アトリビューション特別対談:株式会社ロックオン マーケティングメトリックス研究所所長中川斉×アタラCOO有園雄一(2/2)

アトリビューション特別対談:株式会社ロックオン マーケティングメトリックス研究所所長中川斉×アタラCOO有園雄一(2/2)

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※本記事は、2011年10月に公開されたAttribution.jpからの転載記事です。

第2部/全2部(2011年10月18日公開分)

 

 

流入パターンの分析

 

有園:今、なぜこのような話をしているかと言うと、実はこのコンバージョンに至らなかった流入経路が、分析してない方、もしくはそれが取れないツールがあったりして、データとしては持ってるのですが、管理画面上は出てきませんみたいな形で提供されていたりするので、是非ツールを作ってるベンダーの方には何らかの形でコンバージョンに至らなかった流入経路も含めたパスデータ、うちコンバージョンxx件という形で表示してもらえると、よりアトリビューション分析が深く出来ると。

 

中川:そうですね。アトリビューション分析の質が高まりますね。

 

有園:実は、そこの「勝ちパターン分析」って呼ばせていただいた元っていうのは、流入元個別に分析するだけではなくて、どういう組み合わせ、どういう順番でA、B、Cなのか、A、C、Bなのか、どちらがいいのかをきちんとを見分けるために、とても重要になってくるので、それが出来たらいいなと思います。課題ですね。

 

中川:そうですね。

 

有園:中川さんも、僕が言う勝ちパターン分析みたいな分析もしているんですか?

 

中川:何度か試みてはいますが、大変ですねー。

 

有園:何が大変ですか?

 

中川:パターンが無限にありますからね。例えば、広告一般的に言えば、ひとつのキャンペーンで数百とかリスティング広告のキーワードまで含めたら数万、それ以上の広告があって、それらの組み合わせになると、とんでもない組み合わせ数になります。そうなると、統計的に安定した量の勝ちパターンが出てくる可能性は非常に低いです。そこを、どう定量的に分析するためにどう工夫するかが、ひとつの課題です。僕らも、そこそこ工夫しつつやってますが、なかなか大変なところではあります。

 

有園:そうですね。

 

中川:例えば、コンバージョンした経路が3つ、A-B-C-DとA-B-E-DとA-B-C-E-Dがあったとしましょう。これらは一件全部違うものなのですが、先頭2つがA-Bであって、最後はDで終わってますよね? このような見方をすれば、この3つは同じ仲間と考える事ができます。1件ずつ3パターンだったものが、1パターン3件になるので、そこそこの数を持ってくるんですね。こういうパターンを色々見つけていくと、ある程度定量的に分析する事が可能になってきます。ただ、このパターンを見つけるのはデータマイニングなどをやらないといけないので、なかなか手間がかかります。

 

有園:コンバージョンの数が1万件くらいの時、ほとんど異なるパターンで入ってきて、僕の経験だと8000パターンくらいあったりして、どうも共通項で括るっていう勝ちパターンを見つけるのは困難だっていうところにブチ当たります。その時に、今お話されたような、A、B、最後がDみたいなものがあれば、それを共通項として括って、分析できるんじゃないのかって思います。実は、このA、BホニャララDっていうのを見つけだすことが、結構大変っていう事を仰ってる訳ですよね?

 

中川:はいそうです。

 

有園:実は、私はトライしているのですが、課題だなと思っていまして。私の能力ではちょっと時間がかかります。これを上手く共通項で括れたとしても、それが統計的に有意な形でコンバージョンにどう影響しているのかみたいなところが、中々見いだせず。でも、コンセプトとして大事だし、すごく分かりやすいパターンもあるんですよ。バナーAをひとつ見たら、ビュースルーサーチを生み出すというのは分かりやすいんですが、それ以外のいくつかのクリエイティブの組み合わせとなると見えづらいとは思っているのですが。そんな感じですか?

 

中川:そうです。見えづらいです。大変です。

 

有園:だから、これをもっとシステマティックに抽出するツールとかが、できたら話は早いですね。でも、まぁそこが大変なんですが。

 

中川:そうですね。専門的な話になりますが、隣り合ったもののパターンを見つけるのは比較的簡単なんですが、とびとびのパターンになると難しくって、ちょっと僕もなかなか苦労するところではあります。また、できたとしても、そこからの利益はすごく少ないことが多いです。

 

有園:得られるメリットのことですよね?

 

中川:はい。研究ベースですね、今のところね。

 

有園:そこは、同じように課題というかチャレンジです。でもきっと、ここに宝の山がありそうな気もするんですよね。

 

中川:ありそうな気がしますね。特に、1つのコンバージョンに時間がかかるパターンとか、高級商材とかは、1コンバージョンの重みが大きく、チャレンジしがいがあるかもです。

 

有園:耐久消費財もですね。お互い仕事の中で、より簡単な方法が見つかったら教え合いましょうよ。

 

中川:簡易的なプログラムと作っちゃってもいいかもですね。

 

クッキーがつながらないタッチポイントの分析

 

有園:僕が課題だと思ってる事をもう一つ上げますと、広告主さんから「アトリビューション分析ってPCだけが対象ですよね?」って聞かれます。「スマートフォンとかはどうですか?」と聞かれることもあります。「クッキーが繋がってないので出来ません」と答えていますが、もしかしたら、インターネットでバナー広告を見た後に、あるいはクリックした後に、新聞で広告を見るかもしれないですね。マス広告というか、あるいはテレビもそうなんですが、「そーいうタッチポイントの分析は、どのように見ているんですか?」とか、「どのような影響を考えるんですか?」という質問をされたりします。現状は、クッキーが繋がっていないと出来ないので、分析対象から外していますと回答していますが、昔マス広告にも携わっていた中川さんとしては、どのようにお考えですか?

 

中川:クッキーを繋げる事は現状不可能ですので、マス広告の時は撒き餌のようなイメージをしています。何キロ撒いて収穫量はいくつだったみたいなことを、相関で見るぐらいしかないんですね。例えば、何番目のエビがこの魚に食べられた、みたいな所までは見なくてもいいです。だいたい、これ位の餌を撒けば、今までのパターンだと何匹ぐらいが食いついてくるよねっていう所を見て、その途中、プロセス、因果関係みたいなものは見なかったですね。

 

有園:テレビのGRPをいくら投下しました。それによって、ウェブサイトへのアクセスがどれ位増えるという相関関係を分析する会社はありますが、中川さんもやっているんですか?

 

中川:どこまで精密かは別にして、やったことはあります。マス出稿すれば、アクセス数が上がることは実際に観測されます。しかし、出稿量とアクセス数のきれいな回帰分析は不可能でした。

 

有園:それは、時系列的なデータ量が足りないからって事ですか?

 

中川:いや、クリエイティブやキャンペーン内容、競合状況などの外部要因の要素の方が大きいですね。

 

有園:上下の揺れ幅が大きいって意味ですか?

 

中川:そうです。不確定要素の方が大きいんです。出せば上がるし出さなきゃ下がるのはわかるが、10000PV取るためには何GRP出さなきゃいけないのか?といった分析はかなり厳しいです。

 

有園:回帰シミュレーションまでは、なかなか難しいってことですね。

 

中川:量的なものはそうですね。時間のずれなんかは、商材によってはある程度予測出来ました。

 

有園:例えば、テレビで2000GRP2週間で入れましたと。2週間で2000GRPは結構多いと思いますが、そうするとウェブにかなりインパクトがあります。2週間で500GRPだと、ウェブサイトへのアクセスはあまり増えない。過去に、お仕事で総合代理店の方と一緒にやらせていただいた事があるんですが、相関関係で貢献度を割り振るアトリビューション分析の視点で、ウェブマーケティング側でやっている事とマス広告でやっていることが、リンクできると良いと思っていました。その辺りのソリューションを見つけていくのも、今後の課題ですね。

 

中川:難しいと思いますが、そこまっでやってこそのアトリビューションだと思いますので、向かっていきたいですね。

 

有園:向かっていきましょう。

 

中川:今、測るポイントがネットの中でも限られちゃっているじゃないですか? それでもまだまだオンライン上で測れるポイントが残っています。スマートフォンもそうですし、スマホのアプリやガラケーもね。

 

有園:もしかすると、ヤフーIDやグーグルアカウントに入った状態で、スマートフォンやPCにアクセスして、テレビがデジタル化することでテレビ側のデジタルデータも繋がるような時代が来れば、もう少し取れるデータが増えて、関係性が見えてくるかもしれませんね。

 

中川:最近のテレビは、Youtubeが見れたりTwitterできたりします。あるいくつかのサンプルを取り出してきて、その人が動くデータがとれれば、似たような動きをする他の人はこのパターンだろうみたいな予想は、すぐに出来ると思うんですね。

 

アトリビューションが与えるインパクトと未来について

 

有園:アトリビューションが与えているインパクトと未来についての話をさせて頂きたいのですが、実際に広告主様のコンサルティングをするなかで、コンバージョンが増えたケースはどのくらいありますか?

 

中川:増えることは増えます。効率も上がって、コンバージョンが上がります。だけど、アトリビューションをやるってことは全体のプランニングを見直したりするので、すごく意識が高まります。すると、他の所にも手を入れたくなるんです。キーワードを見直そうとか、マス施策や、リアルイベントも・・・とか。いままで見えなかったことが見えたことで、意識が高まり、様々な改善が行われる事が普通です。そして、全体として効果が高まります。アトリビューションに限らず外部のコンサルを入れるということは、こういう効果も期待されていると思います。

 

有園:アトリビューション分析を導入したお客様のコンバージョンの数やコンバージョンレートにはプラスの効果はあるけれど、アトリビューション分析だけで、それが発生しているかどうかは分からない。

 

中川:そうですね。アトリビューションをどこまで適応したかにもよると思います。例えば、リスティング広告だけでもアトリビューションは出来るじゃないですか?

 

有園:出来ますね。

 

中川:それって過去のデータを用いて、まずは効率の悪いところを切りましょうって話になっていく。そうすると、効率重視の場合は、縮小均衡になってしまう可能性があるのですね。すごく効率は高まるのですが、コンバージョンの量が少なくなってしまう。そういう、悪い部分があります。効率の悪いところの予算を、より良いところを探してのせていくのが・・・。

 

有園:予算の再配分。

 

中川:ただ既存の良いものに乗せていっても、それが過去と同じ伸び方をするかというと、それは分かりません。上手くいけばガッツリ上がるかもしれませんが、そこはどうしてもチャレンジの部分なので何とも言えない所ではあります。ただ、ちゃんと分析することで、「良くなる方向性」が見えているはずです。なので、繰り返すことで必ず結果は良い方向に進みます。

 

有園:効率の良い媒体を見つけるためには、繰り返しの作業が必要という事ですね。

 

中川:そうですね。当然、社会環境も競合環境も変わったりするので、一回使ったデータをそのまま何年も使えるかって言ったら、それはありえないです。その意味でも、繰り返しは重要です。

 

有園:先ほどの課題に戻ってしまいますが、繰り返しやるためにはアトリビューションをもっと簡単に出来るようにならないといけませんね。

 

中川:ほんとにそうですね。

 

有園:業界の課題ですね。アトリビューションのインパクトとか未来、これからどうなっていくのかみたいな所は中川さんどうお考えですか?

 

中川:アトリビューションって二つの方向性があると思っています。ひとつは、手間を掛けずにもっと簡単にできるようになる。もっと言えば、リスティングも含めDSPにアトリビューションも組み込まれた形で、自動でビッディングしてくれるっていう方向性。もうひとつは人間がやる作業で、マーケティングプランを作る時のリサーチツールとしてのアトリビューション分析。パターン分析をすることで、意図通りの人が意図通りに動いてくれているか、弱いところとその理由、軌道修正へのヒント、他キャンペーンへの示唆等、マーケッター、プランナーが考える時のリサーチツールとしての使い方があるんじゃないかなと思っています。

 

有園:それは先ほどお話した、A+B+Cが効率が良くコンバージョン取れてますよねというお話のように、パターンが見つかった時にA、B、Cってクリエイティブがどのようになっているのかっていうのを人間がきちんと分析して、得られた知見を次のプランに生かしていくという意味ですかね?

 

中川:そうですね。既存の中でより良くしていく「自動化」と、既存のものでなく「人間の創造力をアシストする」両面でつかえるはずです。

 

 

メディアビジネスへの影響

 

有園:そういう意味ではアトリビューション分析することによって、分かった知見をちゃんと生かしていけば、コミニケーションデザインにも影響を与えていくはずだし、そのようになって行かなきゃけない。そこが結構大事だろうって事ですよね?

 

中川:そうですね。多分今までって、いろんなリサーチをやって、多分こういう事だろうということでやって、後は微修正だけでした。それをもうちょっとPDCAの中で、もっと大きめの修正というか、そもそもこういうターゲットで良かったのかなとか、そのターゲットってどういうモチベーションでどういう心のフックがあって、みたいな物を見つけ出すツールとして使えるかもしれないなと思ってます。

 

有園:私見ですが、アトリビューション分析をやっていくとメディアビジネスというか、今はインターネットの中だけですが、全体の中に、お金がより効率よく沢山回るような環境になって行くんじゃないかなと思ってます。

 

中川:効果が高いのが分かればお金は払えますからね。良いものには払うわけで、訳が分からないものに払うって事が少なくなっていきます。当たり前の市場の原理ですね。

 

アトリビューションは態度変容をマネージメントする

 

有園:今日ここまでで、まだ言ってないこと、あるいはまたはいっておきたい事などありましたらお聞かせください。

 

中川:アトリビューションは、キャンペーンの中での態度変容をマネージメントする物なんだろうなと。

 

有園:それはどうしてですか?

 

中川:そもそも、「すべての広告キャンペーンは、態度変容を促すこと」が目的です。それをいかに効率良くやるために、どういう広告なりメディアを、どういうシークエンスで使っていくか。または、どういう組み合わせで使っていくと、キャンペーン全体が一番効率良くなるか、を考えたいときに、アトリビューションはそれを唯一見れる配分のシステムですよね。

 

有園:コンバージョンをより多く取るための全体最適ってことですよね?

 

中川:はい。アトリビューションの世界は一つの広告だったり一つのメディアを超えて、1+1が2じゃなく3とか4になったりすることを、その配分だったり順番だとかを決めてやることで、より強く態度変容を引き起こそうということを、キャンペーン単位でやりましょうという考え方ですね。

 

有園:リスティング広告もその一つの点として、それぞれ点、点、点、という物の効率的なプランは何なのかと考えていて、きっと昔はメディアミックスとかいっていて、でなんとなくクロスメディアみたいな考え方が出てきて、それは掛け算だみたいな。それぞれの媒体ごとに、どういう風に導線を作ってシナリオ設計して、人間を動かしていくかを考えて。私の得意なリスティング広告の分野で言うと、「テレビにCMだしたら、人はそれを見て検索行動を起こすはずなので、検索して最後コンバージョン至るという導線設計をしましょう」と考えました。その時に、テレビを見て検索するっていうのは態度変容なので、それをどう上手く引き起こさせるかっていう所をマネージメントしなければなりません。バナー広告で言えば、バナー広告を見て、そこに至る導線がどういう風に発生しているかが、ちゃんと数字で見える化される事で、予算配分とかが出来るって事ですよね?

 

中川:そうですね。

 

有園:まとめると、点だった物を線に、それも方向付きの線にしている感じですよね。線に繋がっているその間に態度変容が起こって行く過程が見えてくると、そこをマネージメントしていくってことですね?

 

中川:はい。線になっていればネックになっている部分が見え、かつネックが複数あっても、それぞれの部分のコスト効率が見えるのでどっちが優先順位が高いとか、そのような事を全体を鳥瞰して見れるっていう事なんだと思います。

 

有園:アトリビューションは態度変容をマネージメントする。これが本日の結論ですね。ありがとうございました。

 

聞き役: 有園 雄一(Yuichi Arizono)

中川さん、ありがとうございました!間接効果とアトリビューションの違い、分かりやすく解説いただきました。用語、定義の統一は今後も課題ですね!クッキーセッションでつながっていない場合の評価の件なども、色々追求されているからこそ意識されている課題ですね。マーケティングメトリックス研究所の取り組みも、ADEBiSの進化も今後楽しみです!
第1部(2011年10月11日公開)
第2部(2011年10月19日公開)

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