アトリビューション特別対談:Fringe81代表田中弦×アタラCOO有園雄一(3/4)

アトリビューション特別対談:Fringe81代表田中弦×アタラCOO有園雄一(3/4)

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※本記事は、2011年7月に公開されたAttribution.jpからの転載記事です。

第3部/全4部(2011年7月28日公開分)

 

 

ラストクリックだけを評価していませんか?

 

有園:さて、あらためてアトリビューションを一言で説明するとどのように言えますか?

 

田中:顧客獲得、コンバージョン増加のためのチャネルと予算の新しいマネジメント方法って感じですかね。チャネル導線と予算配分の最適化をやることですかね。

 

有園:コンバージョンに複数の広告が貢献していた場合は、それぞれの広告に貢献度を割り振ることがアトリビューションの考え方で、その後に、予算配分などいろいろ最適化していくことがアトリビューションマネジメントなのかなと。

 

田中:はい。

 

有園:野球でいうと9人いて、バントが上手い人がいればシングルヒットを打つ人もいる。チームとしての得点力を上げて適切な評価をして選手に給料を払うことがアトリビューションですね。結果的に総得点が上がるように野球チームのフロントは考えるわけです。

 

田中:総合的にということですね。

 

有園:どの広告がどれだけコンバージョンに貢献したのか。貢献した度合に応じて広告費予算を最適化しましょうよと。ラストクリックだけを評価することは、4番打者にだけ給料を払っているようなものです。

 

田中:たしかに。

 

有園:非常に偏った評価をしていますね。4番打者だけ集めても野球は勝てません。チームとしてのコンビネーションを考えなければなりませんね。

 

田中:そうですね。サーチも、ディスプレイも、もはやひとつのチームで、強いチームをチームビルディングするようなもんですね。

 

アトリビューションモデルとは

 

有園:ところで、アトリビューションモデル的にいうと、初回、中間、ラストとあった場合、ラストだけに100%の重みづけをするのがいままでのやりかたです。

 

田中:そうですね。いわゆる「ラストクリック評価」モデルですよね。

 

有園:アトリビューションの均等配分モデルという基本的なモデルでは初回、中間、ラストに均等に貢献度を割り振ることを考えます。なかには、初回に重きをおくモデルもあります。

 

田中:いろいろありますね。

 

有園:たとえば、認知されていない商品サービスの場合は、まずは知ってもらうこと、クリックしてもらうことが重要だよねと。コンバージョンも大切ですが、まずは知ってもらうこと。プロダクトライフサイクルの導入期にあるような商品サービスは初回に100%配分して評価すべきだという考え方もあります。

 

田中:そこからが難しいですね。均等配分をすべきか、しなくてもよいのか。ビューを評価すべきか、クリックを評価すべきか。ベンダー次第ですね。

 

有園:おっしゃるとおりです。

 

田中:僕らはビューは大事だと考えていますが、経路はあまり意味がないと思っています。A媒体、B媒体、C媒体と3回見たとします。それでC媒体からコンバージョンしたとします。もしくは、C媒体からサーチでコンバージョンしたとします。そうすると、C媒体はけっこう偉いけれどA媒体とB媒体って偉いんだっけ?ということになってきて、そこら辺が謎めいていしまいます。

 

有園:たとえば、バナーAがインプレッションして見ただけでした。クリックはしませんでした。そのあとに、バナーXをクリックしたけれどサイトから離脱したとします。次に、バナーBがインプレッションして見ただけでした。その後にサーチをしてコンバージョンしたとします。この期間が1カ月だとします。このような流入経路があった場合、最後に発生したバナーBのインプレッションはコンバージョンにつながっているのでビュースルーコンバージョンとして数えるんですか?

 

田中:数えます。

 

有園:その他は数えないんですか?

 

田中:第三者配信エンジンの多くはバナーAを数えません。機能として数えられる・数えられないのと分析するための数字は、評価は違うのですが、たいてい数えません。

 

有園:バナーXはクリックスルーコンバージョンをしていると考えるのですか?

 

田中:考えます。ただ1ヶ月超えている場合は微妙です。バナーXの貢献度はあると思いますが、バナーを複数見て複数クリックする人は全体の10%くらいです。ヘビークリッカーという議論もありましたよね。90%はほぼかぶりません。ビュースルーコンバージョンとしては、バナーを見て短期間でコンバージョンしたものの評価が高くなります。

 

有園:期間も評価基準にしているんですか?

 

田中:特定の期間できります。たとえば、30日間とかできっています。

 

有園:確認しますが、バナーAは30日以内に発生していたとしても、ビュースルーコンバージョンにはカウントしないんですね?

 

田中:カウントしません。

 

有園:アタラでは、バナーXのクリックはサイトへ誘導しているので評価はきちんとしています。田中さんの話だと、バナーXの貢献度はあるかもしれないけれど、あまり評価していないんですよね?

 

田中:短期間のクリックスルーコンバージョンであれば評価します。それは直接コンバージョンなので。ただ、30日以内に違う媒体で同じバナーに触れることはほとんどないんです。その中でさらにクリックを両方する、ということは90%の人に起きていません。こういう事態ってあまり起こっていないんですよ。

 

有園:ここに貢献度を振るべきかどうかということなんですよね。

 

田中:ここは完全に分けていますね。

 

インプレッションは間接コンバージョンとして評価する?

 

有園:インプレッションは間接コンバージョンとして評価するんですね。ブランインドになっている、つまり、見られていない可能性が高い場合はどうするんですか?

 

田中:その場合は間接コンバージョンの評価ポイントを減らします。アドネットワークは何%くらいがブラインドだよね。純広告は何%くらいがブラインドだよねというようにざっくり判断します。厳密に機械ではかっているわけではないんで。

 

有園:見られる可能性が高い媒体である場合、コンバージョンに近ければ近い媒体を評価することは大賛成です。バナーAをどうするかは迷うところですが。バナーBやバナーXをしっかり評価しなければならないと考えています。このサーチが指名検索だとします。この指名検索を発生させたバナーBやバナーXがあるわけですから、指名検索の評価を下げてバナーBやバナーXにつけてあげなければならないというようなことをやっています。

 

田中:バナーBとバナーXが逆だと分かりやすいんですよね。インプレッションもクリックも両方やるわけですから偉いです。サーチもしてコンバージョンもしたから、間違いなく評価は高いです。バナーXはクリックしていて、バナーBはインプレッションだけだというケースは困るパターンですね。

 

有園:だから聞いてみました。現実にこのようなケースのデータがあるんですよ。認識を共有しておきたかったのは、ビュースルーの定義はベンダーによってまちまちなので。直近のビュースルーコンバージョンをまずカウントして評価することが大事だよということを共有しておきたかったです。

 

 

経路を評価するか、媒体を評価するか

 

田中:話が難しくなってしまいがちですが、経路を評価するのと媒体を評価するのは違います。

 

有園:はい。

 

田中:実際の広告運用を考えると、A媒体、B媒体、C媒体のトータルのコンバージョン数をたたき出してくれるのはどの媒体なのかを考えなければなりません。その次に経路の最適化をしましょうという二つがあります。それぞれの媒体を比べて媒体を評価するときは、ラストインプレッションもしくはラストコンバージョンを見ます。

 

有園:もう少し経路の話を聞かせてください。もし、コンバージョンを発生させている経路が、バナーA→バナーX→バナーB→サーチ→コンバージョンの流れだとします。

 

田中:はい。

 

有園:バナーA、バナーXまで来ている人が100人いた場合、バナーBを見たあとにサーチしてコンバージョンすることが統計的に予測できる場合、バナーXの次にバナーBを見せるように順番をコントロールすることってできるんですか?

 

田中:いや〜。人間がどの媒体をどの順番で見るかをコントロールすることは絶対に出来ませんね。人間をコントロールすることはできません。機械ですべての媒体に第三者配信することができるようになると、少しは違うかもしれませんね。

 

有園:すべての媒体に第三者配信ができるようになればですね。なるほど。バナーAをインプレッションしました、バナーXをクリックしましたというレコードをもっているクッキーに対して次はバナーBを見せることは、Fringe81さんではできるんですか?

 

田中:できます。1ユーザーあたりのフリークエンシー数ごとにバナーを入れ替えることができるので。すべての媒体で、というと、それが、そんなに頻発するかな〜って気はします。確率論として、バナーAとバナーXを見ている人ってどのくらいいるかなと。両方見ている確率ですね。

 

有園:それで言うと、両方見ている確率は低いと思います。勝ちパターンを探したいので調べるのですが、いろいろなパターンがあってこれだというのは見つけにくいです。

 

媒体のコスト効率を図る

 

田中:僕はシンプルに考えていて、コンバージョンにいたったラストインプレッションって何だっけ?ということを重視しています。この方法論だと意思決定が早いんですよ。あと、サーチでけっこうな無駄があることが分かるんで、サーチの予算をバナーに移行すればコンバージョンは増えますよという話をしています。クリック数を増やすよりはビューを増やすほうがやりやすいです。

 

有園:間接コンバージョンと直接コンバージョンの両方が増えるように配信を微調整しているんですか?

 

田中:リアルタイムにはあんまりしていません。リアルタイム変えていくと混乱します。変数がたくさんありますからね。まずは、一本普通の配信をして、詳細なデータを分析します。やってみると気づくこともあるので、その分析結果をもとに、最適解を探し出して、たとえば、次は三本のバナーを、こういう順番で配信してみよう、とか調整をします。

 

有園:間接と直接の効果を見て、間接効果が高ければバナー広告にもっと予算を割り当てたほうがいいねということになるわけですね。次のキャンペーンがあれば本数を増やして配信するわけですね。

 

田中:もしくは、媒体の評価をして、この媒体はやらなくてもよかった、こっちの媒体はもっとやったほうがいいと判断します。トータルコンバージョンを増やすためにどうしたらいいかを考えます。

 

有園:媒体のコスト効率を図るわけですね。田中さんの言うトータルコンバージョンとは、直接コンバージョン+間接コンバージョンのことですよね?

 

田中:そうです。

 

有園:それを分母にして、分子に媒体に投資したコストを載せて、トータルCPAを出すわけですね。そのような成功事例はありますか?

 

田中:BtoB系のお客様には喜ばれています。たとえば、IT系の専門媒体は10〜20くらいしかないのでどこからコンバージョンが来ているのか、トータルコンバージョンを使えば効率を上げる方法がわかるので喜ばれています。BtoBだと検索エンジン広告の単価も高く、検討期間も長いため、すぐに買ってもらえないですよね。

 

有園:たとえばサーバーとかですか?

 

田中:そうですね。あとはクラウドとか基幹システムです。稟議をあげてから1週間以上かかるものもあります。そうなると直接コンバージョンが1、2とかって言うこともあるんです。1ヶ月以上たってから決まるものもあるので、実際は間接コンバージョンは直接コンバージョンの5倍〜10倍くらいあります。

 

有園:1週間のキャンペーンが終わってからコンバージョンをしたものは間接コンバージョンですか?

 

田中:はい。1週間以内であっても自然検索結果からきたものもすべて間接にしています。今まではコンバージョン数が少ない場合でも、ちょっとした誤差で2件だったのが5件という結果になることもあるんです。でも2件や5件という少ない場合、「たまたまじゃないの?」ということがありますよね。直接コンバージョンだけだと、母数が少なすぎていい悪いを判断するのが難しくなっちゃう、と。

 

有園:へぇ〜。

 

田中:この場合間接コンバージョンまで見ると、5倍〜10倍くらい出ることがある、といいましたが、つまり直接が5だとすると、最大間接が50、つまり55件のコンバージョンです。ここまで母数が増えれば、それぞれの媒体パフォーマンスをちゃんと評価できますよね。

 

有園:その場合クリエイティブは1つ、2つで運用するんですよね?その場合、cookieの長さはどのくらいにしていますか?

 

田中:それはクライアント次第ですが、30日とか、60日のこともあります。

 

有園:BtoBだと60日くらいが普通ですかね?

 

田中:たしかに、BtoBだと60日くらいまでですね。

 

有園:この話を聞くとバナーのビューからコンバージョンが見えるので、バナーの再評価につながりますね。

 

田中:この前はじめてバナーっていいもんですねと、再評価してくださったお客様がいました。今まではアドネットワークの方が単価が安いのでいいと思っていたけど、実は高額な専門媒体の方が間接のコンバージョンまで見ると成果が出ている事がわかったという報告を聞きました。

 

有園:いい話ですね。それは。今のはたまたまBtoBでしたが、比較検討する期間が長い商材で、バナーの効果を調べたい場合は、ビュースルーを見た方がいいですね。

 

田中:はい。

 

聞き役: 有園 雄一(Yuichi Arizono)

4/4に続く(2011年7月29日公開)】

第1部(2011年7月26日公開)
第2部(2011年7月27日公開)
第3部(2011年7月28日公開)
第4部(2011年7月29日公開)

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