベース、データフィードを、いかに構築・活用できるか、が今後求められるかと思います。一番よいデータは中間処理を必要としないデータだと思います。中間処理を必要としないようにするには、情報構造を理解し、メディアやプラットフォームごとに最適なデータを迅速に準備することになります。「マーケティングに必要なデータは?」を突き止め、その視点でデータベースを設計し、改良できる。そんな柔軟なシステムと体制を企業は持ち合わせる必要があります。
必要となる人のスキルも変わりますね。マーケティングとITの中間、ハイブリッドな存在。プラットフォームに求められるデータ要件から自社のデータベース、データを逆に設計できる人材。データフィードを活用したマーケティングについて、システム部門と共通言語で話せる人材。広告・マーケティング業界にIT業界からもっと人が流入すれば活躍の場も多いと思いますし、広告・マーケティング業界にいる人も、ITスキルをもう一段上げる必要が出てきたと思います。
来年もデータフィードを活用したマーケティングに関しては大きな動きが予想されます。データフィードを通じて、運用型広告、業界、企業、人がどのように変わっていくのか、今後も楽しみです。