アナリスト予想を上回る売上増
Facebookが発表した2014年Q4(10−12月期)の決算報告によると、2014年最後の四半期の売上高は38億5000万ドルで、前年同期比で49%の増加となり、アナリスト予想の37億7000万ドルを上回った模様です。
リンク:Facebook Reports Fourth Quarter and Full Year 2014 Results
Facebookの売上の約93%(35億9000万ドル)は広告の売上になります。Facebookの業績報告資料には興味深い指標がいくつか示されているので、そこから今後のFacebook広告の方向性が垣間見えるかもしれません。
ARPUの増加
まず注目すべきは、各地域別にARPU(ユーザー一人当たりの売上:Average Revenue per User)を見た時の、欧米の急上昇です。
この表の右上の US&Canada、左下の Europe の ARPU の上昇率はそれぞれ 24%増、21%増と、たった3ヶ月の間に急激な上昇を見せています。アジアやその他地域も伸びていますが、それぞれアジア:8%増、その他地域:12%増なので、上昇率としてのインパクトは欧米が優っているように見えます。
このような欧米でのARPU急成長の理由として、決算説明では「モバイルの躍進」「ニュースフィードの質」「動画の成長」「アドテクノロジーへの投資」がキーワードとして挙げられていました。順に見ていきたいと思います。
モバイルの躍進
Facebookのデイリーアクティブユーザー(DAUs)8億9000万人のうち、7億4500万人(83.7%)が、モバイルからアクセスしているようです。
この強烈なモバイルシフトを広告にしっかりと結びつけることができているのが売上急増の理由の一つだと思われます。2014年Q4のモバイル広告経由の売上は、広告売上全体の約69%を占めると言われており、これは前年同期比で約53%増と大幅な向上を見せています。
ニュースフィードの質
モバイルの成長を広告売上に変換できている理由の一つに、ニュースフィードの質が挙げられます。モバイルにはデスクトップに存在する右側の広告はなく、ニュースフィードにのみ広告が表示(2014年末時点)されますが、そのニュースフィードの表示アルゴリズムは高い頻度で見直しが繰り返されており、一般に指摘されるように、オーガニックポストの比率は下がり、ペイドポスト、つまり広告の比率が高まっているようです。
これは Adobe の報告書である「Adobe Digital Index」でも指摘がされていて、Facebookのニュースフィードにおけるオーガニックのインプレッションは1年間で32%も下落し、ペイドポストの比率が高まっていると言われています。
動画の成長
ニュースフィードは、そのアルゴリズムのみならず、ユーザーが投稿する記事の種類も急激に変化しています。以前「FacebookとGoogleがしのぎを削る動画広告市場の変遷」という記事でも触れたとおり、Facebookの投稿の種類は多様化が進んでおり、以前は主流だったテキストの比率は下がり、画像やリンク、そして動画投稿の比率が急激に増加しています。
決算発表で、マーク・ザッカーバーグは
“Facebook users used to share mostly text updates. Now, most Facebook content is photos. ”
(かつてFacebookユーザーはテキストでの更新がほとんどだったが、今はほとんどが写真だ)
と発表し、COOのシェリル・サンドバーグも、
“Video grew dramatically on Facebook this year. Highlighting Ice Bucket Challenge videos as helping to drive that growth. 50% of Facebook users view at least one video per day”
(動画は今年急成長した。(ALS研究支援の)アイスバケツチャレンジなどによって成長が加速し、今ではFacebookユーザーの半分が最低でも1日に1つ以上の動画を閲覧している)
と伝えています。
先ほどの「Adobe Digital Index」でもやはりその傾向は指摘されており、動画の成長率を100としたとき、画像は71、リンクは84と、動画がもっとも成長しているフォーマットだということです。動画や画像のようなリッチなフォーマットにあおられ、テキストのみの投稿はなかなか表示されにくくなっているようです。
アドテクノロジーへの投資
Facebookの近年の投資意欲は目を見張るものがありますが、アドテクノロジー分野で言えば、Atlas、LiveRail、Audience Network などが代表格として挙げられると思います。この中で直接的に収益に貢献しているのは、おそらく Audience Network だと思います。
Audience Network はモバイルアプリ向け広告ネットワークで、Facebookユーザーの行動に基づくターゲティング広告をモバイルアプリで展開できる広告で、デマンドサイドには広告在庫を押し広げ、サプライ(アプリ)サイドには収益機会を提供するモデルです。2014年4月に試験運用が開始されていましたが、10月に本格的にスタートしたため、Q4の売上の増分に寄与していると思われます。
決算発表でもネットワークに参加するアプリが3倍になったことが伝えられたほか、音楽検索アプリの Shazam が試験運用中にアドネットワーク経由の収益が37%増加したというリリースも既に出ていることから、今後参加するアプリが増えれば増えるほど、売上は増えていくと考えられます。
また、中長期的には、LiveRail の技術による急増する動画のマネタイズへの貢献や、クロスデバイスや O2O の計測を可能にする Atlas の普及などが広告売上を後押しすることになると思います。
アジア、およびその他地域のARPU増加がカギ
Facebookのデイリーアクティブユーザー(DAUs)の過半数を超える 58% は欧米以外のアジアや中南米・アフリカのユーザーで、成長率においてもこの地域は非常に高い伸びを示しています。北米でのユーザー成長率はほぼ横ばいになっている以上、今後の成長をアジアやその他地域に求めていくのは間違いないと思われます。
一方で、ARPU は北米が突出($8.26)しており、ヨーロッパがその半分以下($3.22)、アジアはさらにその3分の1強($1.21)となり、大きな差が開いています。
これには、経済の差、通貨の差、技術導入のタイムラグ、東南アジアやその他地域はフィーチャーフォンがまだ多いという市場環境の問題など、様々な理由があると思いますが、スマートフォンの普及はおそらく急激に進むと考えると、ユーザーの伸びに広告売上が徐々に追い付いてくるであろうことはある程度想像に難くありません。
日本においても、スマートフォン比率の更なる増加や、Facebookへの広告出稿に目を向ける企業が増えていることから、アジアの中での日本の影響力は引き続き大きいと考えられます。
決算発表の場で、CFO の David Wehner が為替の影響に言及したのも、2014年10月以降の急激な円安や世界的な為替変動を考慮していると考えられるため、アジアの ARPU の実態は発表の数字以上に上昇傾向にある可能性も考えられると思います。
最後に、Unyoo.jp なので広告運用者の視点で考えると、Facebook広告を扱う上でモバイル最優先でキャンペーンを考えることは当然として、動画やアプリの機能改善への対応、特にカスタムオーディエンスなどは Audience Network にも応用できる機能であることから、Facebookのプラットフォームを通じたデータ活用の巧拙が問われてくるのではないかと思われます。
併せて、Atlasが日本でも使えるようになったときのための、クロスデバイスの分析やアトリビューションマネジメントの機能も求められてくるのかもしれません。