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RPMとは?
RPMは、もちろん、略語です。正しくは、Revenue per Milleと記載し、「1000ページインプレッションあたりの売上」あるいは「1000ページビューあたりの売上」という意味です。
私がこの言葉を初めて耳にしたのは、サンフランシスコのLookSmartとうい会社で働いているときで、1990年代後半だったと思います。ネットで検索すると、RPMの定義を記したページがいくつか見つかります。
最初にきいたときは、「はっ?何?」。「レベニュー・パー・何???」という感じでした。「Mille」がラテン語で1000を表すことも知らなかったですし、そもそも早口の英語だったこともあり、よく聞き取れなかった記憶があります。しかしながら、その後、この言葉には繰り返し接することになり、10年以上に渡って、これを中心に据えて仕事をすることになりました。というのも、その後に転職したOverture(現在、Yahoo!)でもGoogleでも、営業戦略はこのRPMを核にして作成されていたからです(ちなみに、検索連動型広告では、RPS : Revenue per Search という言葉を使う場合もあります)。
おそらく、シリコンバレーの媒体社のほとんどが、このRPMという概念を、ビジネスの中心に据えているのではないかと思います。そういう意味では、インターネット媒体社のビジネスを理解する上では欠くことのできない重要な概念であるといえます。GoogleやYahoo!などの広告を利用する広告代理店や広告主にとっても、理解しておいて損はないと思います。なぜなら、RPMの理解を深めておくことで、媒体社からリリースされる広告プロダクトの新機能のビジネス的意義などを推測できるようになるからです。また、媒体社のビジネスモデルの基本を知ることで、広告運用の要諦が分かるようになると思います。つまり、より上手に媒体社およびその広告プロダクトと付き合うことができるようになると思います。
検索連動型広告のRPMを分解する
さて、ここでは、このRPMを、代表的な運用型広告である検索連動型広告を例にとって、私なりに紹介したいと思います。
検索連動型広告では、RPMを以下のように表記します。
Search RPM = (Revenue/Queries)×1000
これは、「検索1000回あたりの売上」という意味です。
この Search RPM は、以下のように分解することができます。
(Revenue/Clicks) = CPC
この式で一番左側の項は、Revenue/Clicks となっています。広告主サイドでは通常、Cost/Clicks と表記され、いわゆる、CPC(クリック単価)と同じです。媒体社側からみると、Price(価格)になります。一般的に価格戦略という言葉がありますが、検索連動型広告においては、この Revenue/Clicks をどのように管理していくかを考えることが価格戦略になります。たとえば、昔は、最低入札価格が一律で30円という時代がありました。それが、一律で9円とか7円まで下げられたりして、ニュースになったりしました。また、AdWordsでキーワードごとに First Page Bid が表示されて入札を促すような仕様になっていたりするのも、価格戦略になります。
(Queries with Ads/Queries) = Coverage
左から2番目の項は、Coverage(カバレッジ)といわれます。Queries(検索問い合わせ)、つまり、なんらかのキーワードでの検索が10回あったとして、そのうち、その検索結果のページに広告が3回表示されていたら、30パーセントのCoverageになります。Queries = 10 で、Queries with Ads = 3 ということになります。なるべく多くのキーワードで検索結果ページ(Search Engine Result Pages:SERPs)に広告が表示されていた方が、当然、GoogleやYahoo!などの媒体社は売上機会が増加します。そのため、Coverageを上げるための施策を考えることになります。ちなみに、Queries with Adsは、Matched Queries ともいいますし、SERP Impressions with Ads(広告のある検索結果ページ表示回数)ともいいます。Queries with Ads = Matched Queries = SERP Impressions with Ads ということになります。
(Ads/Queries with Ads) = Depth
左から3番目の項は、Depth(デプス)と呼ばれます。これは、日本語でいえば、「検索結果ページあたりの広告の平均表示本数」ということになります。Queries with Ads(広告のある検索結果ページ表示回数)に対して、Ads(広告の本数)は平均して何本あるか。もっと簡単にいうと、1ページあたり広告が何本並んでいるか、ということです。検索結果ページに1本だけ広告が表示されている状態よりは、複数本(5本など)表示されている状態の方が当然、広告がクリックされるチャンスが拡大します。1本だけだと見逃されてる可能性が高いですが、5本表示されていれば、検索ユーザーの目に留りやすいハズです。媒体社側からすれば、通常は、Depthが高い(深い)方がよい訳です。Depth = 1 よりも Depth = 5 の方がよい訳です。ただし、Depth = 100 とかになると、2ページ目、3ページ目と検索結果の深いページにまでいかないと表示されません。そうなると、クリックされる可能性はほとんどなくなるので、Depthが深すぎてもあまり意味はないという感じです。媒体社としては、同一キーワードに入札する広告主の数を増やすことでDepthを高めることができます。そのため、当然、そのような営業施策を実施することになります。
(Clicks/Ads) = Ad CTR
一番右端の項は、Ad CTR になります。これは、広告主が通常使っているCTRとは少し違います。広告主が使っているCTRは、一つの広告が何回表示されてそのうち何回クリックされるかを示しています。一方、Ad CTRとは、表示されたすべての広告主の広告に対してクリックが全体で何回されるかを示しています。
たとえば、検索結果ページに広告Aと広告Bの2本の広告が表示されていたとします。つまり、Ads = 2 です。そのとき、広告Aがクリックされたとします。広告AのImpression = 1 で、広告AのClick = 1 なので、CTR = 100% となります。広告Bはクリックされていないので、広告BのImpression = 1 で、広告BのClick = 0 なので、CTR = 0% になります。一方で、Ad CTRは、広告Aがクリックされているので Clicks = 1 で、Adsは広告Aと広告Bが表示されているので Ads = 2 となり、Ad CTR = (Clicks/Ads) = 1/2 = 50% になります。
ところで、このAd CTRに対して、Page CTRという概念もあります。Page CTRは、Clicks/Queries with Ads あるいは Clicks/Matched Queries と表記されます。これは、すべてのQueries with Ads(広告のある検索結果ページ表示回数)に対して、広告が何回クリックされるかを示しています。Ad CTRであれPage CTRであれ、いずれにしても、媒体社としては、広告がクリックされる率を高めることによって売上を増加することができるのです。
このように、Search RPMは、結局、CPC – Coverage – Depth – Ad CTR の4つの要素に分解できます。
そして、CPC は Price Strategy、Coverage と Depth は Quantity Strategy、Ad CTR は Quality Strategy として、それぞれ、戦略的に管理され、誰に何をどのように打ち手を実施していくことで、Search RPMを効率的効果的に上げていくことができるかを考えることになります。
各要素に対しての代表的な打ち手
最後に、代表的な打ち手をそれぞれ紹介して終わりにしたいと思います。
たとえば、以下のようになります。
CPC:First Page Bidの調整
Coverage:入札のないキーワードを広告代理店/広告主に提案
Depth:同一キーワードに入札する広告主数の拡大
Ad CTR:Quality Scoreの高い広告を優先的に上位表示
結局、媒体社としてはPrice(価格)、Quantity(数量)、Quality(質)のどれをもバランス良く満たしてくれる広告主や広告代理店がいいわけです。いまお付き合いのある媒体社がいれば、彼らの営業戦略、プロダクト戦略はこれらに沿っていると感じないでしょうか?広告主や広告代理店の人間が、これらを意識した活動をしていれば、媒体社とより有効的に付き合うこともできるでしょう。