広告運用者としての生き方1:広告運用者を取り巻く雇用環境

広告運用者としての生き方1:広告運用者を取り巻く雇用環境

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『広告運用者(AdOps)としての生き方』連載の趣旨

広告取引処理の自動化や技術の進化にともなって、これまでと「運用」という言葉の持つ意味合いが変化してきています。入稿やレポート、設定や請求入金等の取引業務といった従来の「保守」的意味での運用は自動化されていく一方で、キャンペーンの成否を分ける最も重要な「分析」「最適化」のような成果に直結する運用の重要性は日を追うごとに増してきています。

自動化が進めば進むほど、「運用や設計ができる人材」と「そういった人材を育てる教育」という、「システムから人への投資」に、市場関係者の軸がシフトしてくるという逆説性は以前から指摘されています。

このコラムでは、今後ますます増加の一歩を辿るであろう運用型広告市場の現場を担っている広告運用者(AdOps)にフォーカスを当て、運用者が置かれている環境や市場価値、キャリアなどについて数回に渡って書いていく予定です。

第一回は、広告運用者を取り巻く雇用環境から見ていきます。

インターネットビジネスの市場規模がどんどん大きくなるにつれ、「人が足りない!」という声が多くの成長企業で聞かれるようになりました。雇用が伸びていく中で、実際の広告運用の需要はどうなのか、いくつかの資料を見ながら考えてみたいと思います。

 

インターネット生態系の経済価値調査

かつてのメディア産業の雇用を支えていた代名詞といえば、テレビ、新聞、雑誌、ラジオなどのマスメディアでした。昨今ではインターネットがメディア雇用の主役に躍り出てきているいう調査が出ています。

リンク:
Internet-Media Employment Fuels Digital Job Growth | Media – Advertising Age

上記は 2012年と少し古い記事ですが、 AdAge の調査機関である AdAge DataCenter が行なった調査によって、ネットメディアがメディアビジネスの中で二番目に大きい雇用を擁する分野になったことが明らかになっています。アメリカのメディア産業に限れば、6人に1人はネットメディアの従事者になる計算です。2012年には既にテレビの雇用人数を超えていたとも言われています。

雇用の推移を表したインフォグラフィックが以下です。同じような傾向は、世界各国で起こっていると考えられます。

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雇用が伸びているのはデジタルメディア

雇用が伸びているインターネットビジネスをプレイヤー別に見てみたいと思います。

リンク:
2014 Agency Report: Revenue, Staffing, Stocks, Digital Up – Advertising Age

またアメリカのデータになりますが、米国労働統計局(Bureau of labor statistics)によると、2013年の広告関連の雇用は、デジタルメディア(Digital Media)が昨対比12.5%増(149,100職)となり、過去最も需要が高まっているとのこと。

このグラフで見ると広告会社(Ad Agency)の伸びが少なく見えますが、雇用はデジタルメディアより多く(190,600職)、2000年のドットコムバブルに次いで雇用が多いという状況のようです。PRエージェンシーに限って言えば、2013年は過去最高の伸びだということのようです。ソーシャルメディアの伸長が影響しているのかもしれません。

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雇用の伸びは売上の伸びとある程度連動するようで、デジタル関連の成長と雇用の増加には一定の相関がありそうです。右肩上がりの業界は雇用機会も多いと言えます。

もちろん、右肩上がりであっても伸びない会社もあれば、沈んでなくなってしまう会社も多くあります。

ただ、右肩上がりのいいところは、仮にうまくいかなかったとしても、市場全体が伸びている(そして変化している)ので、再起や再挑戦の道がそうでない業界よりも多いということかもしれません。

日本でも、強烈に人材採用を進めている企業の多くが、10年前は存在すらしていなかったか、まだスタートアップの段階でした。

 

職種における需給ギャップ

ExchangeWire が2014年10月に行なったフランスのアドテク関係者(ベンダー、メディア、トレーディングデスク等)への調査によると、半分近く(48%)の回答者が、プログラマティック取引の環境において、従事者のスキルが足りていないことを課題として挙げています。

この調査が行われた1年前にOMI(Online Marketing Institute)がフォーチュン500の企業および広告会社の経営陣、計747人を対象にした調査でも同様の結果が出ており、世界的にもデジタル領域に強い人材が足りておらず、需要が高いことが示されています。

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‘Où sont les talents?’ French Programmatic Survey Reveals Skills Gap Impeding Growth | ExchangeWire.com

では、その足りないスキルとは具体的にどういった分野なのでしょうか。

先ほどのOMI(Online Marketing Institute)のレポートによれば、 デジタルビジネスの中でも、特に以下の職能/スキルについて、重要性と実際の人材のバランスにギャップがあるという結果が出ています。

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Digital Marketing Talent Report: Skills Are Inflated, Talent Is Slim – OMI Blog

一番ギャップが大きいのは Analytics(分析)で37%、次いで Mobile(モバイル)、Content Marketing(コンテンツマーケティング)、Social Media(ソーシャルメディア)、Email Marketing(Eメールマーケティング)と続きます。

Digital Advertising(デジタル広告)は、ちょっとその定義が分かりにくいということもあり 12% とギャップは少ないですが、Analytics(分析)にしろ Mobile(モバイル)にしろ、挙がっている領域のほとんどが設計・運用が発生するものであり、多くのスキルに受給ギャップが存在していることが伺えます。

一方で、従来の営業マンには逆風が吹いています。

先ほどの ExchangeWire の記事では、

The emergence of programmatic media trading technologies has previously been seen as a synonym for jobs cutbacks, with direct sales roles often seen as the media trading house’s first casualties (i.e. larger teams of swashbuckling sales execs on lucrative bonus schemes, are slowly replaced by a more condensed team of IT engineers and data scientists).

(超訳)プログラマティック取引の隆盛は、人員整理と同義のように言われてきました。中でも営業という職種はメディアトレーディング企業では最初の犠牲者だと見られています。つまり、インセンティブ制度でイケイケの営業マンで溢れた大規模チームは、ゆっくりとITエンジニアとデータサイエンティストで構成された必要最小限のチームに置き換えられていくということです。

と書かれており、業界人間ベムさんの記事でも予見されていたことが現実となってきています。調査が行われたフランスは保守的な環境なので、営業が5年以内になくなると答えた回答者は13%に留まったそうですが、ゆっくりと縮小傾向にあることは間違いないと思われます。

運用者は、今後オペレーターではなくアカウントマネジメントの責任を負う職種により一層シフトしていくと考えられます。フロントとして営業的な役割もこなしながら、提案のためにデータに深く潜って分析を行なっていく仕事も求められるでしょう。

どちらかに突出しているよりは、どちらも平均以上の役割をこなすことができる、そういった人材に機会が回ってくるのかもしれません。

第2回は、そういった広告運用者の働く組織や企業について考えてみたいと思います。

 

第2回: 広告運用者(AdOps)としての生き方(2):企業編
第3回: 広告運用者(AdOps)としての生き方(3):スキル編

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