目次
- 1 The Trade Deskに入るまでの経歴
- 2 電通を飛び出してThe Trade Deskへ
- 3 急成長しているThe Trade Desk
- 4 The Trade Deskは広告主と直接取引しない
- 5 透明性を高め、広告会社、トレーディングデスクと一緒に業界を育てていく
- 6 運用者に支持される「透明性」
- 7 The Trade Desk、2つの魅力
- 8 アドグループは1つでいい?
- 9 運用者の負担を軽減するレポート
- 10 ピボットテーブルをダウンロードできる
- 11 広告会社・トレーディングデスクの運用者を育てる
- 12 パブリッシャー・マネジメント・プラットフォーム
- 13 プライベートマーケットプレイスの未来
The Trade Deskに入るまでの経歴
有園:2014年7月からThe Trade Deskの日本のCountry Managerである新谷哲也さんに、お話を伺います。私と新谷さんは10年くらいの付き合いです。初めてお会いしたのは、新谷さんが電通にいらっしゃった時でした。
新谷:そうですね。当時はリスティング広告を担当しておりました。有園さんとお会いしてしばらくして株式会社24-7Search(現株式会社DAサーチ&リンク)という会社に出向しました。
有園:新谷さんは、これまでずっと、サーチに携わってこられたというイメージを持っています。
新谷:有園さんは、そのようなイメージを持っていらっしゃるわけですね。
有園:サーチを通してお仕事をさせていただいてきたので。DAサーチ&リンクの後は、電通のDB局に戻られたわけですが、当時からディスプレイ広告のお仕事をされていらしたのでしょうか。
新谷:遡って話をしますと、私は1999年にインターネット広告の業界に入ったんですが、最初はAdSmart Networkというアドネットワークを運営・販売している会社でした。行動ターゲティングができるアドネットワークだったのですが、なかなか啓蒙が難しくて効果測定ツールを自社開発してサービス提供したりもしていました。まだ、効果測定ツールがなかった時代でこちらも啓蒙が難しかったんですが、競合サービスが少なかったこともありそこそこ広告会社に使っていただけました。
有園:それは、電通に入る前ですか。
新谷:電通に入る前の前の会社です。住友商事が出資していたエンゲージという会社におりました。その後、電通、博報堂、アサツーディ・ケイ、DAC、CCI、ビデオリサーチが出資するアドソリューションエックスという会社に入りまして、第三者配信、いまでいうアトリビューション、第三者配信サーバーを使ってのキャンペーン効果測定の事業に携わりました。いまではアトリビューションは有園さんのおかげで広く使われていますが当時はまだまだ早くってこれまた啓蒙が難しかったですね。その後、電通へ入り、最初はインターネット・メディア部にいました。トラッキングツールや第三者配信などのアドテクノロジー関連サービスはもちろんのこと媒体社も担当していました。2005年に24/7RealMediaのDecideDNAという 検索連動型広告の自動入札ツールに出会って24-7Searchの設立に関わり、そのままサーチの担当になりました。そこから約5年間、サーチを担当することになり、そこで有園さんと出会ったわけですね。当時、有園さんとは検索とマス連動のキャンペーンをどのように成功へ導くか、大手広告主に検索を広げるにはどうしたらいいかを、有園さんや競合会社の博報堂とも協力しながらやりましたね。
有園:お世話になりました。
新谷:2010年の秋に電通に戻ってからは、主に、グループ会社のお手伝いをしていました。投資業務のサポートをしたりグループ会社のサポートをしたり。
電通を飛び出してThe Trade Deskへ
有園:そういう経歴の新谷さんがtheThe Trade Deskに興味を持って電通を飛び出し、The Trade Deskの日本の代表に就かれたのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
新谷:お話しできることは二つあります。まず、10年以上前からトラッキングツールや第三者配信などのデジタル広告の効果測定、サーチを担当してからも効果改善の業務など、ずっとデジタル広告の最適化に携わってきました。皆さんもご存知のとおり、いまはインターネット広告のプログラマティックな取引が増えてきており、私の経験が生かせるのではないかと思ったからです。もう一つは、これまでの経験をもっと業界の役に立てたいと思ったからです。自分がプログラマティック取引のど真ん中で仕事をすることで、業界に何か寄与できるのではないかと。
有園:なるほど。なぜ、theThe Trade Deskだったのでしょうか。The Trade Deskの魅力といいますか、新谷さんはどのように考えているのでしょうか。
新谷:入社を決めるときにアメリカの本社へ行き、具体的にはお話できませんが、そこで話したことが非常に僕にとって良いミーティングでした。
有園:本社はどちらですか。
新谷:カリフォルニア州のベンチュラです。
有園:どっちかというと、カリフォルニア州の南の方ですね。
新谷:ロサンゼルスから北に100キロ程行った海沿いの街です。
有園:ワンノーワン(101)沿いですか。
新谷:そうです。パタゴニアの本社があるところだそうです。
有園:ぶっちゃけ、何にもない所ですよね(笑)
新谷:そうですね。(笑)普段はCCOとCOOがニューヨークにいるんですが私が本社に行った時に幸運にもマネジメントが全員本社におりまして、会社の優位性や考え方、雰囲気などを熱く語ってくれなした。また彼らと世代が一緒で、やってきたことも似通っていていました。
有園:意気投合したのでしょうか。
新谷:そのとおりです。志を持っていて、社風もいい、人もいい、勢いのある会社だなと思いました。
急成長しているThe Trade Desk
有園:少し意外な回答をいただいた感じです。
私が知る限り、The Trade Deskはアメリカで急成長している会社です。株式公開している会社ではないので具体的な数字は表に出ていませんが、聞いている話では伸びていると。フォーブス(Forbes)でも注目されて記事になっていたとか。
新谷:フォーブスのAmerica’s Most Promising Companies Listという、現在、急成長中の会社のランキングがあって、ことしの1月に9位にランキングされました。グローバルでは、2014年末で約180名のスタッフを抱える会社です。
有園:設立は何年ですか
新谷:2009年です。
有園:5年くらいでフォーブスにランキングされる会社になったわけですね。ワールドワイドでオフィスはアメリカ、日本の他は、どこにあるんですか。
新谷:全部で14か所あります。アメリカ以外の事務所がある国は、イギリス、ドイツ、シンガポール、オーストラリア、韓国、日本、そしてブラジルです。
有園:意外とアジアに持っていますよね。オーストラリアもアジアですよね。結構、アジア重視できているのかなと思っているのですか。
新谷:私たちの重要な取引先は、いわゆるグローバルエージェンシーです。彼らの要求、ニーズに応えることが僕らの戦略の一つです。アジアに注力しているというよりは、グローバルの大手のグローバルエージェンシーの要求、ニーズに応えた結果と考えて良いのではないでしょうか。
The Trade Deskは広告主と直接取引しない
有園:いま重要な話が出ました。グローバルエージェンシーのニーズに応えた結果ということですが、ビジネスモデルとして、広告会社もしくはトレーディングデスクを顧客としていて広告主とは直接取引しないのでしょうか。
新谷:広告主とのダイレクトな取引はグローバルで一件もありません。
有園:一件もないって、すごいですね。その理由はなんですか。
透明性を高め、広告会社、トレーディングデスクと一緒に業界を育てていく
新谷:我々の創業者であるジェフ・グリーン(Jeff Green)は、2004年にAdECNというアドエクスチェンジを設立しました。その後その会社は2007年にマイクロソフトに買収されJeffもしばらくマイクロソフトにいたのですが、2009年にThe Trade Deskを設立しました。SSPとDSPのバイサイドとセルサイドの両方を、彼は経験しています。彼が常日頃言っているのが「透明性を高めなければならない」ということです。透明性が高い情報を広告会社やトレーディングデスクへご提供し、一緒になって広告主の効果を高めていく、ということです。広告主とダイレクトにやるのではなく、広告会社、トレーディングデスクの皆様と一緒に業界を育てていくんだという戦略になっていると。
有園:なるほど。
運用者に支持される「透明性」
有園:私自身、オーバーチュアやグーグルでは自分で運用もしていました。主に、検索連動型広告でしたが、アドネットワーク、GDN(グーグル・ディスプレイ・ネットワーク)といった運用もしていました。広告主というよりも、運用する立場として主に広告会社やトレーディングデスクといわれる人たちは運用するからこそ、透明性の高いデータが事細かに欲しくなります。少し入札金額を上げた、ターゲティングを変えた、配信時間帯を変えたといった、ちょっとしたことがどのようにコンバージョンのレートに影響しているのか、CTRを上げているのか、効果があったのか、効果がなかったのか、すごく気になるわけです。広告主に対して失礼な発言かもしれませんが、広告主はご自身では運用しないケースが多いので、そんな細かい話や過程はあんまり関係ないじゃないですか。一生懸命頑張っていても、それでCPAが改善されたり、コンバージョンの数が増えたりしない限りは、あんまり興味を持っていただけないというか。そういう意味では、御社がどういう経緯で広告会社やトレーディングデスクとしかビジネスをしない、取引をしないのか、フィロソフィーとかがあると思うのですが、透明性が高いというサービスモデルを受け入れやすいのは、運用をきちんとやる人たちなんだろうなって。
新谷:そうですね。
有園:「うち透明性が高いですよ」って広告主に直接いっても「全部自動でブラックボックスでもいいから効果が高ければいいんだよ」っていう担当者も、たぶんいると思うんですよね。でも、The Trade Deskって社名についているくらいなので、The Trade Deskって運用する人たちの総称だから、その人たちに向けてきっちり下支えをするというか「我々は運用する人たちの味方ですよ」というのが社名になっているんだなって僕は感じています。それが、今おっしゃっている透明性ってことなのかなと。その社名のフィロソフィーを、具体的に何をやってくれるのと言われたら「透明性です」と。データの透明性やロジックの透明性といったことなのではないかと勝手に思っていたのですが。その理解で大丈夫ですか。
新谷:はい。大丈夫です。
The Trade Desk、2つの魅力
有園:私は運用で育ってきた人間なので興奮するんですよ。話を聞くだけで嬉しくなります。透明性って何、運用者にとって他のDSPと比べて、どういうところが良いのって思うのですが、そのあたりをご紹介いただけますか。
新谷:2つあります。まずビッドファクターです。先ほど、運用するときに、いろいろな配信の条件を組み合わせながら広告効果を改善していくという話がありましたが、そういう運用をするための条件をラインアイテムというもので設定していくのが、競合他社のDSPです。
有園:いま、おっしゃっているラインアイテムというのはグーグルの仕組みだとアドグループのことでしょうか。
新谷:はい。
有園:DSPではラインアイテムと呼んだりすることがあると。
新谷:私どもは、ラインアイテムとは呼ばずアドグループと呼んでいます。たくさんの配信の最適化をしようとすると、アドグループをたくさん設定しなければならない。運用をしっかりやっていくとなると、50本、100本といったアドグループを作って運用しなければならなくなる。一方、私どもは一つのアドグループの中で配信条件を変えられる、例えば掲載位置が上のところだけに違う入札金額を設定できる、時間帯別、SSP別、ブラウザ別など、たくさんの最適化の要素に対してアドグループを増やすことなく入札金額を設定できるというのが私どものDSPの特徴です。入札金額を変更できるターゲット要素のことをビッドファクターと呼んでいます。アドグループを増やさずに最適化していくというのが大きな特徴の一つです。
もう一つは、それだけ細かい入札ができるのはいいんだけれど、効果はどうやって分かるのって話だと思うのですが、先ほど申し上げた、様々なビッドファクターごとにピボットレポートを提供しており、運用していただくみなさまには、掲載位置、時間帯、掲載サイト、SSPなどの16個の要素別にプラットフォームから、レポートをダウンロードしてご覧いただくことができます。
有園:なるほど。
新谷:どこがいいか、どこが悪いか、どこにお金がかかっているのか、効果がいいのはどこかを、すぐに知ることができます。それが、我々の2つ目の大きな特徴です。
有園:昔よくやっていたのは、アドグループをPCとスマホは別に作り、それだけで同じものでも2本になってしまうことがよくあるのですが、御社のシステムだとビッドファクターと呼ばれるファクターの一個になっていて、同じアドグループの中で設定できるってことですね。最近だと、アドワーズとかも基本、PCが100円の入札金額だったらモバイルはプラス20パーセントといった指定の仕方をしたりすると思うのですが、それに近い感覚だと思っていいでしょうか。
新谷:そうです。同じようなことができるということです。
有園:それと同じような発想で、たとえばアドフォーマットのサイズが300×250とか、それぞれバナーのサイズが違っていたりするものも、同じアドグループの中で処理されていくのでしょうか。
新谷:そうですね。バナーのサイズ別に入札金額を変えることは可能です。多くのビッドファクターを全部掛け合わせて、入札金額が決まるという仕組みになっています。
有園:そうすると、同じアドフォーマットでも掲載位置がAbove the fold(アバブ・ザ・フォールド)やBelow the fold(ビロー・ザ・フォールド)とあって、Above the fold(アバブ・ザ・フォールド)であれば、この300×250のフォーマットは20パーセント増しだよとか、Belowだったら。
新谷:30パーセントダウンだというと、1.2×0.7で入札金額が決まるってことですね。
アドグループは1つでいい?
有園:そうすると、アドグループって一個でいいのかなって思うのですが、必ずしもそうでもないのでしょうか。
新谷:運用されている方々にお話を聞くと、非常に細かく設定されているので1本でいいかというとそうではないのですが、例えば20本や30本で運用されている場合、おそらく半分か三分の一くらいの本数で運用することができると思います。リターゲティングをやったり、ブロード配信をしたり、サードパーティデータを使った配信をしたり、オーディエンス拡張したり、いわゆる広告メニュー的なものを最初のアドグループ設定することが多いです。ラインアイテムベースのDSPだと、同じように入札しようとするとたとえばオーディエンスが10何個あって、それぞれに要素が何個もあると考えると、100本、150本、200本と必要になり、それだけの粒度で入札しないと私どもの入札と同じ入札粒度にならないことになります。
運用者の負担を軽減するレポート
有園:それだけ運用者の負荷が軽減されるってことですよね。なおかつ、レポートがかなり柔軟にとれるということがメリットだということですね。
新谷:そうですね。
有園:レポートのことで運用する側として気になるのは、さきほど掲載位置がAbove the fold(アバブ・ザ・フォールド)やBelow the fold(ビロー・ザ・フォールド)といった話をしましたが、Above the fold(アバブ・ザ・フォールド)だったらコンバージョンレートがこのくらいとか、この枠だったらとか。
新谷:枠まではいかないです。
有園:でも、Above the fold(アバブ・ザ・フォールド)はできるんですね。AboveとBelowの違いは出せるのでしょうか。
新谷:出せます。
有園:レポートを細かい粒度でダウンロードして、ピボットで出るんでしたっけ。
ピボットテーブルをダウンロードできる
新谷:そうですね。ダッシュボードよりもピボット化されたエクセルをダウンロードして見ていただくようにお勧めしています。
有園:掲載サイトと掲載SSPをピボット組み替えによってクロス集計で出せたりするということですね。
新谷:それも出せます。
有園:そうすると、これまで他のDSPやアドネットワークではなかなかできなかったことができると。
新谷:最近は開示されることもあると聞いておりますがデータではとれていても、そこまでは開示していないDSPもあると聞いています。私どもはピボットテーブルなので、その中にはローデータに近いものも入っています。ローデータですから非常に細かい粒度でレポートを提供させていただいております。有園さんみたいな運用をやっていらっしゃった方には、非常に分析意欲が高まるデータの粒度でご提供できているのではないかと思います。
有園:エクセルで落とせるのがありがたいですね。
新谷:しかも、ピボットになっているという。
有園:つまり、マイクロソフトオフィスに強い人たちがいると。
新谷:そうそうそう。これは競合他社にはなかなかできないことだと聞いています。
有園:そうですね、できないと思います。
新谷:ご説明させていただいた入札方法とレポートで運用者の方が運用する時間を非常に短縮できます。これまではたくさんラインアイテムを作らなければならないので労働集約型になりがちな設定業務などのオペレーション環境を改善し、分析や戦略、戦術の立案に時間を割いていただくことができます。
有園:透明性の高いレポートを広告主にいきなり渡しても、自分で運用していなければ分析の切り口やアイデアが思い浮かばないと思うんです。だから、トレーディングデスクや広告会社に、きめ細やかにサービスしているんだなって感じます。
広告会社・トレーディングデスクの運用者を育てる
新谷:ビッドファクターって新しい言葉ですし運用担当者の方々はラインアイテムでの設定に慣れてらっしゃるので、今は広告会社やトレーディングデスクの運用者にビッドファクターの有効な使い方、レポートの使い方など啓蒙・トレーニングさせていただき私どものDSPに慣れていただくといった段階です。
有園:オペレーションをするのが仕事ではなく、トレーディングのノウハウをエデュケーションするのが仕事だと。
新谷:そうです。とはいえ慣れていただくためには私どもの方で最初は一緒にオペレーションさせていただきます。
有園:それって、サイトカタリストを提供していたオムニチュア(現Adobe)さんとかが、サイトカタリストの使い方を教育して回るっていうのをお仕事としてされていましたが、それに近いのでしょうか。
新谷:そうかもしれません。
有園:実は、教育ビジネスみたいな側面もあるって気がしています。
新谷:実はトレーディングアカデミーという10時間を超えるトレーニングビデオがあります。私どもの社員全員受講するんですが、北米ではこのトレーディングアカデミーを広告会社に有償で提供するサービスがはじまっています。グローバルにも、このコンテンツの提供を検討しており、現在日本語の翻訳資料を用意しようと準備しております。
有園:なるほど。ところで、日本ではプライベートマーケットプレイスという領域が注目されてきていますが、特定のプライベート取引は、御社のDSPを使うとできるのでしょうか。
パブリッシャー・マネジメント・プラットフォーム
新谷:私どものPMPは「パブリッシャー・マネジメント・プラットフォーム」といいまして各広告会社やトレーディングデスクがSSPや媒体社と交わした契約をマネジメントする機能を提供しています。すでに欧米ではローンチしており、日本でも使えるのですがどのように使っていただくのが良いのか広告会社やトレーディングデスク、各SSPと話をしているところです。各キャンペーンの配信先をプライベート取引を探しにいくのかこれまでと同様にオープンで買うのかを選択できるようになっています。
プライベートマーケットプレイスの未来
有園:最後に業界の長い新谷さんにお尋ねします。プライベートマーケットプレイスというものは、これから、どういうふうに発展していくと思っていらっしゃいますか。
新谷:アメリカの方は、これから業界が変わっていく時期になってきた様子です。広告在庫が、プログラマティックなプラットフォームを介して買い付けられていくのは、これから増えていくのは間違いないと思います。通常の広告販売は、掲載可否から始まって在庫確認があって、それから発注して原稿審査があってと、クライアントと広告会社と媒体社の間でなんどもやり取りが必要なワークフローで運用されています。グローバルでは、このやりとりをプラットフォームで行っていくことでワークフローを改善していこうという動きがあります。
有園:純広告ですか。
新谷:はい。そういうものをオートメーション化しようという動きがあることに加えて、オープンマーケットから広告を買い付けるよりもっと質の良い広告を購入したいというクライアントのニーズも強くなってきています。
新谷:ビューアビリティを保証して欲しいといったニーズもが出てきているそうです。オープンマーケットで探すよりもプライベートなマーケットで買い付けるという話が、ワークフローのオートメーション化とデマンドサイドのニーズで、いろいろな在庫がプログラマティックになっていくと思います。そういった中でいかに広告主サイドのニーズの「質の高い」というのに下がりがちな単価(媒体価値)をどのように担保しながら答えていくか、が大きな課題になっていくのではないでしょうか。
有園:それは掲載面?
新谷:面というか、付加価値を何と捉えて、広告主、デマンドサイドのニーズに応えていくか。面かもしれないしオーディエンスかもしれない。
有園:そうすると、オートメーテッド・ギャランティード(Automated Guaranteed)やアンリザーブド・フィクスド・レート(Unreserved Fixed Rate)と呼ばれている領域のプライベートマーケットプレイスについては伸びていくだろうと。
新谷:日本は緩やかに伸びていくと思います。北米では急成長するという予測が出ていますね。
有園:SSPとかがプライベートエクスチェンジやパッケージを作るという話を聞いたことがあるのですが、それとは少し違う動きになるのかなと思っているんですが、どうでしょうか。
新谷:質って何だって話になりますが、媒体社としっかり話をしながら、媒体社さんにも収益を生むことができて、広告主もニーズが満たされることが、プランニングとして非常に重要になってくるはずなんですね。こういうことは広告会社の方々やメディアレップの方々が常日頃やられていることですので、さきほどのワークフローのオートメーション化なども含め、そこをどうアドプトするか、いつアドプトするかということではないかと思っています。
有園:その話と御社のパブリッシャー・マネージメント・プラットフォームというのは、いまいったプライベートマーケットプレイスという動きが出てきたときに、それを台帳として管理するので、プライベートマーケットプレイスが成長することによって、パブリッシャー・マネージメント・プラットフォームが管理するために必要になってくるということでしょうか。
新谷:そうです。
有園:パブリッシャー・マネージメント・プラットフォームという台帳が、これから発展していくプライベートマーケットプレイスを見越して用意されているような気がしていて。略すとPMPで同じなんだけど競合ではなく補完関係にあり、すでに先を見越して提供しはじめているのかなという理解でよろしいでしょうか。
新谷:そうですね。2015年はより多くのクライアント、パートナーである広告会社様やトレーディングデスク様との取引を拡大したいと思っておりますし、体制も強化しております。ご興味もっていただけるようであれば、お問い合わせいただければと思います。
有園:ありがとうございました。
新谷:ありがとうございます。
《対談者プロフィール》
新谷 哲也(しんたに てつや)
The Trade Desk
Country Manager, JAPAN
2014年7月より米国大手DSPであるThe Trade Desk, Inc.のCounty Managerとして入社。日本市場における同社サービスのローンチを担当し、現在は各広告会社やトレーディングデスクへの拡大を主に担当している。同社入社以前は電通において10年間デジタルビジネスに従事。1999年よりインターネット広告およびアドテクノロジー関連事業に携わり、これまで様々なインターネット広告関連のサービスの企画・開発や立ち上げを担当した。