Acquireについて
杉原:Acquireについて教えてください。
鈴木:もともと、弊社が事業を始めたとき、リターゲティング広告なのでクッキーを何日間有効にするかというのを、ある程度設定を区切って配信を始めました。最初は最長30日でした(ソリューション名はConvert、旧 Lower Funnel)。ただ、弊社の場合、ほとんどのバナーが3日程度で8割くらいの配信を終えています。それが通常の配信に関する統計的な数字です。クリックにすると、もう少し伸びたりします。直近のユーザーであれば訪問のCVRも高い、購買意欲も高いということになるので、それはそれでひとつだとして。さらに、半年前に訪れた後、広告主のサイトに訪れていないというユーザーもいらっしゃいます。それはどのようなプロファイルのユーザーかというと、その広告主のサイトで一度も物を買ったことがないとか、広告主サイトに対する興味関心度合いが低かったりします。ECサイトさん、広告主さんによっては、そういうユーザーへのマーケティングを強化したいと考えるケースも多いです。そこで、そういうユーザーを特定のセグメントとしてキャンペーンを展開できるようにしたのがAcquireです。30日間だったクッキーの設定を、ヨーロッパと同じ400日まで延ばし、直近訪問者か、それ以降400日までの訪問者かを分けてキャンペーンを設定できるようにしました。もともと、Acquireは、Lower Funnel(現 Convert)に対してMid Funnelと呼んでいたのですが、「Acquireは新規顧客、ユーザーを“獲得”できるチャネルですよ」というメッセージの方が、よりクリアかと思い、Acquireと呼ぶようになりました。
杉原:もう、Acquireは使えるのですか。
鈴木:はい。マーケッターさんのニーズによって、直近ユーザー、CVRの高そうなユーザーに絞って、費用対効果の高い方を中心に使っていただき、そこプラス新規顧客の獲得をしたいお客さまには、Acquireの方にも予算を投下していただきます。基本的に、新規の広告主さまには最初からセットで実施していただくようお願いしています。
eメールリターゲティングとは
杉原:eメールのリターゲティングについて伺います。海外でも取り組んでいらっしゃるのですか。
鈴木:Criteo Emailは、2014年の前半に買収したTedemis(テデミス)という会社があり、この会社のテクノロジーがベースになっています。一言で言うと、リターゲティングで、これまではバナーで表示していたものを、バナーの代わりにeメールで届けるというものです。例えば、ある広告主サイトを訪れたときはコンバージョンに至らなかったユーザーがいたとして、1日後、そのユーザーの元にメールが届き、そのなかには「お客さま、この商品をご覧になりましたよね」と、見た商品そのものや関連する商品が表示されているのがeメールリターゲティングです。
杉原:クロスデバイスの設定ができているお客さまに関して言うと、他のデバイスでの閲覧履歴も考慮した上でメール配信もできる、シナリオ設計のようなことができるということでしょうか。
鈴木:できます。ただ、このデバイスとこのデバイスをこう見た場合にeメールを飛ばすというのは弊社が自動的に行います。
杉原:既存のeメールのプラットフォームとの連携はされているのですか。
鈴木:eメールの配信先としてeメール事業者との提携はします。ただ、例えば、広告主がすでに使っているメールシステムであったり、メールマガジンであったりは当然、弊社側では知り得ない情報になるので、そこはうまく広告主側で調整、最適化をしていただくことになります。弊社では、ある程度の設定ができるようになっています。例えば1日後、2日後、6時間後にお届けするようなことを、リターゲティングをベースに、ピンポイントに行っていきます。そのようなものが届いてもよい前提のメールマガジンの頻度設定などを、ご考慮いただく必要があるかと思います。
杉原:連携はするのでしょうか。
鈴木:例えば、ある広告主かECサイトのどちらかが独自のメルマガのプラットフォームを持っていて、1日に1回、必ずメールマガジンを送っていたとします。それは継続すると思いますが、それに加えてCriteoからリターゲティングのeメールが届くことになります。ここで、どのような頻度が最適かは、弊社の場合、リターゲティングのパーソナライズされたeメールのみを送ることになりますので、これが届いてもいいような状態のeメールの配信、全体の最適化を、広告主かECサイト側でやってもらうことになります。
杉原:もともと、コンタクトリストみたいなものも、eメールプラットフォームの中で管理していたものを、こちらのシステムで使うとか。
鈴木:正確には、2種類のeメールの配信の仕組みを用意しようとしています。ひとつは、既存のお客さまに対して送ることができる、CRMと弊社では呼んでいますが、既存カスタマー向けのeメール。もうひとつは、その広告主から見たときに、新規のユーザーにあたると思われるeメールアドレス宛てに送る、PRMと呼ばれる見込み顧客向けのメール配信。このふたつを用意しようとしています。既存のお客さまに送るものについては、その広告主サイトが把握しているeメールアドレスをハッシュしてCriteo側に渡していただくことになります。
杉原:日本はいつ頃ですか。
鈴木:2015年の7月以降に開始予定です。バナーの配信と違いハードウェア的なものが必要になります。その他にも、日本独自の業界団体もあるので、そういったところともプライバシー面などレギュレーションに合わせる準備をしているところです。少し準備の時間をいただいております。
フィード最適化サービスを提供するDataPopの買収について
杉原:僕は、DataPopがデータフィード構築を専門にしているだけではなくて、クリエイティブオプティマイゼーションがとても強い人たちであると理解しています。DataPopを買収された狙いは、やはり、エンジン強化でしょうか。
鈴木:エンジンの強化と、クリエイティブの素材としてのデータフィードをどう最適化できるかの鍵と言いますか、材料として使わせていただくことになると思います。
杉原:DataPopはこの分野での取り組みは長い会社ですからね。ペイドインクル―ジョンの頃からやっているから。
鈴木:ペイドインクル―ジョン、懐かしいですね。サーチ、検索についてのテクノロジーと言いますか、基礎的な技術を持っているのではないかと思っていますので、何か面白い取り組みができたらなと思っています。
杉原:TedemisやDataPop以外にも会社を買収していましたっけ。
鈴木:2014年にAdQuanticという会社を買収しています。今、AdQuanticの最新ビディングテクノロジーをCriteoエンジンに取り込んでいるところです。キーワードのユーザークッキー単位でのビディングとかができるようになると、非常に面白い世界になってきます。
Criteoのチャレンジ
杉原:Criteoさんのチャレンジについて聞かせてください。
鈴木:モバイルが大きなオポチュニティであることは、日本だけでなく世界で共通であり、モバイルにおける事業の展開、拡大は、引き続きチャレンジです。例えば、iOSでのサードパーティのクッキーが機能しなかったことが過去にもチャレンジとしてありました。弊社独自のやり方でクリアして、iOSでのリターゲティングの配信も2014年からできるようになりました。こういった、モバイル固有の課題は、今後も引き続き解決しながら、2015年の前半は、解決したそれぞれのコンポーネントを繋げて配信していくことを実現していきます。これによって先ほど申し上げた、リテール(EC)、トラベル、クラシファイドと捉えている弊社と相性の良いお客さまに対して、費用対効果をエンジンの面でさらに高める、配信のボリュームを下げてモバイル対応するということを、引き続きレベルアップさせていきながら、新しい領域にチャレンジしていくことが、もしかすると先ほど申し上げたDataPopのところかもしれません。一貫して根底にあるもの、全く変えていないものは、パフォーマンスを提供すること。パフォーマンス、パフォーマンスと繰り返し申し上げていますが、 費用対効果といったほうが日本では分かりやすいかもしれません。その費用対効果を高く提供すること。そこだけは、ぶれることなく展開していきます。チャレンジとしては例えば、ブランド予算とか、認知向上とか、最初の認知を獲得するために広告のソリューションを拡大することは可能であると思います。Criteoはデータをたくさん持っていますし。ただ、それは、パフォーマンスを提供するサイエンスとは違うところにあるんだろうと個人的には思っていて、パフォーマンスを提供するところはぶらさずに、そちらの方を中心に、事業、プロダクトを拡大していくところが、大きく言うとチャレンジになります。
杉原:「Performance is Everything」というメッセージは繰り返しおっしゃっていますよね。
鈴木:そうですね。
杉原:そこがぶれない限りは良い動きができるのだとお考えになっていると思いますし、我々もそう見ています。結構、エンジンのところも聞いている限りでは「着いていけないな」「なかなか他社さんは厳しいのではないかな」と僕は思います。
鈴木:Criteoエンジンは常に進化しているといえます。2015年の前半により高い単価で購入しそうなユーザーを予測した広告展開を可能とするCOSオプティマイザーを発表しました。2015年中に、まだいくつかアップデートする予定です。
杉原:他にも〇〇オプティマイザーが出てくるわけですね。
鈴木:はい。〇〇オプティマイザーがまだ出ます。
杉原:飽くなき追求ですね。それが大事なんでしょうね。
鈴木:重要ですね。杉原さんもご経験があると思いますが、個人的には、本社でいろいろとプロダクトを開発して、どんどんローカルのマーケットにおりてきて、ローカルでの販売が順調に進んでいくと「新しいプロダクトをもっと欲しい」という状態になったりすることって、ありますよね。「こういうプロダクトを作ってほしいのに」とか。
杉原:ありましたね。
鈴木:いまは、どんどん新しいプロダクトが来るので「追いつかなきゃ」というのがローカル、日本事業の課題というかチャレンジというか。来るプロダクトが全部パフォーマンスを追及する観点でよく作られているので、どうやって上手にスピーディに、お客さまへ提供できるかというのがチャレンジだったりします。
杉原:たくさんありますよね。フェイスブックの「Dynamic Product Ads」に対応するというニュースも見ましたよ。デバイス、チャネル、主要なものに関しては広く対応していく感じなのかなと。
鈴木:モバイルも重要ですし、ソーシャルというチャネルに対して拡大していくことも重要です。フェイスブックというのは非常に大きなチャネルですから、ここでより効果的な広告やバナーの出し方を追及していきたいと思います。日本だけでなく海外でも同じですが、フェイスブックアプリのニュースフィード、やはり、ユーザーが目にする時間が長いので、そこにどう出すかが重要になります。そこにどのように、うまくサードパーティの広告を出していくかが課題で、弊社が上手くフィットしたのではないかなと思っています。
杉原:相性はすごく良いと思います。本日は貴重なお話ありがとうございました!