Criteoの強さと今後のチャレンジ:Unyoo.jp特別対談 Criteoの鈴木大海さんに聞く

Criteoの強さと今後のチャレンジ:Unyoo.jp特別対談 Criteoの鈴木大海さんに聞く

ヤフーとのパートナーシップの現状

杉原:ヤフーさんとのパートナーシップはいかがですか。

 

鈴木:2012年に戦略的な提携を発表しました。ヤフーさんは、媒体としても広告主としても非常に大きいです。Yahoo!ショッピングをはじめ、ヤフオク!やYahoo!不動産など、他にもいろいろと弊社のサービスをご利用いただいております。例えば、Yahoo!ショッピングのバナーも弊社のネットワーク上に出ているといった状態です。
杉原:媒体社とのリレーションはヤフーさんに限らず、他にもかなりいろいろとやられているのでしょうか。

 

鈴木:弊社の特徴のひとつとして申し上げてよいと思うのですが、いろいろな事業モデル・接続形態の媒体社、ネットワーク事業者と接続が可能です。媒体社が持っているアドサーバーと直接、接続することもできるし、そうしたウェブサイトが集まっているSSPやアドネットワークとの接続も可能です。そのため、両面から取引させていただくことができます。通常、DSPというポジショニングの会社だと、媒体から直接買うことがなく、SSPやアドエクスチェンジを経由することがほとんどだと思いますが、我々は両方できることが特徴です。

 

杉原:そうですね。御社もDSPという分類をされることがありますよね?

 

鈴木:最近、DSPの企業が増え、こういうアドテクノロジーが浸透するにつれなのかは分かりませんが、CriteoがDSPだという見方はされなくなりつつあります。ただ、DSPに近いところに位置づけられることはあります。一番大きな特徴、他社との違いは、我々は、ファーストパーティのデータを直接収集して、そのなかでユーザーのセグメントみたいなところまでを手掛け、アウトプットであるクリエイティブまで作るのが独自性です。

 

 

なぜ、Criteoは強いのか

杉原:あらためて聞きます。なぜ、Criteoさんは強いのですか。

 

鈴木:ひとつめは、媒体ネットワークの広さです。媒体ネットワークの広さを支えているのが、多様なバイイングテクノロジーです。直接の取引もできますし、RTBネットワークとも取引できます。ふたつめが、アルゴリズムです。アルゴリズムと一言で言っても、中にはたくさんのコンポーネントがあります。ユーザーの評価を行う部分。そのユーザーが本当にクリックしそうなのか、コンバージョンしそうなのか、コンバージョンしたあとの売上金額が高そうなのかどうか。そうしたことを数値化するアルゴリズム。そこから、バナーのクリエイティブはどういったものを表示すべきなのか。さらには出すべきクリエイティブを決めた後に、パブリッシャーのそのゾーンであれば、いくらで買い付けるのかといったところまでアルゴリズムがあります。こうした多様なアルゴリズムを常に動かしているのが弊社の強みのひとつです。

 

杉原:いろいろな変数があって、動的にやっているんですね。

 

鈴木:配信ネットワーク、アルゴリズムがあります。費用対効果を高めるためにアルゴリズムを駆使して、パフォーマンス、つまり、費用対効果を提供できているのではないかと思います。

 

杉原:「エンジン」と言われることがあると思いますが、一言でエンジンと言っても、いろいろなエンジンがあって、いろいろなアルゴリズムが動いているわけですね。

 

鈴木:はい。

 

 

CTRオプティマイゼ―ションからCOSオプティマイゼ―ションへ

杉原:CTRオプティマイゼ―ションからCVRオプティマイゼ―ション、そしてCOSオプティマイゼ―ションへという流れがありますが、COS(コスト・オブ・セールス)のところはすでに実装されているのですか。

 

鈴木:されています。弊社の事業モデルは、基本的にCPCで課金されCPMで支払われます。極端な言い方をすると、CTRが高ければ事業としての売り上げは大きいということになります。2014年までは、CTRを高めるオプティマイゼ―ションを中心に行ってきました。ここに、CVRを高めるために、あらたにエンジンのバージョンアップをして、そのユーザーのビヘイビアであれば「コンバージョンするかもしれない」「コンバージョンしないかもしれない」というところまで、弊社のエンジンにより強く取り込むようになりました。これによって、より高いCVRをご提供できるようになりました。それを残しつつ2015年、さらに新しくしたのがCOSオプティマイザーというエンジンです。コンバージョンだけでなく購入金額を予測、加味するのが特長です。例えば、CVRが少し高そう、低そうという2人のユーザーがいて、どちらもある程度のコンバージョンが見込めたとします。CVRが高そうなユーザーは単価の安いものしか買わないようだ。一方、CVRが低そうなユーザーは単価の高いものを買いそうだ。この場合、広告主としては同じ予算を投下するのであれば、購入金額が高いユーザーに重きを置きたいはずなんです。ここのフィードバックまでできるようにしたのがCOSオプティマイザーです。

 

杉原:それは、数重視でいくのか、売り上げ重視でいくのかを選べるようになったということでしょうか。

 

鈴木:はい。弊社は費用対効果を提供する広告ソリューションなので、COSを高める、ここの効率を良くしたいお客さまが多いだろうということで、COSオプティマイザーをデフォルトにしていくことになると思います。ただ、CVRオプティマイザーのみを提供することもオプションとしては残します。例えば、資料請求の件数が重要であって、資料件数一つひとつに値段の違いはないというお客さまもいらっしゃいます。そのようなお客さまにはCVRオプティマイザーを使っていただくことになります。

 

杉原:COSオプティマイザーは商品単価の落差が大きい業種向けということになりますね。

 

鈴木:はい。

 

杉原:商品単価の落差が大きい業種というと、例えば旅行ですか。

 

鈴木:旅行は特に、COSオプティマイザーの効き目が強いです。例えば、高いホテルに泊まりそうなのか、安いホテルに泊まりそうなのかも、これまではカテゴリごとにきることはできました。弊社の広告運用方法としては、広告主にカテゴリをある程度きってもらいます。旅行サイトであればホテルも、アジア地域、ヨーロッパ、アメリカときってもらい「アメリカの販促を強めたい」としたらCPCを強めるとか利幅を高く設定することも可能でした。この部分をエンジンが自動的に行うことによって、さらに効率が良くなりました。

 

杉原:高額商品もあれば、高額ではない商品を取り扱っているECさんもありますね。不動産はどうですか。

 

鈴木:不動産の場合は比較的、もちろんお客さまによりますが、資料請求の件数、問い合わせの件数に重きを置いているお客さまが多い印象です。一件あたり2500円といった目標を設定されているので比較的、CVRオプティマイザーの方が相性は良いです。

 

杉原:人材も同じですか。

 

鈴木:同じです。

 

杉原:先日、旅行予約サイト向けのエンジン強化というリリースを拝見しましたが、これに近いのでしょうか。

 

鈴木:COSオプティマイザーが、特に旅行の事業者さんに相性が良いので、あのようなプレスリリースを出したのですが、同じものです。今後、リテール、EC向けのお客さまにも「ECの場合は、このような結果が出ました」というプレスリリースを出す予定です。

 

 

クロスデバイスへの取り組み

杉原:御社の強みのひとつになると思われるクロスデバイスへの取り組みについて伺えますか。

 

鈴木:モバイルの配信の重要性が高まっていることは言うまでもありません。先日、弊社が発表した調査でも、日本は特に、オンラインショッピングでのモバイル使用率がCriteoが事業を行っている日本以外の地域と比べても非常に高いという結果が出ています。オンラインショッピングでのモバイルデバイスの使用率は日本が49パーセントです。約半数がモバイルデバイスを使用しているという数字がとれています。それに続くのが韓国で45パーセント、イギリスが41パーセントです。アメリカ、イタリア、フランス、ドイツは24から25パーセント前後くらいです。世界的な平均は30パーセントくらいとみています。そこから比べても日本は非常に高いです。Criteoでは2013年頃から、モバイルのブラウザでも配信できるように開発を推し進め、プロダクトの強化をしてきました。モバイルでのショッピング率が高くなったので、単純にモバイルに配信するのではなく、モバイルで見た後にデスクトップパソコンでコンバージョンするといったお客さまには、どちらか一方の広告しか接触していなかったとしても他方のデバイスで配信できることが重要だと思っています。これもCriteoの調査ですが、ある一定期間(30日間)で弊社がマッチできるユーザークッキー、あるユーザーの複数のデバイスが同じユーザーのものであることを認識できるものが存在するのですが、このクッキーが他方のデバイスのみ接触して、もう一方には接触していない割合が約22パーセントでした。単純に、ここをクロスデバイスで繋げて広告配信するだけでも、2割以上の配信増加の機会があるのではないかと思っています。

 

杉原:広告主は意識することなくクロスデバイスに配信されるのでしょうか。

 

鈴木:一般的にターゲティング広告を行う場合、クッキーに依存する例が多いです。クッキーに依存せずに配信できている例として、フェイスブックはフェイスブックのIDを使って、どのデバイスであっても、そのユーザー向けの広告を配信することができているのではないかなと思っています。その鍵になっているのが、ユーザーIDやフェイスブックIDだったりします。Criteoでも同じようにIDを入手できると、クロスデバイスの配信ができるようになります。しかし、残念ながら弊社はコンシューマーサービスやログインサービスを持っていません。広告主から広告主サイトにログインしている状態のユーザーについて、そのログインID、なんらかのIDをCriteoに渡していただくことで、Criteo側で異なるクッキーをマッチングさせています。

 

杉原:もう実現しているのですよね。

 

鈴木:広告主から許諾のうえログインIDをいただくことは開始しており、2014年から始めています。それにより、こっちのクッキーとこっちのクッキーが同じユーザーであるというマッチングができていて、先ほど伝えた20数パーセントという数字はそれです。ここから実際に、他方のデバイスで広告主サイトに訪れていないユーザーに配信を開始するのは2015年第2四半期、4月以降のどこかで予定しています。

 

杉原:この間の事業説明会(レポートはこちら)で、クロスデバイスソリューションの特徴は「完全一致」とおっしゃっていました。サラッと「広告主のデータ」と言っていましたが、それってすごいことです。大変だし、どうやってやるんだろう。Criteoさん独自の取り組みなのかな、他に似たようなソリューションを提供しているところってあるのかなって思いました。

 

鈴木:純粋な広告事業者で、Criteoと同じようなソリューションを提供しているところは、私の知る限りでは無いかと。ただ、フェイスブックさんの場合、フェイスブックIDを使った広告の最適化、パーソナライゼーションを行っていると思います。概念としては、それに近いと思います。
 

日本のデータフィードマーケティング

杉原:結構、感動しています。もともとCriteoさんで広告出稿する際は、データフィードで繋ぐことを必須にしてますよね。データフィードは企業にとってハードルが高いので、データフィードを繋いでソリューションの提供をさらっと始めたけれど「広告主企業とそんなに都合よく繋げられるのかな」と実は当初、思っていたんです。

 

鈴木:日本ではデータフィードの普及率が低かったんです。その理由は個人的な見解になりますが、データフィードマーケティングを使う先が日本の場合、限られていたのではないかと。

 

杉原:少ないですよね。僕もそう思います。

 

鈴木:おそらく、欧米だと、それがないと必然的にできないサービスなんです。PDAとか。

 

杉原:そうですね。ありすぎるから。

 

鈴木:日本は、そこまでではなかったらから必要なかった。だから、広告主さんも用意していなかったのではないかと。

 

杉原:僕も同じ考えです。

 

鈴木:なぜ、必要なかったかというと、欧米はGoogleのPLAが強いです。でも、日本の場合、ショッピングというと、まずは大手のショッピングサイトに行ってしまう流れがあった。だから、イーコマースを始めようとする事業者さんが、自分でサイトを作ってデータフィードを用意して、マーケティングングをやってではなく、まずは大手のモールに出店してというビヘイビアになりがちだった。その結果、データフィードマーケティングみたいなものも比較的、遅れてしまったのかなという気もしています。

 

 

企業の二大データベースに広告業界がタッチ

杉原:商品データベースに広告/マーケティング業界がタッチしたという意味で画期的でした。もうひとつ画期的だと思ったのが今の話で、結局、ユーザーデータベースの方にタッチするということは、ITサイドの話でいうと、企業の二大データベースは商品データベースとユーザーデータ(CRM)なので、両方にタッチしているということですよね。

 

鈴木:そういう表現もできるかと思います。

 

杉原:それって信頼がないと全く成り立たない話です。「ここだったら預けて良いかな」と信頼されないと。もちろん、パフォーマンスがあって信頼できるということですが、両方成り立たないと難しいだろうなって思っています。

 

鈴木:エンジンの場合は弊社がアップデートをすることで、ほとんどのお客さまに自動的に適用されるようにできています。クロスデバイスのところでは、広告主さんからログイン状態にあるユーザーのID、何らかの鍵となるものを弊社にいただくことが必要となるので「それを弊社にください」とお願いしているところです。徐々に、ご賛同いただいておりますが、2015年はここを加速させたいと思っています。

 

杉原:それは、商品データベースの接続よりも技術的なハードルは高いのですか。

 

鈴木:技術的なハードルは高くありません。モバイルやクロスデバイスの重要性をマーケティングの観点では、このことが企業のマーケティング活動にとって非常に有用であることを繰り返しご説明して、ご協力をお願いしています。

 

杉原:皆さんが気にされるセキュリティ面は当然、考慮に入れた取り組みになっているわけですね。

 

鈴木:はい。

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