テレビ局プロデューサーのつぶやき
「このままじゃ、年寄りと貧乏人だけのメディアになってしまう」
これは、ある東京のテレビ局(キー局)のプロデューサーがお酒の席で私に向かってつぶやいた言葉だ。
さまざまな調査結果から分かることだが、若者のテレビ離れは深刻な問題になりつつあるようだ。
そのプロデューサーいわく、テレビ局の若手にはかなり危機感があるらしい。
「オレたちもう、斜陽産業だからさ」と半ば寂しそうにテレビの現状を嘆いていた。
それを裏付けるように2015年2月4日に次ようなセミナーもおこなわれていた。
「5年後、テレビの制作とビジネスはどう変わるのか? ?テレビ業界、若手エース4名が登壇!?」
これは、TBSテレビ、東北新社、日本テレビ放送網、NHKなどの若手が集い、今後5年間にテレビ業界はどのように変わるのか、ビジネス面、コンテンツ面などから、テレビのこれからを議論した、とのことだ。
また、大手ナショナルクライアントといわれるメーカーの宣伝部の人は次のように言ったらしい。
「テレビ局も電通・博報堂も、枠を売ることばっかり考えていて、ぜんぜん新しい提案を持って来ないんだよ。今年は、テレビの出稿をガクッと減らすぞ!と言ってやったよ」
テレビCMを大量投下しないと、商品やサービスの認知を一気に拡大することは難しい。そのことは、大手ナショナルクライアントのほとんどが分かっていると思う。
しかしながら、テレビCMで認知を獲得したからといって、必ずしも売れるわけではない。とくに、バブル経済崩壊以降の「失われた20年」の間に、その認識も定着しているようだ。また、若者のテレビ離れについても、もちろん、ほとんどの大手ナショナルクライアントが認識している。
そのような状況の中で、大手ナショナルクライアントの宣伝部の中には、苛立ちのような感覚があるのではないか。
「テレビ局や電通・博報堂に新しい提案を持って来い!と言ってやったよ」という発言には、苛立ちと焦燥感が透けて見えるように感じる。
なぜなら、いまのテレビCMで新しい提案をするのが難しいことぐらい分かっているのに、そのような無理難題をぶつけている訳だから。